父娘の対話 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

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GWから海のシーズン、船長業務も多いが、農作業も集中している。

6月から7月のかけては総合的な講習希望者が次から次へと伊勢へやって来た。

農法、植物、海など自然界の仕組み、人体の仕組みなどについてで、野人は夜遅くまで話し続けることが多かった。

すべて記事には出来なかったが、6月末には関東から3人の年配のご婦人、さらに近県から3人、7月に入り神奈川から60過ぎの父と23歳の娘が1泊2日の予定でやって来たが、珍しい組み合わせで、両親同伴、母娘はあるが父娘は初めてだった。

講習は時間無制限のようなもので、初日は収穫体験ランチ、塩作りのあと夜まで6時間の講習、翌日は4時間の予定だ。

彼女は熱心にノートをとっていたが、持参した「野人エッセイす」の本にはビッシリと小紙がはさまれていたから相当勉強している。

父娘で質問事項をノートに準備していた。

講習を通して野人は驚いたが、お父さんはもっと驚いたようだ。

野人理論は単純だが仕組みの物理学であり、面白いのだが頭は疲れる。

若い女性がこれほど食らい付いて質問して理を極めようとしたことはなかった。

講習を通して目は輝き、席を立って身ぶり手ぶりで立体的に確かめようとしていた。

人知、文明の象徴である「三角関数とは何か」とその認識を聞いて、野人の意図する答えをしたのも2人が初めてだった。

お父さんにとっても長年一緒に暮らして気付かなかった意外な発見だったようだ。

理性だけでなく感性も豊かで、地球の歴史、生命の誕生と仕組みの話では大粒の涙が溢れ出した。

本を読んでもわからなかった壮大な生命のロマンに感動したらしい。

お父さんは技術者で理を解し、「人は自らの判断で生きて行くもの」と、娘にあれこれ教えたり、勉強しなさいと言ったことは一度もないと言う。

娘もまたこれまでお父さんに相談したことはなかった。

かと言って父娘の断絶もなく、一緒に旅するくらいだから仲は良い。

相談されたら答えてあげれば良い、お父さんの考え方はそれで良かったのだ。

野人は森羅万象の理を元に、どうすれば良いかその答えを出してきたが、そのような体験は誰もが出来るものではない。

夜中、お父さんと思考が食い違い、初めて激しい議論を交わしたようだ。

心は自由なもの、理は誰がやっても同じ答え、現実の判断は理であり、それを心でやるから皆食い違う。

大事な現実問題を「心理一体」で判断したから世の中がおかしくなってしまった。

その娘に伝えたことは・・

「これからは理の基本的な考え方はお父さんに、どうするかその先の個々の道理に行き詰れば野人に聞けば良い」

現実の答えを出す判断は理、どうしたいかは理に逆らっても心のままで良いのだ。

2人はシマラッキョウとニラの株を持ちかえった。

畑を借りたらしく、区分してここはこの実験、ここは・・と会話がはずみ、帰ったら仲良く農作業だ。

前日はたっぷりの協生野菜とむー塩、明らかに体調が良くなったと口を揃える。

人生が180度変りそうと言うその娘の将来に役だったことは嬉しいが、お父さんが心から喜んでくれたことが最も嬉しかった。

父娘で10時間の講義を受ける人などあまりいないだろうな・・

午後、伊勢神宮まで送り届けて講習は終了した。


し・お 音譜
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よく見ても 見なくても なかなか可愛い・・