これを・・
今はたいしたことはないが野人の握力は強いほうだった。
大学の頃、空手部70人の中でも群を抜き、3本指で逆立ち歩行と腕立て伏せが出来た。
握力は80キロを超え、特に鍛えたわけではないのだが、小学生の頃から海で「櫓」を漕ぎモリで漁をして、山でターザンやって弓で狩りをしていたせいかもしれない。豊かな食生活で、おやつはサザエか天然焼き鳥か天然うなぎ蒲焼。
本能も強かったが、エサは自ら捕るものだと猫のタマにも教わった。
同じように手首、腕力、腹筋、背筋、パンチ力、特に跳躍力が群を抜いていたせいか、陸上部や他のクラブに勧誘もされた。走り幅跳び、高跳びにホ~ガン投げ・・勧誘の言葉もだいたい同じで、「空手部などダサイ」と。
その学生の頃の特技がこれだった・・
秘技「カンパクト」。
当時からあったこの缶コーヒーはアルミではなく今も鉄製で硬く、息が長いことでは表彰もの。これを片手で一気にたたみ込むのだ。
体育会の同級生にへこませる巨漢男はいたのだが半分までがせいぜいだった。
この缶を瞬発的にへこませ、そのまま同じ手で持ち替えて二つ折りにする。
これを3秒でやってのけた。
手刀でビール瓶の首を素っ飛ばす技やブロック割り、飛んでくる「蚊」を蹴りで失神させる技は場所を選ぶが、これは場所を選ばず余興でよくやらされた。
もらったこの缶コーヒーをテーブルに置いていたら、やはり当時の習性が目覚める。
随分やっていなかったのだ。
10年くらい前にやった時は5秒くらいかかりショックだったが、今回は5秒をはるかに超えた。
思わず缶にムキになって「フンガ~~!!」
マッカーサーの言葉が頭をよぎる。
「老兵は ただ消えゆくのみ・・」
野人の悪力は終わった。
アクの強さも抜け、腰の強さも抜け、間も抜け・・アカ抜けした。
これからは文明人として善力を尽くしたい。
長寿のカンちゃん・・カンニンして。
もう君を握りつぶすエコ行為は二度としないから。