コウモリの捕らえ方と人類の知恵 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

別にコウモリが食いたかったわけではないが、小学生の頃はよく捕まえた。洞窟に網を持って入って「不意打ち」を食らわせても捕れるが、もっと簡単で面白い方法があるのだ。捕獲時期は夕方で家の近くで十分だった。コウモリは夜行性で夕方から活動、民家の近くを飛び始めていた。何処からやって来たのか薄暗くなると夜空にバットマンが飛び交うのだ、しかも5mくらいの低空飛行で。よく捕まえたのは銭湯の行き帰りだった。捕獲には普通のタオルを使う。タオルを丸めて空高く放り上げていればコウモリが引っ掛かってタオルと一緒に落ちてくるのだ。行きがけの乾いたタオルのほうが掛りは良いが、帰りの濡れてしぼったタオルのほうが重くて高く上がり一長一短だ。昼間の鳥は絶対に引っ掛からないのに何故コウモリだけが引っ掛かるのか。コウモリの盲点を突けば簡単だ。字の如くコウモリは目が見えない。暗闇や洞穴でも飛んでエサを取れるのは「超音波」を使うからだ。超音波は物質にぶつかって跳ね返ってくるからその時間で物質までの距離がわかるのだ。これを応用したのが音響測深機で、別名「魚群探知機」とも言う。海底まで超音波を放ち、跳ね返ってくる時間で水深がわかり、跳ね返る強さで海底の底質がわかる。音波の進む速度は一定だから跳ね返ってきた半分の時間に速度をかければ正確な数値が出せる。受信した音波の強さで、底が固い岩か砂か、柔らかい泥かまでわかるのだ。途中に魚群がいれば当然音波は跳ね返る。群れの大きさから個体のサイズ、遊泳層まで画面に映し出せるのだ。音響測深機は船の真下だけだが、さらに広範囲まで精度を広げたのが「ソナー」で潜水艦や駆逐艦の「目」として第二次大戦から始まり今も使われている。真下以外の魚影を追ってソナーを積載する漁船も増えてきたようだ。空中の障害物を捉えるのは「レーダー」で、音波と同じ原理で電波が使われている。

話が脱線したが、この中に「コウモリ」の盲点が含まれている。音響測深機で話したが、障害物が泥のように柔らかいほど、音波を吸収するから跳ね返る力が弱いのだ。まして岩や昆虫と違ってタオルはほとんど音波を跳ね返さない。つまりコウモリには見えないことになる。だからコウモリが飛ぶ方向の前にタオルをうまく放り上げると空中で開いたタオルに簡単に引っ掛かって落ちてくる。わかったかな? 人間の悪知恵はコウモリから学んだことを最初は戦争兵器に使ったのだ。後に魚群探知機や航空管制に使われ、今ではなくてはならない必需品になっている。コウモリがいなければ人類は月には行けなかったかも知れない(笑)

コウモリはまだ食ったことがない。顔がサルみたいで気が引けるからだ。いつも逃がしてあげてたが、コウモリまで食料にしなければならないような時代が来ない限りあいつは安泰だ。