上 赤ナマコ 下 青ナマコ
近海の身近なナマコはこの三種に区別されている。赤ナマコが一番高価で、青ナマコは市場によっては五分の一以下、黒ナマコは敬遠されあまり食卓に上がらない。乾燥させて中国へ輸出しているようだ。しかしこの三種は同じ「マナマコ」なのだ。味もたいして変わらない。たまたま表皮の色が変化しているだけだ。ナマコは海底の堆積物を食べるのだが、何故色が分かれるのかはよくわからない。赤ナマコは海藻の色素が含まれているようだが、おそらく微妙な境界があるのだろう。同じ場所に青も黒もいるのだ。黒が気持ち悪ければタワシで落とせば普通のナマコになる(笑)。野人はどれでも食うが、わざわざ高いお金を払って赤ナマコを買う気にはなれない。消費者がお金モチなのかナマコムチなのかよくわからない。野菜同様、中身よりも見た目を重視するようだ。魚介も野菜も山菜もすべてそうだが、味と外観は全く関係がない。
ウニ、カラスミと並ぶ日本三大珍味の「コノワタ」はナマコの腸の塩辛だ。千年以上前から食されてきたナマコは海鼠と書き、最初に食べた人は勇気があると言われるほどグロテスクな形をしている。原生動物に近く肺も心臓もない。そしてこれがまた「不死身」なのだ。敵に襲われると内臓を吐き出し、相手が内臓を食べている隙にスタコラと退散する。内臓は何度も再生、当然体も再生する。何等分かに切って海に放すとすべて生き返る「ゾンビ」みたいな生き物だ。この驚異の生命力から、昔から精がつく食品とされてきた。硬くて飲み込んでもすこぶる消化が良い。野人は昔、この方法でナマコを増やそうとした。1匹を3匹にしようと3等分してやってみた。ところが内臓や体が再生するまで時間がかかるから目方の合計は増えない。1匹のままだと毎日エサを食べて大きく育つから、結局目方は増える。ナマコは目方で取引されるから失敗に終わった。真冬の2月頃、船の上から箱眼鏡でナマコをよく引っ掛けた。3月までは何とか食べられたが5月のナマコは食べた事がない。まずはスライスして生で食べたがまったく歯が立たず、歯型すらつかない。次に網で焼いたがまったく同じでかじる余地さえなかった。石とまでは行かないがそれに限りなく近い。このナマコを食べようとするなら時間をかけて柔らかくなるまで煮るしかないだろう。あの柔らかいナマコがこれだけ硬くなるのだから、ひょっとしたら・・・アレも・・。こりゃバイアグラに負けない「絶倫スープ」が出来るかも知れない。是非誰か試してもらいたい。野人は当然そんなものは必要としない。女人禁制 空即是色 色即是空~・・・