八つ墓村の夕暮れ | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

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お椀を伏せたような小高い丘の墓地なのだが、映画「八つ墓村」の雰囲気がある。墓は八つではなく30くらいはあったが、葉を落とした一本の古木が何とも不気味な雰囲気を漂わせている。夜、一人で散歩したくなる場所だ。小学生の頃はよく夜中に一人で「大和魂」の鉢巻をして、木刀、手裏剣、かんしゃく玉、懐中電灯を手にして、片っ端から墓場を探検したものだ。もっとも他にそんなことをする友人はいなかった。野人の好奇心と探究心はとどまるところを知らなかった。幽霊に足があるかどうかどうしても真相を確かめたくて我慢出来なかった。それには木刀で足を払うのが一番だ。幽ちゃんが・・「痛え~~!」と悲鳴をあげたら・・やはり足がある。ただ、それを学校で言いふらしたかっただけなのだ。「足がなければ立てるはずがない、羽根がなければ宙に浮くはずがない」それが野人の主張だった。その為に眠い目をこすりながらこっそりと家を抜け出して、幽霊の活動が一番活発になると言う「丑三つ時」に、つまり夜中の二時だが、墓場の陰でひたすら待ち伏せして、幽ちゃんの奴が出てきたら、後ろから近づいて、隙を見て、「どっりゃ~~~!」と足を払う。作戦は完璧だったのだが、毎回くたびれもうけで蚊に食われるばかり、幽ちゃんにはとことん嫌われていたようだ。