猿も滑る「リョウブ」の幹 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

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昨日の「クコ伝説」に登場した「リョウブ飯」のリョウブの木だ。以前に再生企画の講師で県内の自治体へ行った時、10人くらいで施設に面した山を見て廻った。熊笹とリョウブが豊富で、道の駅の商品案を提案した。ところが全員が口を揃えてこの木はサルスベリだと言う。葉を食うのは抵抗があるらしい。いくらサルスベリは山に自生していないと言っても、小さい頃からこれはサルスベリだったと主張して閉口した。確かに幹はそっくりなのだが花はぱっとしない。その昔、木に詳しい長老が「これはサルスベリの一種だ」と決定したのだろう。それくらい幹は似ている。

リョウブ飯の時期は春になるが、作り方は3月に掲載したものを引用する。リョウブと言う名の由来も面白い。

香りの良いリョウブ飯

海と同様、野山には美味しく食べられるものがたくさんある。春は山菜の季節、楽しみにしている人は大勢いるだろう。春の七草に始まり、ノビル、フキノトウ、ツクシと続き、4月になれば山菜真っ盛りとなる。代表的なものはタラの芽だろう。道路沿いのタラの芽は丸裸にされるくらいファンは多い。タラは山菜野草と言うより木の芽で、コシアブラもタラ同様美味しくて最近注目を浴びている。どちらも天ぷらで食べるのが一番だ。山菜の食べ方は天ぷらとおひたしがほとんどで、個人的に好きな「菜飯」にして食べるものは限られている。代表的な菜飯は、ウコギ、クコ、ヨメナなどがあるが、どれもまあ、美味しい!とまでは行かない。一番好きで毎春必ず食べているものが「リョウブ飯」だ。リョウブは野山の何処にでもあり、山道を走れば必ず道端に見かける。樹皮に特徴があり誰にでも見分けられ、枝先の新芽はいくらでも簡単に摘める。サルも滑って登れないという「サルスベリ」そっくりだ。地域によってはそう呼ぶところも多い。サルスベリは園芸種だから庭や公園にしかないがリョウブは野山に自生している。リョウブと言う名の由来は、平安初期の律令国家の時代、飢饉に備えて強制的に農民に植えさせたところから来たのだろうといわれている。つまり非常食だった。乾燥させて保存、ご飯に混ぜて炊いて量を増やすのだ。律令の布令というところから「令布」という漢字が当てられたらしい。生葉をご飯に炊き込んで食べてみてもクセがなく美味くもなんともないが、さっと塩茹でして水にさらして刻み、炊きたてご飯にまぶして食べたら絶品だ、香りもコクもあり他の菜飯よりは美味い。天ぷらにしても美味しい。リョウブ飯は昔から行者さんも食べているらしい。その香りは、山の修行と何となく雰囲気があっているようだ。