肥料がいらない豆科 ササゲの「根粒」画像 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

小さなササゲの根には既に根粒がたくさんついていた。根粒は化学肥料の粒によく似ている。根粒は「根粒菌」と言う微生物の住処で小さな「ドームハウス」だ。この中に何匹も住み込んでいる。スズメバチの巣を思い浮かべればよい。根粒は豆科の植物の根に寄生と言うより共生してくっついている。何故こんなものがくっつくのか簡単に説明する。

植物は空気と水を材料に光合成で必要なものを作り出している。必要なものとは「有機物」で、有機物とは「でんぷん」「糖」「セルロース」「タンパク質」などだ。この中でタンパク質だけが一筋縄では行かない。タンパク質以外は二酸化炭素と水から出来る。CとОとHだ。タンパク質には窒素Nが必要だが、植物は空気中から窒素を取り出すことが出来ない。土中には窒素が酸素や水素と結合したアンモニアなどの化合物がある。窒素化合物であるアンモニアNH3など、水と共にイオン化したものを根から吸収するしかないのだが不足しやすい。だから野菜には窒素肥料が大量に使われる。昔は糞尿が最大の肥やしだった理由だ。

根粒菌は空気中の窒素と水の水素からアンモニアを作り出す。これを「窒素固定」と呼んでいる。しかし光合成が出来ず糖やでんぷんを作ることが出来ない。豆科と共生してそれらの養分のおこぼれを頂戴する代わりにアンモニアを提供しているのだ。土中の窒素化合物はアンモニア以外のものもあり、根から吸収されると化学変化してアンモニアになる。

つまり豆科の植物は二酸化炭素と水だけでなく窒素も調達、「自給自足」しているのだ。

豆科には食用の豆以外に、クローバー、レンゲ、カラスやスズメのエンドウなどがある。豆科以外で根粒菌を持つものには、ハンノキ、ヤマモモ、グミなどがあり、これらは痩せ地でもすくすく育つ。根粒菌は、クローバーやカラスノエンドウの根を抜いて観察すれば簡単に見ることが出来る。田んぼにレンゲの種を蒔くのは窒素補給が目的だ。野人の循環農園にはいたるところに豆があり、レンゲの種まで蒔いている。草は必ず生える。どうせ生えるなら豆科が良いのだ。邪魔なら上だけ刈れば土中にはしっかりと窒素肥料が残っている。背丈が低く、ツルが絡みつかず、あまり光も遮らない豆はレンゲが一番。窒素肥料と表土のマルチにはサヤエンドウでもインゲンでも何でも良い。20cm間隔にビッシリ植えてネットを立てない。すると互いに絡み合って立ち上がり垣根のブッシュになる。十分収穫出来て枯れるとそのまま沈んでうねを覆い隠してマルチになる。表土を紫外線から守り、微生物を養い、土を肥やす優れものなのだ。豆は一石三鳥で植えるものだ。収穫だけを目的にするにはあまりにももったいない。種は安いのだから思い切り密集させたほうが土の為にも人の為にも良い。収穫した後のマルチで草も生えず、掻き分けてそのまま野菜の苗が植えられるのだ。豆科のフル活用は環境修復と農業を救う切り札になる。