スイミン愚物語 ウォーたあボーイズ3 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

プールサイドでの水中アトラクションが始まった。3百人近い客が集まり、特設ステージでは和太鼓などの催しがあった。結局水中アトラクションがイベントのトリを努めるらしい。コミカルな「珍泳教室」は司会者とのだいたいの打ち合わせは済んでいた。二部三部については行き当たりばったりで、司会者も詳しくは知らないほうが良いのだ。やがてショータイムの時間になり、「キャプテンとウォーターボーイズ」と紹介された。客に挨拶してプールに飛び込み待っていると、ボーイズが司会者にそれぞれ呼ばれた。彼らは「ふっくん」「もっくん」「やっくん」になっていた。何処かで聞いたような名だ。「各自が「ふっくんで~す!」と声をあげながらトリッキーな飛び板飛込みを披露、野人の元まで泳いでくるのだ。「もっくん」は一回転して飛び込んだが、「やっくん」はタイミングが合わず板の上で滑ってこけて、ビタ~ン!とぶざまに水に落ちた。とにかく整列して司会者の合図とともに教室が始まった。泳法はイカ、タコ、馬、スイカ・・と順調に進んだ。女性アナウンサーが面白可笑しく喋りまくるので笑いが起こり、客は妙な泳ぎを楽しんでいた。「シンクロUFО」の「すね~ク波動砲」も見苦しいながらもうまくいった。次は究極の犬掻き、名づけて「365歩の犬掻き」だ。まずはキャプテンがボーイズに見本を見せた。水前寺清子の歌にもあるように3歩進んで2歩下がらなければならない。普通の犬掻きなのだが途中で止まり、後ろに進み始めると司会者が絶叫する。「あ・・あ・・!キャプテンはバタ足のまま後ろに進んでいます~!」。ウォーターボーイズの番になったが、なかなかこれが出来ない。前進を止めるまでは良いのだが、後ろに行かず沈んでしまうのだ。バタ足よりも強く水中で手を逆にかけば済むことなのだが・・・段取り良く「365歩のマーチ」が流れているのだが、3人とも3歩進んでもちっとも2歩下がれなかった。まあこの泳ぎは「何の為に泳ぐのかわからない」疲れる無意味な泳ぎであることには違いない。珍泳教室の最後は野人のスペシャル泳法「忍者泳ぎ」だ。たぶん誰も見たことがないくらい速い。忍者は尋常に勝負しない、つまり反則チョンボ何でもありの泳ぎだ。これはウォーターボーイズも司会者も見たことがなかった。やがて司会者の合図で飛び込んだ。浮上した時には顔は飛び込んだ方向に向いていた。つまり、底を蹴ってバック転だ。腰までの深さのプールをバック転でザバ!ザバ!と音としぶきを上げながらジャンジャン進んだ。その時は声は聞こえなかったが、司会者は金切り声で絶叫していたらしい。「あ・・あ・・バック転、底に手をついています、チョンボ!チョンボです~反則~!信じられません、でも速い速い、すっご~い!」。爆笑の中、無事に一部は終わり、続いて二部の「水中脱出ショー」だ。数十mの船のロープが準備されウォーターボーイズに取り囲まれた。首から足首まで何重にもグルグル巻きにされて、おもりを付けられ、江戸時代の「す巻き」みたいに放り込まれ、3mの水底に沈められるのだ。野人もやられたことはないが楽しみだ。忍者みたいに関節を外し、タコみたいに体を柔らかくしての「縄抜け」は得意なのだ。テレビの脱出劇みたいなトリックはない。