中国産ウナギの偽装について | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

肉の偽装問題が続く中、今度はウナギの偽装問題が発覚した。消費者を欺くことには違いないのだが、そもそも何故こんな問題が起こるのか考えてみると良い。そもそもの要因は消費者にあり、「味ではなくブランドで食べる」からだ。国産牛に飛騨牛に松阪牛、下関のフグ、大分の関サバ関アジ、城下カレイ、明石のマダイにタコ、名古屋コーチンなど挙げればきりがない。名前がつけば価格は跳ね上がり、中には相場の数倍するものもある。味ではなくて「見栄」で食べる事がばかばかしいとは思わないのだろうか。それだけ味を判別する「味覚」が失われているのだろう。確かに旨いものは旨いのだが、すべてそうではない。他と変わらないものも多いのだ。少なくとも価格ほどの差はない。野人はすべて食べて自分の舌で判断はしているが、言うなら無駄使いだ。数年前まで地元で獲れたトラフグはほとんど下関に運ばれて口に入らなかった。価格は数倍に跳ね上がるから当然運ぶ事になる。他の魚介類もそのようなものが多い。別にブランドを売り出した産地が価格を吊り上げたわけでもなく、消費者が群がるから相場が「跳ね上がった」のだ。魚介の味は全国そう変わるものではない。味は時期と海の条件により年中変わる。同じ場所でも大きさや個体差により味は変わる。魚介の味は知名度や地域ではなく、季節と海の条件と大きさと雌雄、食べものなどで変わり、自分の知識と見た目で判断するしかない。野人でも、良かれと思っても食べてみて「外れ」もある。

スーパーで売られる中国産と国産のウナギの蒲焼の価格は倍違うが、それはかかったコストが違うから当たり前の事だ。はっきり言えることは、中国でも国産でもうなぎの味はそう変わらない。育てるコストと加工コストの違いだ。ウナギの養殖は確立され、脂のノリなど、どの様な味のウナギも作れる。中国のウナギも日本から技術を持っていったもので、日本と同じ養殖の仕方だ。天然うなぎは鮎と同じように川の水質やエサで微妙に味は変わるが全国でそれほど差はないのだ。同じ水域でも旨くない固体もある。ウナギも鮎も養殖はすべて同じ味だと思えば良い。使う水よりもエサで味が決まるからだ。野菜も同じ事が言える。今では本来の土壌よりもエサである肥料と「作り方」で味が決まる。今の野菜は養殖魚と同じようなものなのだ。だから味も形も統一されている。野人が住む市は人口八万で、ウナギ屋が多い。古くからウナギの味にはうるさい。あるタウン誌がウナギ特集をやって店の人気ランキングが出た。付き合いのあった編集長が来て苦笑いしていたが、1位は「中国産ウナギ」を使用している店だったのだ。そこは中国産「生のウナギ」を「活き」から焼いていた。しかも備長炭ではなくガスだ。要するに「外はパリパリ中ジューシー」であれば良いのだ。野人が全国のウナギを食べてもそう思う。ウナギは調理の仕方で味が決まり、好みは人それぞれと言うことだ。現にランキングでも他の店にも人気があった。脂コッテリの特大を使う店は若者に人気があり、小ウナギをサッパリ焼き上げる店は高齢者に人気がある。生のウナギの味は似たようなものだから外がバリッ!とすれば誰が食べても旨い。備長炭で焼いた味がわかる人がいるとは到底思えない。何人わかるかテレビ番組でテストしてみれば良い。もっとも二つしかないから半分は当たるが。

スーパーで売られる中国産ウナギは旨くない。時間が経って冷凍されているからでもったいない話だ。安くて旨いウナギの食べ方は、生を買ってきて自分で焼くか、もっと良いのはウナギ屋さんでたべることだ。積み重ねた調理技術料だと思えば良い。産地に振り回される事ほどばかばかしいことはないのだ。