美男カズラで整髪料を作る | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

 

ずっと前から整髪料を作ろうと思っているのだが無精者ゆえなかなか実現しない。

使っても三日坊主で終わるだろう。化粧品会社ではないからあくまで「ナチュラルヘアトニック」しか作れない。 原料は「ビナンカズラ」、芳香剤は「クロモジ」だ。

 

ビナンカズラは西日本の木陰の林でよく見かける。

つる性の常緑樹で秋に和菓子の「かのこ」に似た赤い実をつける。

古くから漢方薬として利用され「南五味子」の生薬名がついている。

万葉集や小倉百人一首にもサネカズラやサナカズラの名前で出ているくらいだから昔は親しまれていたようだ。サネは実、カズラはつると言う意味だ。

 

このツルや小枝を適当に切り、水に浸けておくと粘りのある糊のようなものが出てくる。

江戸時代はこのドロドロした樹液を水で薄めたものを養毛料として男女共に洗髪に使っていた。

武士はこれを髪の毛に塗り、手で撫でつけて整髪料にしていたので「美男カズラ」の名になった。

 

おそらく皆必死でやっていたのだろう。

何しろ毛がなくなれば「ちょんまげ」が結えないのだ。

面子を重んじる武士にしてみれば死に値する屈辱だっただろう。

力士が使う「鬢付け油」のようなものと思えば良い。

 

しかも育毛効果も期待して。100%天然素材だからおそらく髪の栄養剤としては優れていたのだろう。

時代考証に忠実な時代劇を見ても禿げた男は坊主か仏門に入った武将しか見かけない。現代とはえらい違いだ。

国営放送を信じるならビナンカズラの効果は絶大という事になるのではなかろうか。

 

野人の頭髪はまだ黒くてふさふさしているから精力剤と同じく自ら実験は出来そうもない。

もう20年も整髪料やクシやブラシの類は使ったことがない。

クリームも含めて男性化粧品の類は家にないのだ。「水と5本の指」でことは足りる。

リンスも使わない。風呂場には時々使う「石鹸シャンプー」があるだけだ。

それでも頭髪は何の問題もない。むしろ男は毎日「変な異物」ばかり塗りたくるから脳天に「異変」が生じるような気がしてならない。まあ畑と同じようなものだと思う。

 

頭と言う畑の多肥、消毒が過ぎる上に、毎日クシやブラシで耕しすぎて連作障害が起こり・・・細ネギも生えてこないのだ。

何万年も続いた人の遺伝子はそんなばかばかしいことは必要としていないはず。

鳥や動物と同じように「たまに水浴び」程度で存続出来るようになっている。

ゾウや猪と同じように時々は泥をこすりつけて洗い、自然界の香りの良い植物エキスをつけるくらいが一番髪には良いのではないかと思っている。

 

髪も歯も毎日ブラシで「ゴシゴシ磨く」ことは森羅万象の理には適っていない。

それを進化と言うか衰退と言うかはその人次第だ。綺麗になるのは間違いないのだが。

一般的な健康法も同じ事が言えるようだ。野人の視点で見ればばかばかしいことがあまりにも多すぎる。

 

ビナンカズラの果実は滋養強壮に用いられる。副作用もなく髪の健康をも維持出来そうだ。

口から飲むか毛根から飲むかの違いだ。

香りはやはりクロモジが最高だ。小枝を蒸してエッセンスを取り出す小型蒸留装置も作ったきりだ。

そろそろ作ってみるか~!