昔から人は山林をうまく利用し共に生きてきた。
下草を刈り、枝は薪や炭に利用、適当に光も入り、山野草やキノコなどの恵みも受けていた。
しかし生活が便利になり今は荒れ放題になってしまった。
光はおろか人さえも入れない。
放棄された農地も同じ道をたどりつつある。
広葉樹林もまた杉や檜に変わり、間伐されず放置されて荒れ放題だ。
光が入らず表土が剥き出しになり、土砂崩れや濁流の元になっている。
落葉樹などの落ち葉が土を豊かにし、有機物を含んだ水が農業を支え、海の生き物を養ってきた。
河川も整備され自然浄化能力を失いつつある。
地球は水の惑星という言葉通り、改めて水、川、森林の果たす役割を考えさせられる。
自然がうまく機能していれば、ダムに流木が溜まることもなく、海に大型流木が漂流することもないだろう。
保水力のなくなった表土は脆く、杉や檜の切り株を海まで押し流す。
産業事情を変えることは困難だが、もっと森林に目を向け、生活に取り入れることが出来れば少しは環境保全に役立つはずだ。
最近、自然の素材を使ったアートが流行っている。
電力会社もこれまでダムに溜まって持て余していた流木をアート素材として活用、新事業まで興している。
ガーデニング素材としても重宝されているようだ。
園芸店などで売られている画一的な製品と異なり、何とも言えない自然の風情がある。
リースなどによく使われる「つる」にも色々な種類があり、特性も異なる。
「アケビ」や「フジ」は折れやすく、「アオツヅラフジ」は強くしなやかで初心者にも扱い易い。
また「スイカズラ」の皮は剥けやすく白く綺麗な地肌が特徴だ。
アート素材になる木の実も豊富で、「ヤシャブシ」や「サルトリイバラ」、「ドングリ類」など数え切れない。
他、「ワレモコウ」などドライフラワーに良いもの、瘤のある木など、好きな人が見れば宝物の宝庫であり、自分の好きな所をカット出来る。
これらのアート素材の採集には難点もある。
拾ってくれば原価はかからないが、何しろ手間がかかる。
それと地の利を知らなければ難しい。
また、落ちているものを拾ってくるのは抵抗を感じないが、山のつるや枝を切るのも後ろめたい。
私有林、村有林、国有林などがあり、それぞれに事情がある。
国立公園など、採取が許されない山林もあれば、場所によっては逆に取ってもらったほうが良いケースもある。
中にはヤマウルシやハゼのようにかぶれる木もあるから、土地事情を知るその道の専門家に案内してもらうのが安全で確実だ。
秋から春にかけては落葉樹の葉が落ち、森の見通しも良くツルの採取が易しい。
蚊や蜘蛛などの虫もいない。
荒れた山林を復興するには、従来の林業という枠を超えた視点が必要だ。
使い道は、材木だけでなく、食、遊、学、さらにはアートの分野にまで広がっている。