簡単な「有機」と野菜の化学 | 野人エッセイす

野人エッセイす

森羅万象から見つめた食の本質とは

有機野菜という言葉を知らない大人はいないが、いったいどれだけの人が有機の本質を理解しているのだろうか。地球の循環を知らずして有機を知ることは出来ない。また反語の無機を知らずして理解は出来ない。有機は無機から構成されている。植物が生み出す「有機物」とは何か? 一言で言えば生命体であり、さらには複雑な分子構造を持つ高分子化合物であり、分子の中心は炭素(c)で構成されている。だから燃やすと後には炭が残る。言い換えれば生き物の中心は無機質の炭素、生命の起源は炭なのだ。だから炭を「ご先祖様」として奉っても良い()。構造は人間が生み出せないほど複雑でも分子を構成する元素は単純なものばかりだ。炭素を中心に水素、酸素、窒素などの無機質を中心に構成されている。つまり空気と水の構成要素である二酸化炭素と窒素が主体とも言える。植物を構成する物質としては他に大地からの微量元素マグネシウム、カルシウム、リン、硫黄がある。 

マグネシウム

人の血液細胞の中心は鉄であり、植物の葉緑素(クロロフィル)の構成物質の中心はマグネシウム。大地は海底が隆起したもので、地球に元からあるマグネシウムは当然土壌に含まれる。不足すると補給手段はない。野山の植物は問題なく青々と茂り足元に葉を落とし循環している。雑草を撤去し、収穫野菜も撤去し続ければいつかは当然不足することになるが、マグネシウムを含む海水を薄めて噴霧することで事は足りる。

カルシウム

カルシウムは元々大地には大量に含まれている。石灰岩もその一つ、不足ならやはり海水で事は足りる。

リン 硫黄

たんぱく質(CHON)は分解されると糖(CHO)とアンモニア(NH3)になる。

硫黄(S)はたんぱく質の構成物質のひとつで、ニラ、ニンニクに多く含まれる。遺伝子、核酸(DNA)に必要なリン(P)は糖の構成物質のひとつで卵に多い。

元々土壌に少ない微量元素硫黄とリンは肥料として重視されるが、以上のことからたんぱく質からも供給されている。 

プラスマイナス0

元々大地に存在し循環する微量元素マグネシウム、カルシウムなどは海水に含まれ、適度な補給は土壌にも植物にも悪くはない。草を排除し、野菜を一方的に搾取し続ければリンや硫黄が不足してくるのは当然で、リンや硫黄をリン酸や硫安として畑に補給すれば野菜が育つのも当然、搾取を最低限にして、道理にかなった自然のからのたんぱく質補給があれば何の問題もないはず。野山の植物はそうして太古から生命を循環させてきた。自然からのたんぱく質とは微生物や虫や鳥のフンや、その死骸。微生物は最短、数時間の生命で、微生物が多いほどたんぱく質も土壌に残される。虫もたんぱく質で構成され、子孫を残して亡き骸は微生物のエサになり分解され土に戻ってゆく。虫や鳥のフンには硫黄が含まれ、フンをするほど、そこで生涯を終えるほど微生物も増え、リンと硫黄が土壌に補給されることになる。

虫や鳥はこれ以外にも生命の循環に非常に重要な役割を担っている。有機物を構成する無機質は循環し、必ず±0になるようになっている。一方的な搾取が心配ならたまに海水でも与えればよい。当たり前のことだが 海は全ての生命の源。ごく薄い海水を農地に噴霧して 畑の住人の誰も迷惑はしない。海水は大地の基本的なミネラルだ。