小学校の時、海や山や生き物は生きる為に必要なことを教えてくれた。
打撲、切り傷、擦り傷、捻挫、満身創痍で身につけたことは今も生きている。
猿も木から落ちると言われるように、そんなに良いことばかりでもなかった。
当時、家には三毛猫がいた。
何処からか迷い込んできてそのまま住み着いた。
メス猫で、毎年何処で仕込んで来るのか春になるとお腹が膨らみ、ゼイゼイ、ヨタヨタしながら目の前で「デン!」と腹を天井に向ける。
つまり・・撫でろという催促だ。仕方なく撫でるとゴロゴロ気持ち良さそうにしていた。
お産の時も押入れで勝手にやればいいのだが、ヨタヨタ出てきて夜中に枕元で「デン!」と腹を突き出す。そして何匹も・・出てくる。そうして毎年、猫の産婆さんをやっていた。
その厚かましい猫は誰がエサをくれる主かよく知っていて、母には忠誠を誓っていた。
ネズミ捕りの天才で、ネズミを捕まえると夜中でも母の枕元に供えて、雌叫びをあげて報告する。
起こされた母は枕の横のネズミを見ても驚かず、「よくやったね!」と、寝ぼけ眼で猫の頭を撫でていた。(本当はイヤだったらしい・・)
その猫から学んだのが間違いの元だった。
当時、幼馴染に好きな子がいたが、いつも悪戯してばかりで素直になれなかった。
半年で小学校も卒業、そのままでは心残りだった。
そこで彼女に「誠意」を見せる為に一人海へ出かけた。
でかいタコを2匹仕留めて彼女の家へ。
玄関の前に「デン!」と置いて彼女を呼び出した。
また何かされると用心深く出てきた彼女は目の前の「異物」を見てびっくり仰天、「ギャ~!」と悲鳴をあげた。
それは喜びの声ではなかった・・
目はいつものように吊り上り一目散に中へ逃げた。
お母さんが出てきて、立派なタコを見て感激、お礼を言われたが心は空しかった。
大人になって知ったが、女性はタコが大好物らしい。
いつも蛇やカエルやイモリでいたずらしていたから信用がないのだと一度は落ち込んだが、帰り道、
「そうだ、彼女は赤い茹でダコしか見たことがなかったんだ、きっとそうだ」・・・
自分にそう言い聞かせるしか傷心は癒せなかった。
家に帰ると三毛猫がすり寄ってきたので平手で頭をバチン!と一発殴った。
猫は、痛かったのかひたすら頭を掻いていた。
翌日、彼女に礼を言われた。
「美味しかった」と。
生ダコが何に見えたのか聞いて納得した。
彼女にはあのグニュリとしたタコの塊が 野人の
ウンチに見えたらしい・・・
置き方が・・まずかったな トグロ巻いて・・
しかし、馬でもあんなでかいのはしないのに・・・