東シナ海を航行中、喉が渇いたと言うと、魚さばき名人のクルーが・・この世のものとも思えない美味しいジュースがあるという。
飲ませてくれと頼むと、じゃあ今から・・といきなりカツオのトローリングだ。
ジュースはカツオで作るらしい。
何とか1匹釣り上げ、頭を落として内臓を抜くと、包丁で骨ごとぶつ切りにしてさらに叩いてミンチを作り始めた。
それをバケツに放り込み、味噌と氷水を加え、何とデッキブラシの柄で思い切りガラガラかき回し始めた。
しばらくすると見た目もおぞましい、どろどろしたジュースらしきしろものが出来上がった。
とても飲む気にはなれなかったが、あまりにも美味そうに飲む彼の様子につられて一杯。
異様な舌触りだが旨い!!熱さも吹き飛ぶような爽快感。
ただ・・たまに骨を海に「プッ!」と吐き出すのだけが面倒だった。
しかしこんなに「骨のあるジュース」は初めてだ。
鮮度が決め手で、釣ってすぐに船上でしか味わえないシロモノだ。
鮮度さえ良ければアタらないというものでもない。
某ホテルの料理長と二人でマダイを釣って、船上で握り寿司を食べようと寿司飯持参で釣行したことがある。
しかしなかなか簡単にマダイは釣れず、昼食時になってもシイラ1匹だった。
やむを得ずシイラで我慢したのだが、やはり鮮度が良いせいかシイラの握りは非常に美味だった。
しばらくして二人とも腹痛に襲われ、釣りどころではなくなってしまった。
綺麗な真水を持参したのだが、洋食シェフは、「大丈夫!大丈夫」と言いながらデッキで処理、まな板と切り身は渋々と真水で洗ったのだが、彼はさばいた包丁を洗い忘れたまま刺身を作った。
いくら鮮度が良くても、腸炎ビブリオ菌などは魚の鱗の粘膜に付着していることがある。
「水道水での水洗い」が魚の処理の基本になっている。
やはり自分で刺身にすれば良かった。
同じ料理人でも和食と洋食は別だと実感した。
基本を怠ったプロ二人・・ガに股で這うようにして港へ向かったのは言うまでもない。