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Der Zauberberg(魔法の山)/ トーマス・マン

88/100

上巻は3日、下巻は読み終えるのに1ヶ月半もかかってしまった。
なんと切り口の多い作品。。
まだ完全には消化しきれていない状態でこの文章を書いている。

こういった間口の広い作品は、
フィニッシュをどこに持ってくるかという問題があり、
巻末の解説でも書かれているように、
実は作者自身も明確にはそれを決めずに書き始めて
流れに身を任せたようだが、
個人的には最終章の決闘のシーンが終わった時点で
充分な満足感が得られ、
あとはどう結論をつけても何らかの片はつくだろうと感じたので、
それだけに、このフィニッシュには少々不満が残った。

他の人はどう感じたのか気になったので色々とレビューを読んでみたが、
まあ「時間の扱いが見事な作品」「精神論の教養小説」などと
評する人の多いこと。。
これだけ切り口の多い作品に対して、特に印象に残ったのがそこ?
感性が拙いとしか言いようがない。
そのような中学生の読書感想文レベルの感想にしか消化できないような
内容の薄い作品では決してない。

まず、舞台設定の見事さだろう。
標高1600メートルの山上にある高級療養施設。
抑圧の強い地上の現実世界から隔離されていて、
病気と死がいつも隣り合わせ、建物の周辺は自然に恵まれ、
気候変化が激しく四季に捕われない季節感があるという、
筆力次第で様々な非現実性を創出しやすい舞台。
見事な設定だ。

また、この作品を難解と感じさせる要因として、
第6章のセテムブリーニとナフタの激しい会話のやり合いがある。
精神と自然、病気と死、革命と伝統、自由と秩序。
色々詰め込んでいるが、
メルヴィル「モービィ・ディック」のような、
ただ単に詰め込んだだけで、
その事が全く何の効果も成していない駄作とは違い、
この作品は「詰め込み」が作品と綺麗に調和し、
芳醇な広がりを演出している。

しかし何と言っても、この作品の一番の読ませ所は
各シーンの起承転結のつけ方だろう。
過剰なまでの精神論、政治論、宗教論の応酬、
気まぐれに表情を変える美しい自然の描写、
音楽の与える高揚感、
様々な方法を駆使してクライマックスまで持っていき、
感情が最高潮にかき立てられた所ですぱんとシーンがカットされる。
この切り方が実に見事で、この読後感だけでも
読んで良かったと思わせるものが充分にある。

こういった粒ぞろいの各章を全体として俯瞰したとき、
上記「時間の扱い」「精神論」が作品に与える深みにも
唸らせられるのであって、
この作品を「時間に関する小説」「教養小説」などと単純に
一面的な部分を切り取って断定するのはナンセンスである。

ロリータ / ナボコフ


13/100

大江健三郎の推薦文につられて思わず買ってしまったが、
残念ながら大江先生が絶賛するほどの筆力はなかった。

そしてこの冗長な描写、どこかで読んだと思ったら
フロヴェール「マダム・ボヴァリー」に似てる。
上から目線の不愉快な語りは村上春樹的、
そりゃつまらんわな。

こういった反社会的な設定の場合、
読者の良心を押さえつける程の、
相手に有無を言わせなくさせる程の圧倒的な筆力、
物語に引き込まれずにはいられなくさせる吸引力が必要なのだが、
この作品にはそれがない。
ただただ自分勝手な価値観と上から目線な態度で突っ走っていく。
ここが大江先生の作品との一番の違いだろう。

逆に言うと、ここさえクリアできれば、
作中のあらゆる表現が生きてくるのだ。
方向性は良かったが、今ひとつ感が拭いきれなかった。
惜しい作品。13点、くらいかな。

娼婦たちの栄光と悲惨 / オノレ・ドゥ・バルザック



84/100

原題:Splendeurs et Misères des Courtisanes
権力と金銭への欲望が複雑に絡み合う立体的世界観。
アンチヒーローを徹底する見事な設定。
改めてバルザックの天才ぶりに圧倒される。
「ペールゴリオ」「幻滅」に続く三部作完結編

2013-01-20 20:33:59 Twitterより

みずから我が涙をぬぐいたまう日 / 大江健三郎


83/100

なぜ今までこの作品を未読だったのか非常に悔やまれる!
やはりこの時期の大江作品は神憑っている。
物語の進行上かなり重大な新事実を、
さも当たり前の事ででもあるかのように
関係詞節内にさらっと入れる手法は、
明らかにフォークナー、マルケスからの影響だろう

2012-09-20 00:42:55 Twitterより


苦海浄土 / 石牟礼道子


83/100

石牟礼道子「苦海浄土」!!!
こんな天才作家が日本にいたのか。
作風から公害問題とセットで語られるのは仕方ない事だろうが、
もっと普遍的な古典文学作品としての文章力の高さを感じる。
ルポ的内容に反してほとんど創作との事。何という表現力。。
次に日本人がノーベル文学賞をとるならこの人だろう

2012-08-12 15:23:42 Twitterより