「そのままの意味だよ。」
電話で話す事じゃない。
だから、次の大劇場の公演が始まる前にそこに訪ねた。
お祝いもかねて…。
「トップになった年、ナンが産んだ子が小学生になる。お前達は親になった。
オレだけがいつまでも舞台上にいられると思うか?」
「レッド!」
「私は立つわ!この子が…」
「ゆん…あの舞台は違うんだ。夢を売ってるんだ。君が立つリアルもある舞台とは違う。」
「言いたいことはわかるけど…」
「勇樹、オレは男役としてしか芝居はしない。正しくは…出来ないんだ。」
オレたちの言い合いに、隣の部屋から赤ん坊の泣き声が上がった。
「でも…私はもっと観たいよ!レッドは舞台に生きる人よ!」
ゆんはそう訴えて、泣き声の元に向かって行った。
勇樹は静かに目の前のお茶を飲んだ。
「一年後、退団を発表する。
二年後、白亜のいる組で退団する。
その間に一人芝居をしたい。格好良い男じゃなく、情けないほどみっともない…一人の女を思って切なく死んでいく男の人生を演じたい。
お前に書いて欲しい。頼む。」
頭を下げた。
そのまま床を見ていたら、頭上で大きなため息が聞こえた。
「あ~あ。」
間の抜けた声だった。
顔を上げたら、勇樹は両手を上げて笑っていた。
「なっ…なんだよ。」
「見ての通り、お手上げだよ。」
「ど…ういうことだ?」
「どこまでも、格好良く行くんだな?
碧さんが退団するって聞いて、彼女が次に…ってゆんもナンも大騒ぎしてた。
そのとたん、これか?トップ就任を見届けて、彼女に見送られて去るのか…。まったく…本当に男前にやり通すんだな。お手上げだ。」
勇樹がおちゃらけてくれてホッとした。
「もちろん、書くよ。喜んで!
思い切り、人間臭くて、でも…格好良い惨めな男を演じさせてやる。思い残す事なくやりきれ。」
「もちろん。」
それ以上は何も話さなかった。
ゆんも赤ん坊を連れて来たけど、勇樹の顔を見て頷いたら、もう何も言わなかった。
「ご機嫌は直ったか?」
「デレデレのパパしてるのか?」
「うるせー。そう言えば…今さら、兄貴がヤキモキしてたぞ。」
「えっ?」
「フフッ。ナンがね、Lに夢中でずっーと見てたらしいよ。そら先生が忙しい時期だったし…ねっ。」
「本当に?」
「何?嬉しいの?」
「もちろん。今度、Lとして会いに行こうかな?ナンに…」
「良いかもね。クスクス。」
今さらだけど、ナンを本当に夢中に出来たのなら嬉しい。
勇樹たちのリップサービスだとしても…。
もう子どもたちの母で頼もしくなったナンだけど、変わらずオレの初恋の人だから…。
「今度、兄貴が理事長に就任するんだよ。
それで忙しいんだけど…。
そうだ!就任記念パーティーにLで出席したら?」
「いいな。そらが悔しがる顔を拝みに行こうか?」
「悪いこと考えてるわね…二人とも。」
穏やかに笑えているオレ。
大丈夫。
このまま、オレは進む。
大丈夫。
ーーー ーーー ーーー ーーー ーーー ーーー
そら先生…
いつのまにやら理事長に就任。(^-^)
ナンは理事長夫人なわけ!( ̄▽ ̄;)
って言うか…年を重ねているのね…。
書かないけれど、いろいろありそうな懐かしの皆さん登場でした。(^-^)