「フジを相手役にしてください。」
昨日あったことをすべて話して、そう頭を下げた。
清音さんや清音のお父さん、フジのご両親を巻き込んで、フジを相手役に出来ないなんてあり得ない!
あくまでもこっちの推測だから…
劇団側の本当の考えはわからない。
でも…だめ押ししておきたかった。
「まったく…誰かと同じように、そうしないなら辞めるって脅す気か?」
「必要なら…」
「わかったよ。わかっている。
みんなそのつもりでいるよ。只、白亜の周りが騒がしいから、ギリギリまで発表を待つ予定だった。」
「ギリギリっていつですか?
いっそ、発表してくれませんか?」
はやる気持ちで口にしていた。
「まだ、待て。お前のトップ就任の話もまだなんだ。それに…」
言葉を止めたプロデューサーの様子が気になった。
碧さんと百々華さんは同時に退団を発表した。私とフジの発表も同時にするのだろう…。
それじゃないなら⁉
「レッドさん…退団を決められたんですか?」
口にしていて、自分の声が震えているのがわかった。
「本当にお前達は不思議なコンビだよ。
そうやって相手の事ばかりだ。
まだ、五組を回り終わってないから…」
それって、裏を返せば…
五組を回ったら退団するって事?
「白亜がトップになって…」
「うちの組で退団するって事ですか?」
そうだ…。
レッドさんが出演する次の大劇場公演は決まってる。
来年は碧さんの退団公演をするからうちじゃない。
その次は私のトップお披露目。
その頃に発表して、私がトップを務めるうちの組で退団する?
そういう事?
「決定事項ですか?」
「レッドが言うんだ。
決定事項も同然だろう?」
プロデューサーの顔に動揺はなかった。
今まですべて、有言実行してきたレッドさん。
私を男役のまま相手役にしたこと、
私を男役として育てて専科に行ったこと、
碧さんと百々華さんコンビのこと、
すべてレッドさんが劇団側へした願いと言う名の提案。
見事に狙い通りに進めてきた。
「そう…ですね。」
「レッドは各組を回って、違う風を送ってくれた。職人のように役をとらえて、大きな存在を示してくれた。
各組の娘役候補も見つけ出して育ててくれたし、世界中に劇団の宣伝までしてくれた。
これ以上望んだら…バチが当たる。それに…」
「男役の美学ですか?」
きっとレッドさんなら…綺麗で格好良いまま、舞台を降りたいというはず。
「ああ。それを言われると…止められなくてな。」
そうだ…。
私が上級生になってきたということは…
レッドさんも月日を重ねて来ているんだ。
どうしてレッドさんがいつまでも同じままで居て下さると思ったのか…。
これも受け止めるべき現実なんだ…。
「そうですね、止められませんよね…。
レッドさんの男役最後の舞台に立ち合えるのなら…それはとても光栄なことです。
その日までに負けない男役白亜でいなければ!私、頑張ります。」
「ああ、でも…白亜は忘れるなよ。
舞台に無事立つことが一番大事だ。
気をつけろ!体調も、あの女にも…。」
プロデューサーの言葉に誓いを新たにする。
男役レッドさんの最後を見送る。
そのために、私はすべての事に負ける訳にはいかないんだ。
ーーー ーーー ーーー ーーー ーーー
やっぱり…レッドか?(*_*)