りっしょう安国論あんこくろん』にたまわく
 旅客りょかくきたりてなげいていわく、近年きんねんより近日きんじついたるまで、天変てんぺんようきん疫癘えきれいあまねてんち、ひろじょうはびこる。ぎゅうみちたおれ、骸骨がいこつみちてり。まねくのともがらすで大半たいはんえ、これかなしまざるのやからあえ一人いちにんし。
 しかあいだあるい剣即けんそくもんもっぱらにして西さいきょうしゅとなえ、あるい衆病しゅうびょう悉除しつじょがんたもちて東方とうほう如来にょらいきょうじゅし、あるいびょうそくしょうめつろう不死ふしことばあおいでほっ真実しんじつみょうもんあがめ、あるい七難しちなん即失そくしつ七福しちふくそくしょうしんじてひゃくひゃっこう調ととのえ、るはみつ真言しんごんおしえつてびょうみずそそぎ、るはぜん入定にゅうじょうよそおいまっとうして空観くうかんつきすまし、もしくはしちじんしょして千門せんもんし、もしくは大力だいりきぎょうしてばんけ、もしくは天神てんじん地祇ちぎはいしてかくかいさいくわだて、もしくは万民ばんみん百姓ひゃくしょうあわれみて国主こくしゅ国宰こくさい徳政とくせいおこなう。
 しかりといえどただ肝胆かんたんくだくのみにしていよいよえきせまり、乞客こっかくあふにんまなこてり。せるしかばねものみし、ならべるかばねはしす。
 れば二離にりたまあわ五緯ごいたまつらぬ、三宝さんぼうましまひゃくおういまきわまらざるに、はやおとろほうなんすたれたる、いかなるわざわいり、いかなるあやまりるや。



 この7月は『りっしょう安国論あんこくろん』の月であります。
 よって、今月の4回の日曜にちようごんぎょうにおきまして

「『りっしょう安国論あんこくろん』のもん拝読はいどくして、そのこころを拝したてまつりたい」

とこう思っております。
 そして、只今ただいま冒頭ぼうとうの一節(『りっしょう安国論あんこくろん』の最初のもんですね)を拝読はいどくさせていただきました。
 これからすべてのだいしょうにんさまおおせが起きているわけであります。
 で、この『りっしょう安国論あんこくろん』というのは、だいしょうにんさま御年おんとし39歳の文応ぶんのう元年7月16日、時の国主こくしゅほうじょう時頼ときよりさいみょうにゅうどうと申しまするが)、この国主こくしゅ進覧しんらんして、初めてこっかんぎょうをあそばした書であります。
 このもんは、りっしゅうより4年目に前代ぜんだいもん巨大きょだいしんが起きた。その事を機としてしるされたわけであります。
 だいしょうにんさまは、りっしゅうの時から三大さんだいほうづうあそばした。

末法まっぽうの全人類がじょうぶつの叶う大法は、寿じゅりょうほん文底もんていちんの南無妙法蓮華経以外にはない」

この事をただ一人いちにん知り給うただいしょうにんさまは、当時日本国に蔓延はびこっておった念仏ねんぶつ真言しんごんぜんりつ等のじゃしゅうしゃくして

「それらの邪法じゃほうを捨てて、南無妙法蓮華経と唱えよ」

という事をおすすめになったわけでありまするが、念仏ねんぶつ真言しんごんぜんしゅうりつしゅう等の邪法じゃほうぼうは商売でやっておるわけでありまするから、だいしょうにんさまおおせのどうが正しければ正しいほど怨嫉おんしつを起こして、みんしゅう扇動せんどうした。
 そこでだいしょうにんにくみ、そして、ののしり悪口を言うそのみんしゅうの声が一国にちた」という事であります。
 そして、りっしゅうよりいよいよ4年目になりまして、しょう元年に前代ぜんだいもんの大しんが起きた。
 それだけではない、このしんを機として台風たいふう大洪水だいこうずい大旱魃だいかんばつ、これらのしょうだいへんと、それから、食糧しょくりょう危機ききだいきん)が起きた。そして、大規模なる感染かんせんしょうが起きて、ために「日本国中の人民じんみんの大半が死に絶える」というさんじょうが起きたんですね。
 そして、国主こくしゅはこれに驚きまして「何でこのような災難さいなんが打ち続くのか」という事でしょしゅういのりをさせた。一向にそのような事はこうがない。
 国主こくしゅ自身が政治家として最善さいぜんを尽くして「何とか国民が心休まるように」といって善政ぜんせいを引いたけど、これもまたいよいよ災難さいなんを増すばかりであった。誰もこの原因げんいんがわからなかった。
 このとき、だいしょうにんさまは、この災難さいなんをじっとらんあそばして

「この災難さいなんは、一国げて正しい仏法ぶっぽうそむくゆえに、諸天しょてんの働きにより災難さいなんが起こるのである。
 よって、正しい仏法ぶっぽうそむき続けるならば、この国の人々はこんじょうにはこくの攻めを受けて、しょうには阿鼻あびごくに堕する」

という事を断言だんげんあそばした。
 「人を救い、国を救うために早く邪法じゃほうを捨てて三大さんだいほう帰依きえすべし」という事を国主こくしゅうながし給うた。
 これがすなわち『りっしょう安国論あんこくろん』であります。


平成20年 7月6日 浅井先生指導