黒住教本部神殿「大教殿」の正面。倉敷アイビースクエアを代表作とする浦部鎮太郎の設計。現在は、「太陽の神殿(ひのみあらか)」の名称を使用していない?

 

本部神殿「大教殿」を側面から眺める。正面の千木が内削ぎ、側面の千木が外削ぎであることに注目。

 

教祖神奥津城(おくつき)。大本教の改築前の奥津城との類似性を感じるが、大本のそれは、明治天皇の桃山陵との類似性を指摘されて改築させられた。

 

日拝所からの展望。ここより、朝日を拝む(呑む?)。栄西禅師生誕地を訪れた時間は快晴だったが、だんだんと曇ってしまい残念。

 

 

 前回、吉備津神社、栄西禅師生誕地、中山茶臼山古墳(中山御陵)を歩いて巡ったことを書きました。

 

 

 続いて、神道系の新宗教である黒住教本部・神道山へ向かいました。黒住教と教祖の黒住宗忠については、 かつて、『岡山県と宗教家(宗教発生の土壌としての岡山県)』と言う記事をアップしたことがあり、以前から興味を持っていました。

 

 

 また、昔の講談社現代新書に『新宗教と巨大建築(五十嵐太郎・著/講談社/現代新書)』があり、建築物としての黒住教本部神殿「大教殿」にも行ってみたいと思っていました。

 

 神道山(しんとうざん)は標高120メートルの低山で、黒住教の本部があります。よくわからなかったのは「吉備の中山(吉備中山)」と「神道山」の関係です。学がなくて恐縮ですが、吉備津神社、吉備津彦神社から、山陽新幹線の通る辺りまでの山塊の総称が「吉備の中山(吉備中山)」で、その中の黒住教本部のある120メートルピークが「神道山」のようです。とすると、「中山茶臼山古墳」は、「吉備の中山」にある「茶臼山」の古墳なのでしょうか。

 

 さて、 中山茶臼山古墳(中山御陵)からさらに歩いて、黒住教の本部の入口へ着きました。入り口には、しんとうざん茶店と言う飲食できる施設がありました。本部神殿まで近づくためのエスカレータがいくつか用意されていましたが、ありがたみがないので、歩きました。

 

 本部神殿の「大教殿」で着きました。『新宗教と巨大建築』を読むと、「太陽の神殿(ひのみあらか)」との名称が登場しますが、現在の黒住教のホームページには、その名称は掲載されていません。設計は、倉敷アイビースクエアを代表作とする浦部鎮太郎です。また、千木や鰹木は、備前焼作家の藤原健が制作したものです。つまり、無形文化財保持者の手による焼物です。建築として興味深いのは、屋根の切妻を十字に直交させ、正面の千木を内削ぎ、側面の千木を外削ぎとしているところです。ちなみに、伊勢神宮の内宮が内削ぎ、外宮が外削ぎとなっています。

 

 施設の方から、「どうぞ、中へお入りください。」との声掛けがあったので、靴を脱いで左側から教殿へ上がりました。ホームページでは、教殿は300畳とあります(『新宗教と巨大建築』には、220畳とあります)。時代が時代だけに、畳の上には長椅子で列が作られていました。自然に溶け込んだ現代建築と神道的和風建築の融合、そして、自分以外誰もいない静かな広い空間・・・圧巻でした。迷惑かとも思いましたが、5分間ほど正座して目を閉じて、心で聖地を感じさせていただきました。合気道の五段をいただいている自分としては、どうしても「ここで合気道の稽古をしたら、澄み切った気分になれるだろうな、天井を見れば建物の中心のわかる構造になっている。この中心で、入り身投げなど・・・」と考えてしまう訳ですが、合気道は、かつて大本と言う別の神道系新宗教と関わりのあった武道なので、ありえない話です。通常の神道の神社は本殿と拝殿が分かれており、拝殿の外から賽銭を投げたりするもので、本殿の中へ入ることも、見ることもできません。大教殿内には、教殿よりも位の高いスペースがありますが、建築上の中心部に入ることができた訳で、貴重な体験でした。

 

 次に、教祖神奥津城(おくつき)へと歩きました。『新宗教と巨大建築』に掲載されていた大本教の改築前の奥津城との類似性を感じました。しかし、大本教の奥津城は、明治天皇の桃山陵との類似性を指摘され、京都府警の改築命令を受けて饅頭型から方形に変えられました。その後、大本教は二度の大弾圧を受けます。

 

 最後に、日拝所へと登りました。天照大御神を崇める黒住教としては、太陽そして朝日を拝むことは重要な儀式のようです。4枚目の画像の通り、だんだんと曇ってしまい残念でした。歴史ある吉備の国を、俯瞰することができました。ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

※文中の『新宗教と巨大建築(五十嵐太郎・著/講談社/現代新書)』は、増補・書下ろしを加えて『新編・新宗教と巨大建築(筑摩書房/ちくま学芸文庫)』として発売されましたが、中古がプレミア価格化しているようです。

 

 

※関連リンク先

「山歩き まとめ(改)」 
https://ameblo.jp/musyaavesta/entry-12624377490.html