前回の続き。

https://ameblo.jp/musyaavesta/entry-12506011403.html

 

 日本においてのオカルト元年が、1973年であることについては、「逆立ちしたフランケンシュタイン―科学仕掛けの神秘主義」の著者、新戸雅章氏らが主張しているように論をまたない。
 この年、小松左京の「日本沈没」、五島勉の「ノストラダムスの大予言」がベストセラーとなり、日本人における終末論、終末観を形成し、コリン・ウィルソンの「オカルト」も翻訳出版されている。また、石原慎太郎を総隊長とするネス湖怪獣探索探検が企てられている。新倉イワオの「あなたの知らない世界」も、同年夏から始まっている。
 そして、その翌年の1974年の3月、日本テレビの木曜スペシャルでは、ユリ・ゲラーが来日し、スプーン曲げを中心に超能力ブームを起こす。オカルト映画の「エクソシスト」が、同年7月に公開され大ブームとなる。当時は、「ホラー映画」「スプラッター映画」等の呼称はまだなく、「エクソシスト」は「オカルト映画」と呼ばれていた。「エクソシスト」は同年に、小説も出版されている。マンガでは、つのだじろうの「恐怖新聞」「うしろの百太郎」が連載開始され、オカルト知識を低年齢層にまで浸透させる起爆剤となっている。これらのマンガの影響から、全国の女子学生の間でコックリさんブームが起き、集団ヒステリーやパニックを起こす事件も多発した。水木しげる的妖怪像を、最も少年少女に植え付けた「小学館入門百科シリーズ 妖怪なんでも入門」も、この年に刊行されている。また、中岡俊哉の「心霊写真集」が刊行され始めるのも、この年からである。ちなみに同年に中岡は、「狐狗狸さんの秘密」も出版している。
 このようにオカルトブームは、予言と終末思想、超古代史、UFOと宇宙人、超能力、心霊現象、陰謀論、疑似科学、UMAなどが複雑に絡み合いながら発展していく。その土台には、公害などによる現代科学や現代科学技術に対する疑念、石油ショック等による高度経済成長への危機感、1960年代における新宗教ブーム(創価学会・PL教団・立正佼成会)から1970年代の新新宗教ブーム(阿含宗・GLA系教団・真光系教団)への移行、米国でのベトナム戦争反対から生じたカウンターカルチャー運動やヒッピームーブメントの影響、さらにそこから生じたニューエイジやニューサイエンスの影響などがあったのではなかろうか。

 そのような影響下で、日本のアニメや、その原作となることも多かったマンガは、オカルトの影響を大きく受け、オカルト知識を設定の中に組み込んでいく。これは、「隠された知」を意味する「オカルト」をサブカルチャー的に白日の下にさらし、大衆が情報を共有する「隠されていない知」へと発展させる過程であったと言えよう。

 まず、「ウルトラマンレオ」であるが、 1974年4月12日から1975年3月28日まで放映されており、オカルトブームまっただなかである。第一話は、小松左京の「日本沈没」を連想させる大洪水の中から始まり、オープニング曲は「地球の最後が来るという(中略)突然あらしがまきおこり(中略)何かの予言があたる時」である。モロボシ・ダンはウルトラ念力を使い、物語クライマックスでは円盤生物が登場する。このことは、「大予言&日本沈没」で始まり、その途中で超能力(念力)を使い、UFOで終了したと表現できる。
 同じくUFOがらみでは、「UFOロボ グレンダイザー(1975年10月5日から1977年2月27日)」、「UFO戦士ダイアポロン(1976年4月6日から同年9月28日)」、「円盤戦争バンキッド(1976年10月3日から1977年3月27日)」などが存在する。ちなみに、「グレンダイザー」は、1975年7月26日の東映まんがまつりで公開された「宇宙円盤大戦争」のリメイク。

 「仮面ライダーX(1974年2月16日から同年10月12日)」は、GODと呼ばれる組織に属する神話をモチーフとした怪人と戦う予定であったが、「オカルトス」と言うギリシャ・ローマ神話にも登場しない、「オカルト」から派生したネーミングの怪人が登場した。当時のオカルトブームの影響を窺い知ることができる。

 「仮面ライダーアマゾン(1974年10月19日から1975年3月29日)」は、前述の「仮面ライダーX」の次作品である。表立ってのオカルト的要素はないものの、アマゾンは、長老バゴーによって古代インカ帝国に伝わる神秘の技術で改造されている。機械を使用しない、オーガニックな改造手術であったかもしれず、アマゾンの体内そのものがオーパーツと言えるかもしれない。アマゾンの改造だけでなく、ギギの腕輪とガガの腕輪も神秘の力を持つオーパーツと言え、超古代文明や超古代史の要素を含んだ設定となっている。

 「勇者ライディーン(1975年4月4日から1976年3月26日)」は、古代ムー帝国と言う超古代文明を設定に盛り込んでいる。当時はもっとオカルト色の強い伝奇ものを予定していたが、放送局であるNETの株主でもあった朝日新聞社は、当時の超能力論争で否定派にまわっており、路線変更と監督の交代を余儀なくされた。

 「大空魔竜ガイキング(1976年4月1日から1977年1月27日)」は、超文明を持つゼーラ星人は、数千年前に地球に到達しており、世界各地の神話、伝説、消失した古代文明およびその遺跡(とくに巨大建造物)・オーパーツは彼らゼーラ星人と人類の接触の名残だったという設定になっている。「ライディーン」が地球内超文明だとするならば、「ガイキング」は地球外超文明と言う路線である。超能力戦士を集めたチームが大空魔竜戦隊であった。

 「ブロッカー軍団IVマシーンブラスター(1976年7月5日から1977年3月28日)」は、エレパスと言う超能力が使える人間にしか、ロボットが動かせない設定だった。由利元来博士の由来は、ユリー・ゲラー。

 「超合体魔術ロボ ギンガイザー(1977年4月9日から同年10月22日)」は、古代の地球に現れたプラズマン族の末裔、ゴードー博士と、プラズマン族と共に古代の地球に現れたサゾリオン帝国の戦いと言う設定である。「ガイキング」「マシ-ンブラスター」と同様、ロボットの操縦者は超能力者となっている。必殺技「超常スマッシュ」も、「超常現象」を彷彿させるネーミングとなっている。

 「超人戦隊バラタック(1977年7月3日から1978年3月26日)」は、超人戦隊と言う超能力戦士のチームがロボットを操縦する設定である。ロボットの操縦者が超能力者である点においては、「ガイキング」「マシ-ンブラスター」「ギンガイザー」と同様である。

 これらのロボットの操縦者イコール超能力者と言う設定は、のちの「機動戦士ガンダム(テレビ版1979年4月7日から1980年1月26日)」での、一部の操縦者がニュータイプ(新人類)と言う設定にも影響を与えていると思われる。また、「伝説巨神イデオン(テレビ版1980年5月8日から1981年1月30日)」の無限エネルギー「イデ」について富野由悠季は、『イデは第6文明人の精神の一部をエネルギー利用する実験の失敗により誕生したものであり、その際に第6文明人はすべての精神を吸い取られて滅亡した』としている。
 操縦者イコール超能力者と言う設定は1980年代に入っても活かされ、タイムボカンシリーズ中、最もシリアス路線であった「逆転イッパツマン(1982年2月13日から1983年3月26日)」では、「サイキックウェーブ」「サイキックロボット」などの用語が劇中で飛びかうこととなる。そして、マンガ版「風魔の小次郎(1982年から1983年)」の「サイキックソルジャー」と言う概念や、マンガ版「AKIRA(1982年12月20日から1990年6月25日)」へと連なっていく。最終的には、「きまぐれオレンジロード(マンガ版1984年から1987年・アニメ版1987年4月6日から1988年3月7日)」のようなラブコメマンガの主人公の春日恭介や、「ついでにとんちんかん(マンガ版1984年から1989年・アニメ版1987年10月17日から1988年10月1日)」のようなギャクマンガの主要キャラの白井甘子(シロン)などが超能力を使いこなす時代となる。


※参考文献
「オカルトの帝国」青弓社 一柳廣孝・編著
「オカルトの惑星」青弓社 吉田司雄・編著
「スーパーロボット画報」竹書房 谷澤光一・編著

 

 

※関連リンク先

確かにあったリバイバル(リメイク)ブーム【特撮・アニメ・マンガ】 | 武術とレトロゲーム (ameblo.jp)

 

確かにあったオカルトブーム後編【特撮・アニメ・マンガ】 | 武術とレトロゲーム (ameblo.jp)

 

確かにあった忍者ブーム【特撮・アニメ・マンガ】 | 武術とレトロゲーム (ameblo.jp)