国分寺をぶらり散歩。
駅周辺でお店探しをしていると珍しい看板。
とんきは目黒の有名店だが国分寺にも支店があったのか?
とりあえずこの出会いを大切にしたいので入店。
厨房のステンレスもグリスフィルターも油汚れは微塵もなく鏡のようにピカピカ。
この時点で今日の勝利を確信。
お通しは無料で昆布煮。
サラリーマンならとっくに定年を迎え楽隠居をしているはずの田中泯さん似の老店主と若いお弟子さん。
二人ともコックコートは真っ白で一部の汚れもない。
訊けば目黒の「とんき」の暖簾分けだそうな。
次々に入る注文を大鍋に投入していくが、タイマーなどは使わない。
油の音と泡に全神経を集中させ、左手はガスの火力調整。
揚げあがったとんかつを熱くないはずはないのに素手で持ち手早くカット。
すかさずお母さんが現れ「ご飯はお代わりして下さいね」、そして右手に回り「熱いの置きま~す」。
お母さんの話し方が可愛いったりゃありゃしない。
50年前に出会っていたら間違いなく恋に落ちただろう。
それではいただきます
しみじみと旨さの波が続いていく。
表面はサクッと香ばしく、次にイタリア料理のフリッタのようにふんわりとした断層が現れる。そしてジューシーなお肉にたどり着いたときには心の中で歓喜の声が上がる。
若い職人の目配りが素晴らしい。
「キャベツのお代わりいかがでしょうか」
「ごはんのお代わりお持ちしましょうか」
食べ終わるとすかさず、
「お茶を熱いのに差し替えます」
薬を飲もうとすると、
「すぐお水をお持ちします」
この若い衆はいい修業先を見つけたね。
料理の技術だけじゃなく飲食店にとってそれ以上に大切な心の修業もさせてもらっている。
「親方、いい後継者がいて良かったね」
そう声をかけると満面の笑みで喜んでくれる。
帰りの電車の中で、いい店だったなと改めて感じたし、可愛いおばあちゃんにもまた会いたいものだ。
美味しい食事に感謝をこめて
「ごちそうさま!」
【お店】
・とんき 国分寺店
・東京都国分寺市南町3-18-1