昨日の続き・・・
野菜巻き串を求めて新宿三丁目までやってきたけど、空振りもいいところでイライラが募っている。
BAR「ブリューダー」さん。
ベートーベンが大好きなマスターのお店。
店名はベートーベンの交響曲第9番の歌詞「Alle Menschen werden Bruder!」から採ったもので「同士」という意味がある。
ここに集う人は皆同士だとの思いからだろう。
お店に飛び込むなり、「マスター、旨いサイドカー作って!」
マスターは、シェーカーを前後ではなく上下に振る。
最初はゆっくり、そして次第に加速していくのだが、気合のこもったそのひと振りは、まるで第九を振るフルトベングラー。
●サイドカー
貴重なアンティークグラスに注がれたサイドカーは驚くばかりの気品に満ちている。
静かに口に運びごくりと飲みこむ。
これだよ!
本物の職人の作る本物の酒。
一口飲むごとに悪かった機嫌も治ってくるのが分かる。
●チャーム
マスター独自の味付けのミックスナッツ。
これは美味い。
●ジャックローズ
アップル・ブランデー、ライム・ジュースそれにザクロの果汁を加えてシェークするが、ザクロジュースもマスター手作り。
なるほど、これは他にはない新鮮な味だ。
もうすっかり機嫌も治りマスターとの音楽談義。
先日聴いたファジル・サイのコンサートの話から、ベートーベンのピアノソナタ「悲愴」の第2楽章について語り合う。
いつの間にか悲愴の第2楽章が静かに流れている。
バックハウスの弾く最高の音楽を聴きながら飲む最高のカクテル。
何とも贅沢な時間だ。
「マスター、そこの棚にある『イエガ―マイスター』って家ではいつも炭酸割りで飲んでいるんだけど飽きちゃってね、何か美味いカクテルにできる?」
ちょっと考えてシェーカーを準備し出来上がったカクテル。
これは?
「ただ今即興で作ったので名前はありません。カデンツァとでもしときますか」
ということでカデンツァと命名(笑)
●カデンツァ
これは・・・!
薬膳酒であるイエガ―マイスターの風味を消すどころかしっかり主役を張っているのに、甘さや酸味も加わり複雑でまろやかな味になっている。
この魔法のような秘密は何なんだ!
ガンメルダンクスって確かデンマークの薬膳酒だよね。
薬膳酒に薬膳酒を合せる。
それだけじゃとんでもないことになるので、オレンジの皮で作るアメールピコンを合わせたのか・・・
味もいいけど、体も健康になっていくような気がする。
いつもながら素敵な時間を過ごせてほろ酔い気分で帰路に就く。
美味しい酒をいただき感謝をこめて
「ごちそうさま!」
【本日の名曲コーナー】
ベートーベンのピアノ協奏曲第3番より第1楽章の後半。
ピアノはファジル・サイ。
カデンツァとは、曲の途中にピアニストが即興的に自由に演奏する部分。
つまり独奏者自らが思いつくくままに作曲をする訳だ。
前後のつながりも必要になるためピアニストの才能が試される。
この曲におけるファジル・サイのカデンツァを聴いてほしい(6:30~)
特に後半の微笑みかけるようなチャーミングな演奏は実に魅力的だ。
【お店】 ★★
・ブリューダー
・東京都新宿区新宿3-7-7 十字屋ビル 3F
・http://www.barbruder.com/