日頃、とてもお世話になっているご夫婦の方からご紹介されたこの焼酎。
「何焼酎ですか?」と伺ったら「黒糖」と。
黒糖焼酎。それはハードルの高い響き。
なんせ、mus musの料理のどの辺にあわせれば良いのかがわからなかった。とてもインパクトが強いという印象があるのが黒糖焼酎なんです。
が、「気に入ると思う」
mus musの料理内容はとてもよくご理解してくださっているこちらのご夫婦のオススメなのだから、きっと、ピッタリの焼酎に違いない!
でも、生産本数も少なく、もしかしたら手に入りにくいかもということでした。
ならば酒蔵さんに聞いてみよう。
「mus musさんの取引がある酒屋さんはどこですか?」
「はい。焼酎は五反田の内藤商店さんです」
「あ、内藤さんなら全種、納品させていただいてます」とのこと。
おっと。さすが内藤商店さん。かっこよすぎる。
試飲してみたところ、本当にびっくりいたしました。
すごく「生」感というか、黒糖がここにあるような香りといいますか。
甘いような、落ち着くような、嫌なとこが一つも感じられない香りがしました。
その秘密は「蒸留方法」かと思っています。
焼酎には「常圧蒸留」と「減圧蒸留」の2種類の蒸留方法があります。
古くから使われている蒸留方法が「常圧」
こちらは圧を変えることなく蒸留することで、素材の持ち味を生かすことができます。
そのかわり、素材がわるければ、雑味や臭みも一緒にお酒になっていきます。
新しい蒸留方法の「減圧」
こちらは圧を変えることで、臭みのない、すっきりとした飲みやすい焼酎をつくることができます。
そのかわり、味は比較的「単一」に感じてしまうこともあります。
この山田酒造さんの「長雲 一番橋」は「常圧蒸留」
私、実はこの焼酎に出会うまで蒸留方法で味が変わるなんて知りませんでした。
この「生」を感じる風味はいったいなんなんだろうか、、、と思い、調べてみて初めて知ったのでした。
焼酎がその昔、「臭い」「飲みにくい」と嫌煙されていたころの蒸留方法は「常圧蒸留」だったのでした。
ところが、減圧蒸留の登場で「焼酎なのに臭くない」とか「飲みやすい」と言われるようになったのです。
昭和50年代に普及された蒸留方法なんだそう。
そこに旨みや個性が表現できはじめたころ、皆さんの記憶にも新しい「焼酎ブーム」が巻き起こります。
13年くらい前のこと。
あれ?常圧のいいとこが書いてない。
そうなんです。常圧蒸留は、臭み、雑味の原因と考えられていたのです。
しかし。
臭み、雑味の原因は、蒸留方法が悪いんではなく、素材が悪いからごまかせなかったと言ってしまってもよいと思うんです。
減圧蒸留にしてしまえば、どんな素材でも「すっきり臭みがない焼酎」を作ることができます。
海外で生産される安い芋などを仕入れて、焼酎にする蔵元さんも出てくる始末にまで発展し、問題視された時期もありました。
「でも蒸留してしまえば味の違いはほとんどありません」
その時にとある蔵元さんから伝言されたのがこのコメント。
本当に残念な時期でした。
(もちろん、減圧の焼酎の全てが悪い素材だと言ってるわけではないです!!!!!)
ということは。常圧蒸留するときの原材料は「ちゃんとした良いもの」でなければならない。
で、ここまで書いて、この「長雲 一番橋」ですが、もちろん「常圧蒸留」。
素材がいいから、素材の持っている良さを最大限に表現できるんですね。
言い過ぎかもしれませんが、「かじってる」ような気になるくらい、とても「黒糖」感がすごいんです。
そのものの味ですね。
この長雲 一番橋との出会いのおかげでものすごくお勉強になりましたし、ムネを張って「美味しい」と言えるお酒がまた一つ増えたことに、感謝です。Tさま、おくさま、ありがとうございます!!!
できましたら、こちらの焼酎は氷だけ入れて、ゆっくり、奈良漬けなどと一緒に飲んでいただきたいです。
ソーダで割ると、香りが跳ねてきて、それも美味しいです。
何度も言うようですが、私はお酒は飲めませんが、香りだけでも、ずっと嗅いでいたくなるような焼酎です。
mus musにいらっしゃったら、ぜひ。