Music Train〜旅立ち編vol.4


停車中の汽車の窓から、心地よい風が入ってくる。暖かい日差しがシートを照らす朝。


「これは人の想いで走るんだ。動かされた人の想いの数だけ新しい世界が待ってる。想いを乗せて走る、Music Trainだ。」

師の言葉を回想しながら、昨日起きた光の粒子について考えていた。

人の想いが原動力がゆえに、人が集まる場所であることが条件だ。想いが動く、これは音楽によるものだろう。それにしても、光の粒子については説明がつかない。想いの可視化なんて師の研究にもなかったことだ。ひとつ言えることは、あの中心には彼女がいた。

色々考えていても仕方ない。これから検証していけば良いことだ。


「車掌ー。車掌ーーー。」

停車中の汽車の車窓外から、天真爛漫な声が聞こえた。

「牧場のステージでライブしてるんですよー。ギター弾いて、歌ってかっこいいんですよー」

牧場はお祭りのような賑わいで、音楽に華やぎ、ピザやバーガーを楽しむ人々で溢れかえっていた。


人はみなそれぞれの人生を、喜びや悲しみを抱え生きている。多くの人々がそれぞれの物語を抱えながら、幸せとは何か求めているのだろう。

今ここは、そうした人々が、嬉しい、楽しい、美味しいといった幸せを感じるための場所となっているのであろう。

聞くと、昨日の彼女の歌声に感化され、音楽家たちが声をかけあい、今日集い、ライブが実現したのだそうだ。

私は汽車の七色に光るボディーに手をあて、音楽の可能性を、人の強さというものを感じていた。


祭りは夕暮れまで続き、汽車は発車の時刻を迎えた。

彼女はたくさんの音楽仲間たちに見送れ、汽車の窓から、身を乗り出し、大きく手を振っていた。

シュポーー。牧場が小さくなっていく。またいつか会える日まで。

音楽が紡いだ、友情を乗せて、汽車は明日へと進む。


旅立ち編 完



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