美空ひばり作詞の重責もなんの!
あやや「最後のソロアイドル歌手」としての実力証明曲
「20代の女性歌手で一番うまいと思う」
2011年末、竹内まりやは、夫・山下達郎のラジオ番組で、松浦亜弥の歌唱力をそう絶賛した。自身のブログでは、「アイドルと呼ぶのをはばかられるほどの実力派シンガーであり、日本屈指のパフォーマー」とも。
松浦亜弥は2001年、「ドッキドキ!LOVEメール」で歌手デビュー。
以来、シングル21枚を出し、紅白歌合戦にも5回出場。
松浦は、デビュー当初からファンには歌唱力の高さを評価されていたが、一般のTV視聴者からは、そう見られていなかった感がある。
「トロピカ〜ル恋して〜る」「♡桃色片想い♡」「Yeah!めっちゃホリディ」と、つんく♂作の奇抜なタイトルのパーティSONGを、ド派手な衣装で歌うキャピキャピしたティーンアイドル…。
同じ事務所のモーニング娘。らと共に、つんく♂の総合プロデュースするハロー!プロジェクトの一員として活躍したこともあり、デビュー当初の彼女に、そんなイメージが先行していたのは事実。お笑い芸人にモノマネされる「あやや」像も、この時期に確立された。
そんな潮流を変えたのが、8枚目のシングル「草原の人」だ。
この曲の作詞は、加藤和枝。昭和を代表する大歌手・美空ひばりその人である。
美空ひばりが、1975年に芸能プロモーター・長良じゅんに宛てた手紙に書かれた歌詞に、つんく♂が作曲。長良が歌い手に松浦を指名し、このシングルの制作が実現。
松浦初のミディアム・バラードは、オリコン週間チャート2位となるヒットになった。
「小指をかたく むすんだ君なのに この風といっしょに 消えていっちゃった」
ひばりの歌詞には、亡き恋人に思いを寄せ、自分は強く生きようと誓う少年の切なる心情が描かれている。
ひばりが、どんな想いでこの歌詞をしたためたのかは不明。
だが、戦争体験を含め、数々の愛する人との死別を経て来たひばりならではの死生観が、この歌詞にはたしかに宿っており、その言葉の一つ一つを、松浦が明瞭で伸びやかな歌唱で、しっかりとリスナーに伝えている。
21世紀以降、アイドルはグループ化の時代に入り、松浦は今のところ「最後のソロアイドル」と称されている。
松浦以降のソロ女性アイドル歌手は、松浦が築いた「歌唱力の高い壁」を超えなくてはならない。
たしかに大変である。
「草原の人」
作詞;加藤和枝
作曲;つんく♂
編曲;鈴木Daichi秀行

