続「気分は逆光線」⁉︎
明菜のデビュー曲は、いきなりA級のシティPOP!
中森明菜がデビューした1982年の5月。
出版業界は赤川次郎、音楽業界は来生たかおのブームの渦中にあった。
前年、薬師丸ひろ子主演の角川映画「セーラー服と機関銃」が爆発的なヒットとなり、原作の赤川次郎は一躍ベストセラー作家、薬師丸が歌う主題歌を作曲した来生たかおは一躍売れっ子作曲家になっていた。
来生は「セーラー服と機関銃」のセルフカバー「夢の途中」もヒットさせ、以降、松田聖子、河合奈保子、大橋純子、桃井かおり…と、大物女性歌手たちに次々に楽曲提供し、ヒットさせた。
かたや82年は、後に「花の82年組」と呼ばれる新人アイドル歌手の豊作年で、年明けから、小泉今日子、堀ちえみ、石川秀美、早見優らが続々とデビューし、テレビの歌番組を賑わせていた。
そんな中、新人アイドル歌手としてはやや遅い5月1日にデビューした中森明菜は、当初、アイドルとしては、さほど目立った存在ではなかった。
むしろ、明菜本人よりも「スローモーション」という楽曲が、大学生ら一部の若者たちに「今をときめく来生たかおが、新人アイドルに提供した格好いいシティPOP」として、先行して受け入れられていた感があった。
かほど、この曲は、当時の新人アイドル歌手のデビュー曲としては、破格に大人びており、ポップスとしての普遍的な魅力を携えた楽曲だった。
他の82年組のデビュー曲と「スローモーション 」を続けて聴くと、それがよくわかる。
LOWの効いたボーカルの圧、当時流行のフュージョンの香りを導入した間奏、憂いを秘めた濡れたマイナーメロディ。
そして何より、難易度の高い楽曲を自分のものにし「始めから仕上がっていた」明菜の堂々としたボーカルが、このデビュー曲で堪能できる。
「砂の上 刻むステップ ほんのひとり遊び」
夏のバカンスを前に、突然現れた素敵な男性に、戸惑い揺れる女性の心情を描いた来生えつこの歌詞もお洒落だ。
だから、もし82年のヒット曲でプレイリストを作る場合、「スローモーション」はアイドルソングに分類せず、同じ来生たかおの82年4月リリースのシングル「気分は逆光線」に続けて聴くと座りが良い。
こちらは、少しわがままな恋人に翻弄される男性を主人公にしたシティPOP。
同じ、夏のバカンス前の「砂の上」シリーズ。曲調やサウンドの雰囲気も地続き。
ぜひお試し下さいませ。
「スローモーション」
作詞:来生えつこ
作曲:来生たかお
編曲:船山基紀