● 楽譜の中の、○○を大事にしています
こんにちは。楽譜ラボ・森本良子です。
もう20年ほど前のことです。
『Digital楽譜ラボ』の前身である楽譜浄書専門の制作会社が業務をスタートした時、一般のお取引先の反応はあまりいいものではありませんでした。
その多くが、今ではとても大きな、大切なクライアントさんになって下さいましたが、その当時はデジタルで楽譜を作るということ自体が新しく、機械によって作ることにまだ抵抗がある時代だったのです。
それまでの楽譜は、日本では職人さんの手で、一つ一つ五線を描き、音符や記号はハンコで押して、本当に手作業の『モノ作り』的なお仕事でした。
それはそれは、気の遠くなるような作業で、1ページを作るのに数日かかるような、途方もないことだったのです。
それがパソコンで作るデジタルなものに変わり、便利に作れるようになったわけですが、今度は手作業の楽譜に比べて「温かみがない」と、批判されたのです。
実際には、そんな批判を受けた数年後には、出版業界自体がデジタルに移行し、楽譜出版の世界もデジタルが主流になりました。
でも、実はデジタルになったのは道具だけです。
プロの現場の作業は今でも、デジタルな道具をつかった、極めてアナログな手作業のくり返しです。
この点は、多くの人が誤解というか、無意識に「デジタル=かんたん」と思っています。
かんたんに作れる。かんたんに直せる。
たしかに、ハンコで楽譜を書いていた頃よりは簡単で早くはなりましたが、しかしソフトで入力すれば楽譜が自動で出来上がる、というようなオートマチックで単純なことではありません。
やはり『モノ作り』としての、マニュアルな、手作業による"作り込み"のステージがあります。
このステージがないと、デジタルツールで作られた楽譜は、文字どおり、無機質に記号がつづられただけの、ただの紙になってしまいます!
ただパソコンで入力されただけの、楽譜の形になっているだけの、楽譜の用途としては十分でないものも、実際には多く作られてしまっています。
一見きれいに整っているけれども、それだけの、それこそ「温かみがない」楽譜になってしまっているのです。・・・
温かみ、つまり人が作った温度を感じるというのは、美しさの先にもう一つ、手仕事を入れた時に初めて感じられます。
記号の一つ一つ、配置の一つ一つを考え抜かれて作られるからこそ、見る人に届くものだと思います。
そこには、人の手を介して、多くの知識と経験、ユーザーの視点と制作現場からの視点が、たくさん盛り込まれています。
本当は、普段は目に見えない、感じられないものなのかもしれません。
あるいは制作側としては、ユーザーにそういった「人の手が入っていること」を、楽譜の中に感じさせてはいけないのかもしれません。
「人の手が入っていること」を感じさせるということは、どこかにムラがあったり、ひずみがあったりするということだからです。
そしてやはりそれは、結果として、楽譜としては読みにくい、使いにくいものになっているはずです。
楽譜の中に、ムラやひずみを作らず、なお且つ、手仕事の一つ一つが温度として伝わる。
単に見た目や見栄えが美しいだけでなく、ユーザーにとって分かりやすく、目にしている間も引っかかりがなく、演奏することに集中できる楽譜。
楽譜に求められる「温かみ」とは、そういうことではないかと思います。
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Digital楽譜ラボでは、音楽を専門に修めた、演奏能力をもった人材が制作にあたっています。
使い手(ユーザー)としての視点は、実際のユーザー以上に厳しく、且つ、制作現場として細かく緻密な作業を行なっています。
どんな楽譜が「よい」楽譜と言えるのか。
日々これを追求して、クオリティーのあるものを、皆さんにお届けしたいと考えています。
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