一気に咲いた華に、紅の蝶が来た
1月から始めた署名活動があるが故に、紹介する歌手に偏りがあってはならないと思っている。しかし、何時にも増して昨年を超える楽曲をリリースしているため取り上げないわけにいかない。
それだけでなく、筆者の想いを楽曲で表現している部分にも惹かれる。そのため、今回のブログ記事はこれまで署名活動の広報で挙げた歌手への謝罪の意味を込め、全ての音楽ファンに向けて全力をあげて書く。
紅の蝶/作詞:松井五郎 作曲・編曲:村松崇継
何なの?このリズム
誉め言葉であるが、「変な楽曲をリリースした」というのが第一印象だ。それは、日本の音楽史を横断的に感じさせる要素が入っているからだ。
全体的に歌詞が多く詰まっており、比較的テンポが速い部分は笠置シヅ子「買い物ブギー(1950年)」、イントロのメロディーは美空ひばり「お祭りマンボ(1952年)」、サビにかけて松平健「マツケンサンバⅡ(2004年)」、大サビはOfficial髭男dism「Cry Baby(2021年)」などの要素、当然ながら前作の「こころ万華鏡(2023年)」の要素も入っている。
楽曲のつかみでもあるイントロは、盆踊りやお祭りを感じさせるメロディーでリスナーに安心感を与え、Aメロはアコースティックギターの早引きとピアノというジャズ調でシンプルなつくりでリスナーを楽曲の世界へ誘い入れる。そして、サビで高揚感が高まり、最後の「♬ほれ」で頂点に達し、エキゾチックさが出現する。さらに、大サビではキーチェンジ(音程の変化)が激しく、ボーカルの歌唱力が爆発して幕が下がる。
しかし、楽曲全体はオーケストレーションもされており壮大で荘厳な表情も持ち合わせている。だからこそ、「変な楽曲」と表現したのだ。
昨年より繋がる楽曲となっている部分は作曲と編曲を行った村松崇継の力が大きいだろう。昨年から今年にかけて、村松はこの楽曲の他に工藤静香「勇者の旗(2023年)」、薬師丸ひろ子「きみとわたしのうた(featuring LIBERA)(2024年)」を手掛けているが、この2曲はどことなく似ており、竹内まりや「いのちの歌(2009年)」にも似ているように感じた。
しかし、「紅の蝶」は昨年の要素は入っているものの、差別化が出来ている楽曲であることが言えるだろう。リズムの取り方と転調(曲の途中で調が別の調へ変わること)の流れなどは前作とは違う点ではあるが、日本の楽器と洋楽器の使い分けがさえわたっている部分は前作から引き継ぎ、より磨きがかかっている。一番わかりやすい部分はサビのカウンターメロディー(歌詞と歌詞の間を埋めるメロディー)だろう。1コーラスではトランペットだったメロディーが、2コーラスでは尺八に置き換わっている部分は編曲の凄みだろう。
また、2コーラスのサビはフラメンコ調の拍手が鳴り始めるが、コーラスは民謡を感じさせるフレーズが入っており、より多国籍感が増している。これは歌詞でもいえるだろう。それでは、次は歌詞を見ていこう。
ホレッ!
上で示した松平健「マツケンサンバⅡ」は”サンバ”と言っているがサビで「♬オレ!」と”フラメンコ”のような要素も入っている。対して、この楽曲ではサビに「♬ほれ」と入っている。やろうとしている部分は同じだろう。しかし、松井五郎の詞には一貫性がある。そして、演歌道を歩んできた山内惠介の歌手人生(スカウトから)25年にして25枚目のシングルだ。
この2つから見てもここで「♬ほれ」とメロディーにのせたことで祭り・盆踊りの要素から、多国籍感までを出すこと以外にも深い意味があるように感じる。
一貫性がある歌詞と表現してしまったが、「メロディーに詞が乗れば良い。」と一言で言い表すことはできないだろう。
松任谷由実は一つの小説を書くように作詞をしているそうだ。さらに、楽曲に想いをのせるということは、リスナーの感情を大きく変える力があるだろう。松井五郎という名作詞家にもなればその想いは人一倍高いように感じる。
「じれったい(1987年)」から「勇気100%(1993年)」、「また君に恋してる(2007年)」まで昭和から現代まで、あらゆる歌手へ多くの楽曲の歌詞を書いてきた中で感じた想いが前作に引き続いて感じられるように思えた。世情やエンタメ界と照らし合わせてしまうからか、応援歌ではあるものの怖さまで感じてしまった。
ここまで紹介したような、楽曲の凄みはA面だけでない(今回の記事ではA面、B面で表現する)。次はそこを深く見つめよう。
今の時代、全てがA面だ!(追記あり)
筆者は「一曲入魂」としてブログ記事、X(旧Twitter)でA面、B面に囚われず紹介している。その理由は、サブスクリプションが発達している現代では、一曲が単体で聴けるようになったからだ。
ある番組で山内惠介が「シングル曲(A面と捉えても良いだろう)だけが、僕らの代表作ではございません。」と話していたが、筆者も同意見である。それは、言葉を放った山内惠介の今回のB面を見ればわかる。
- 愛盤B面:あなたを想うたび涙が止まらない(作詩:売野雅勇 作曲:伊秩弘将 編曲:上杉洋史)
- 祭盤B面:祭りだホイ!(作詩・作曲・編曲:イクマあきら)
- 虹盤B面:傘(作詩:もりちよこ 作曲:織田哲郎 編曲:上杉洋史)
山内惠介をよく聴くリスナーならこれが普通となっているかもしれないが、全てのB面を手掛けている音楽人は、一般的にA面に楽曲提供を行う音楽人だ。特に、織田哲郎がB面で登場することは異例なことだと感じる。昨年1月31日に織田哲郎は「うたコン(NHK)」に出演し、デビューからプロデュースしている相川七瀬と以下のようなトークをした。(以下番組から引用)
相川七瀬:あと2年後、私30周年なんですけれども、ぜひ新曲、書いてください。お願いします。
織田哲郎:だからさ、全国区で、生で言うのやめろ。
MC・谷原章介:織田さんOKということでよろしいでしょうか?
織田:あの、今ちなみに私もね、今年40周年だって言うのにアルバムができるやら、できないやら、苦しんでいるそんな私でございますが,,,確約はできないぞ。
相川:皆さんの前で今約束をしてくださいました。
筆者調べでは、織田哲郎が昨年リリースした楽曲は1曲のみで楽曲提供もなかった。そんな中での山内惠介のB面楽曲提供はエンタメニュースのトップになってよいことだ。
では何故、ここまでB面にこだわるのか。それは、音楽ファン・山内惠介がいるからだろう。
サザンオールスターズ・桑田佳祐は自身のラジオ番組で「A面があるからB面で楽しめる。好きなことが出来る。」と話している。同様の思いで山内惠介自身が音楽を楽しんでいるのかもしれない。加えて、一生かけて習得するのも難しい歌唱法・音楽道を25枚目で演歌歌手の道のりから、初めて楽曲を買った音楽との触れ合いなどを顧みて、先に進む意思も感じられる。
そのため、今回のB面3曲は正に、三者三様それぞれの色がある。J-pop、盆踊り・民謡に似た楽曲、合唱曲となりそうな楽曲まで、全て聴き飽きない。特に、もりちよこと織田哲郎がタッグを組んだ楽曲「傘」は「みんなのうた(NHK)」に選ばれても良いほど胸に突き刺さるものがある。
また、現在はサブスクリプションがあるため、1曲に賭ける熱量が重要視されている部分からしても、現代のセールス体系をよく理解して楽曲を世の中に送り出しているだろう。
この楽曲たちはA面と同様に話題となるだろう。いや、話題になるべきだ。これだけ完成しつくされている作品が日の目を浴びないことは大変勿体ない。
★追記6/28★
6月、新たな扉がまた開いてしまった。タイトル楽曲は驚く速さでMVが200万回を超え、新盤2枚がリリースされたからだ。このB面が名曲だ。
- 海盤B面: 海、光る(作詩:いしわたり淳治 作曲・編曲:村松崇継)
- 太鼓盤B面:太鼓(作詩・作曲:小椋佳 編曲:上杉洋史)
「とにかくこの2曲を聴いてくれ!」というのが率直な思いだ。
山内惠介という歌い手の「歌力」が直接に届いた。「海、光る」は山内惠介が作曲家・村松崇継の存在を知った楽曲の制作人が手掛けており、自身の音楽体験の想いが込められているように感じる。対して、「太鼓」は美空ひばりの楽曲のカバーだ。石川・能登を舞台にした楽曲となっており、能登半島地震の被災地への想いが直接胸に届いた。
過去楽曲だけでなく、今期のB面だけでもリリックビデオを制作し、動画サイトへ投稿するべきだ。
ここからは、筆者の感じ方なので参考程度に...
筆者は6月にビクターに所属する歌手がカバーする美空ひばりの楽曲を2曲聴いた。一曲目は山内惠介、もう一曲は桑田佳祐がカバーした「リンゴ追分」だ。
両者、自分色に染め上げ尽くしたカバーをしており、筆者が常日頃からシンパシーを感じていたビクターの”ケイスケ”が同じレベル・位置にいる歌手だと実感した。「ジャンルが違う!」と言われそうだが、ジャンル分けなど無用、音楽という箱は皆平だ。
最後の、この楽曲たちを表現するパフォーマンスについて見ていこう。
ジャンル・山内惠介
時に人は”色”で表現する場合がある。歌手が、カバー曲を歌唱しているときに「○○色に染め上げる」ということがある。これは、楽曲提供をもらう歌手も同じように感じる。
昨年の第74回NHK紅白歌合戦でも山内惠介が放った言葉「このイショウ、イイッショ!」になぞらえて言えば、
人から買った、貰った紅の「服=楽曲」をどう着こなすか「コーディネート=自分で楽曲を見つめる」して、それを自分が「着て=楽曲を憑依させて」人前へ「出る=ステージに立つ」
ということになる。これは25年・25作の積み重ねがあるから成し得る部分があるだろう。いつ何時、どんな状況でもキーやテンポ、声量が変わらず、最高なパフォーマンスができる。だからこそ、色々なジャンルを含んだ楽曲を歌唱しても、「山内惠介節」に落ち着くのだと感じる。
往年の歌手を見ても、美空ひばりが演歌、ブギ、ジャズを歌っても「美空ひばり節」に、三波春夫が浪曲、歌謡曲を歌っても「三波春夫節」に自然となっていく。
いろいろ書いたが、結局言いたいことは「ジャンル・山内惠介」が確立し始めてきているということだ。
しかしながら、このテンポが速く歌詞が詰まっている曲であり、キーチェンジも多い曲をサラッと歌唱する部分は脱帽する。音楽番組やコンサートでのパフォーマンスも楽しみだ。そんな、山内惠介の活躍に期待が高まる。
番外編|背中で魅せる凄さ ~恩送り~
「ジャンル・山内惠介」と表現できる演歌、歌謡、ポップなど多くの楽曲に挑戦したり、カバーしたりする姿勢は、坂本冬美や五木ひろしといった先輩歌手が同じようなことを行ってきていることを見ているからだろう。
日本のポップソングを創り上げた多くの歌手や演歌・歌謡曲歌手は事務所やレーベルなどを越えて一致団結する姿勢が特徴的であり、特に演歌・歌謡曲歌手には良い緊張感がも漂っている。その中でも「恩送り」がしっかりできているだろう。
山内惠介が行っていることを見て、「先輩があのパフォーマンスをしているのだから」と安心感を与えられているだろう。
辰巳ゆうとが今までと違うポップな曲調の「星くずセレナーデ」をリリースしたり、新浜レオンの「レオン語」や挑戦的なロック歌謡「全てあげよう」をリリースしたりと話題が付きない演歌第7世代がいる。
また、その頑張りを見て「先輩として負けられない」という思いも出てくるだろうから、良い競争が出来ているように思える。今回の楽曲「紅の蝶」でのサビの振り付けは、YouTube shortなどに投稿しやすい30秒ほどで、前作よりも振りが複雑になった。これは前年話題になった新浜レオン「捕まえて、今夜。」への対抗ととっても良いだろう。
アイドル、K-pop、J-popの話題が多い世の中ではあるが、ジャンルに囚われずに様々な楽曲を自分のものにして頑張っている歌手・楽曲たちにもどうか目を向けてもらいたいと切に願っている。
星くずセレナーデ/作詩:深海弦悟 作曲:Scott Taylor 編曲:Michael Howard Jr.
全てあげよう/作詞・曲:所ジョージ
【署名活動】#広く楽しめる音楽番組へ
テレビ音楽番組の改善を訴える「署名活動」を行っている。 テレビは多様な情報を全世代が得るための重要なメディアである。そのため、出演者に偏りや忖度がなく、多くの世代が楽しめる音楽番組が適切だ。真面目に頑張っている歌手が、馬鹿を見るようなことがあってはならない。
また、歌手の評価は楽曲のセールスだけでは語れず、パフォーマンスを見てもらうことが重要だ。そのため、世代を問わず多くの音楽を吸収できる音楽番組は非常に重要だ。
事実、2月20日放送「うたコン(NHK)」では放送終了後、出演した歌手・新浜レオンが歌唱の最後に見せた「膝スラ=膝立ちスライディング」が演歌歌手としては異例のパフォーマンスとして、演歌をあまり聴かない若者の間で「新浜の膝スラ」が話題となった。「本気で音楽を届けよう」をしている音楽番組や、偏りなく歌手を出演させる音楽番組にすれば反響は高いことが伺える。
現在の音楽番組の殆どがアイドル、K-popの一辺倒に近い。そのテレビ界を如実に示し、活躍の場が少ない歌手(広く楽曲が知られていない歌手)が企画・演出のために出演というのが近年の年末に提示されている。これはテレビからの警鐘だと感じ、テレビ全体を変えるために動いている。ご協力をお願いします。
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