『武器としての漫画思考』から得た3つの有効概念 | 酒場ピアニストがんちゃんのブログ - 読書とお酒と音楽と-

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昼はジャズ・ラウンジピアノ講師 (江古田Music School 代表)

夜は銀座のBARピアニスト(ST.SAWAIオリオンズ専属)

コロナ禍ではジャズの独習用eラーニング教材を開発してサバイバル

そんな筆者が綴る、ブックレビューを中心とした徒然日記です。

年間100冊読書をライフワークと定めて今年で9年目。

 

読書のメリットは様々ありますが、社会を見る上で便利な「レンズ」であったり、人生を考える上で便利な「補助線」になり得る概念が手に入ることは、読書から得られる最も大きな恩恵の一つでしょう。

 

もっとも「これは使える!」と心底思えるような本質的で実用性のある有効概念に出会える確率はさほど高くはありません。歴史の試練に耐えた有効な概念は広く人口に膾炙されているので、本から学びを得たとしても、それは未知の概念の獲得というよりは既知の概念に対しての新たな視座の獲得というケースも往々にしてありますし、極めて斬新でユニークではあるけれどエヴィデンスや汎用性に乏しいもの(いわゆるトンチキ系)も存在します。

 

そんな中で最近、抜群に「とれ高」の高い本に出会えました。

 

 

 

『武器としての漫画思考』 

 

 

 

著:保手濱彰人 (キャラアート株式会社代表取締役会長)

 

「漫画思考」とは、今抱えている課題を右脳と左脳をフル活用して解決していくこと、そして「実感を伴った学び」を得ることで成長のきっかけを掴むことである。(本書の帯より引用)

 

とありますが、本以上に漫画Loverでもある私にとって、こんな本に出会って放っておけるハズがありません! 

 

本書がとても読みやすく、わかりやすく、そして抜群に面白いことは保証しますが、私にとって本書が最も秀逸だった点は、今後の人生に役立つ「レンズ」や「補助線」の役割を果たす未知の概念に色々出会えた事であり、その中でも特に有効だと思えた3つについてこれからシェアさせて頂きます!

 

 

1つ目「インテグラル理論」という概念。

 

これは歴史や社会を捉える上でとても有効だと思えます。本書の「インテグラル理論」の説明を読んだ時の直観的な印象は、ベストセラーにもなった『ティール組織』に似ているな…という感じでしたが、調べてみたら、その『ティール組織』のベースになった理論が、この「インテグラル理論」との事でした。

 

 

 

※ティール組織

 

「ティール組織(自律分散型組織)」とは、これまでの経営層や管理者の指示によって動くヒエラルキー構造の管理型組織ではなく上下関係がないフラットな組織を指します。ティールという単語は「青緑」「鴨の羽色」を意味し、 色の名前が組織の形容詞になっているのは、ティール組織の提唱者であるフレデリック・ラルーが著書の中で既存の組織形態を下図のように色で例えたことに由来します。

 

 

 

これに対し、ネットで見つけた「インテグラル理論」の色ごとの段階イメージ図は次のような感じです。

 

 

まあ、良く似ています。インテグラル理論がベースになって「ティール組織」が生まれているので当然と言えば当然ですが(^-^;

 

書籍『武器としての漫画思考』の中では、上図のレッド(弱肉強食で個々の強さが絶対的な指標となる段階=英雄・昭和の家父長制)の漫画事例として「北斗の拳」ブルー(規律やルールを絶対順守する段階=官僚的であり、現在の日本社会)の漫画事例として「島耕作シリーズ」オレンジ(個々の自由や尊厳を認め、成功のために合理的行動をとる段階=起業家・米国での意識重心)の漫画事例として「ONE PIECE」を挙げています。

 

各時代の主要な漫画作品を見れば、当時の人々の意識段階とリンクした作品が見事にヒットを飛ばしていることがわかり、また自身が読んだことのない意識レベルを扱っている漫画を積極的に読むことで(ex. Z世代が「北斗の拳」を読み、60代が「鬼滅の刃」を読むなど)、その感覚を掴み、共感し、自由に操れるようになる有用性を説いた本書の記述には個人的に強く膝を打ちました!

 

このブログで興味を持った方は、ぜひ『武器としての漫画思考』を入り口に、「インテグラル理論」について学びを深めてみるのも面白いと思います。私もそうするつもりです!(^^)!

 

 

2つ目「認知的焦点化理論」という概念。

 

私の所感としては、この概念は商売や人生が上手く行っている人・行っていない人について観察・分析する時、あるいは自身の上手く行っている時・上手く行っていない時について考察・内省する場合において、大変役立つものであると思います。

 

この理論の要点を一言でまとめれば、人間の「運の良さ」を対人関係・時間軸の2つから説明したもので、具体的には下のチャート及びそれに続く説明を読めば、概要がすぐ掴めるでしょう。

 

 

 

 

 

縦軸は人が意識する(≒認知的な焦点になっている)時間軸の長さ横軸は対人関係の幅を表しており、上図で囲まれた面積が広い人(≒行為の影響について長期的な結果、幅広い人々まで想像を馳せられる人)ほど運に恵まれ、上図で囲まれた面積が狭い人(≒自己中心的、刹那的な快楽のみを求める人)ほど不幸になる傾向が強いという理論です。

 

個人的にはとても納得感のある理論だと思っています。この理論について、よりロジカルな解説を求める方は上図の参照元でもある該当ページのリンクを紹介させて頂きますので、そちらをご参照頂くことで本ブログでの説明は切り上げます。

 

 

そして、3つ目の概念「SCARFモデル」です。

 

この概念を知るきっかけになった本書『武器としての漫画思考』の説明を借りることにしましょう。

 

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本書P.190~ 引用

 

 

『これは、人間の根源的な強い欲求と恐怖に訴求する「一時的報酬と脅威に関する心理モデル」です。もう少しわかりやすく説明すると、「SCARF」とは、人間の脳に報酬と恐怖を引き起こす5つの要素のことで、具体的には以下となります。

 

Status: 社会的地位

 

Certainty: 確実性(未来が明確か)

 

Autonomy: 自律性(自分で決められるか)

 

Relatedness:周囲との人間関係

 

Fairness: 公平性 (フェアに扱われているか)

 

この5要素が、みなさんもよくご存じのマズローの欲求五段階説のうち、「生理的欲求」「安全の欲求」と同じぐらいに根源的で、人間の欲しがるものであり、また失いたくないものだということです。

 

(引用おわり)

 

・・・・・・・・・・・・・

 

本書では、この後にSCARFモデルがビジネスシーンにおいても如何に重要かを分かりやすく紹介していますが、個人的にもこの「SCARFモデル」からの知的連想がなかなか止まず、自身の経験に照らし合わせて妙に納得したり、過去に読んだ本のトピックと絡めて具体的な応用方法を考えてみたりと、脳がなかなか休んでくれませんでした(笑)

 

せっかく色々な知的連想をさせて貰えたので、その成果発表を次回以降のブログでさせてもらおうかと考えています。

 

具体的にはSCARFモデルのそれぞれの要素ごとに、参考図書を1冊ずつ紹介しながら各要素を深堀し、それぞれの書評も兼ねつつ、面白い読み物に仕上げられればと思っています。

 

ちなみに、それぞれの要素ごとの参考書籍のピックアップだけは済んでいます( ̄ー ̄)ニヤリ!

 

Status   では 『人生が整うマウンティング大全』

 

 

 

Certainty では 『エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」』

 

 

 

Autonomy では  『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』

 

 

 

Relatedness では 『サービス・ドミナント・ロジックの発想と応用』

 

 

 

Fairness では 『隷属なき道』

 

 

 

ジャンルも難易度もバラバラな「超」恣意的なチョイスです(^-^;

 

既に本を読んだ事がある人の場合、「そのテーマに該当書籍がどう結びつくんだ?」と思う方もいるでしょう。

 

どう結びつくか・・・

 

正直、書いてみるまで私もわかりませんが(笑)、他にないオリジナルな企画になる自信だけはあります。

 

全5回シリーズ予定! 楽しみにお待ちください!(^^)!

 

それでは、また!

 

 

 

江古田Music School代表

 

ST.SAWAIオリオンズ(銀座7丁目) ピアニスト

 

岩倉 康浩