SCARFモデル① Statusを考えるための参考書『人生が整うマウンティング大全』 | 酒場ピアニストがんちゃんのブログ - 読書とお酒と音楽と-

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昼はジャズ・ラウンジピアノ講師 (江古田Music School 代表)

夜は銀座のBARピアニスト(ST.SAWAIオリオンズ専属)

コロナ禍ではジャズの独習用eラーニング教材を開発してサバイバル

そんな筆者が綴る、ブックレビューを中心とした徒然日記です。

今回から5回シリーズで人間理解に極めて有用な「SCARFモデル」について連載します。

 

「SCARFモデル」というのは、ニューロリーダーシップ・インスティテュート共同創設者のDavid Rock氏が2008年の論文で提唱した概念で、人間の脳に報酬と恐怖を引き起こす次の5つの要素の頭文字を取ったものです。

 

Status: 社会的地位

 

Certainty: 確実性(未来が明確か)

 

Autonomy: 自律性(自分で決められるか)

 

Relatedness:周囲との関係性

 

Fairness: 公平性 (フェアに扱われているか)

 

 

これらが満たされたれる事で、また脅かされる事で、人間がどんな感情を抱くかを考えれば、「SCARFモデル」が極めて実用性の高い概念であるかが良くわかると思います。ちなみに、この「SCARFモデル」を知るきっかけになった書籍『武器としての漫画思考』(前回ブログにて紹介)には、SCARFをビジネスシーンに置き換えた場合の分かりやすい説明がされているので紹介します。

 

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たとえば、あなたは上司として、

 

・部下の尊厳を傷つけるような発言をしていませんか? (社会的地位)

 

・実現性の高い計画を示せていますか? (確実性)

 

・裁量権を与えて自分で決めさせていますか? (自律性)

 

・チームの人間関係が良好になるよう配慮していますか? (周囲との関係性)

 

・人によって態度を変えたり、贔屓をしたりしていませんか? (公平性)

 

これらは、全て部下や周囲のSCARFに影響を与えています。

 

自分が部下だった時代に、上司がどのように接していたかを思い返してみると、特にイヤだったこと・良かったことの大半は、このモデルで説明できてしまうわけです。

 

(引用終わり)

 

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さて、これから5回にわたり、SCARFモデルを構成する5つの要素、Status(社会的地位)、Certainty(確実性)、Autonomy(自律性)、Relatedness(周囲との関係性)、Fairness(公平性)について、毎回1つずつ紐解いて参ります。

 

まずは、SCARFの最初の頭文字”S”、Status(社会的地位)について考えていきましょう。

 

そのためのガイド本として用意させて頂いたのがこちら。

 

 

■人生が整うマウンティング大全

 

著:マウンティングポリス

 

 

タイトルを初めて見た時は、読み間違いかと思いましたが、そうではありません。

 

「マインドフルネス」ではなく、「マウントフルネス」とハッキリ書かれています。

 

気になる本書の章立ては次のようになっています。

 

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はじめに  世界はマウンティングで動く

 

第1章 マウンティング図鑑  

 ~一流の人こそ実践するマウントのパターンとレシピ~

 

・グローバルマウント

 

・学歴マウント

 

・教養マウント

 

・達観マウント

 

・虎の威を借るマウント

 

 

第2章 武器としてのマウンティング術

 ~人と組織を巧みに動かす、さりげない極意~

 

一流のエリートが駆使する

「ステルスマウンティング」5大頻出パターン

 

・自虐マウンティング

 

・感謝マウンティング

 

・困ったマウンティング

 

・謙遜マウンティング

 

・無自覚マウンティング

 

「マウントする」ではなく「マウントさせてあげる」が超一流の処世術

 ~おすすめの「マウンティング枕詞」11選~

 

Column オバマ氏に学ぶ「マウントさせてあげる技術」

 

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ひとまず、前半の章立てはこの通りで、これだけでなんとなく内容がイメージできそうな感じです(笑)

 

予想通りというか、第1章は、いわゆる「あるある」のオンパレード。

 

「FBで良くみるなぁ、この手の投稿」とニヤリとしたかと思えば、「ヤバい、似たような投稿した事あるぞ。。。」と心を見透かされたようなバツの悪さを覚え、つくづくマウンティングというのは人間の性(さが)なのだなぁ・・・と時に笑いながら、時に考えさせながら読み進めていくワケでありますが、まあ所詮は気晴らしの読み物という感じです。

 

第2章になると、「ステルスマーケティング」ならぬ「ステルスマウンティング」という概念が登場し、「なるほど! これはお見事!」と思える小技の光ったマウンティングから、「いやいや、あざと過ぎでしょ・・・ないない」というレベルまで様々な事例が紹介されますが、これまた娯楽の範疇を出ない感じではあります。

 

しかし!

 

全206ページの本文の7割を過ぎた143ページ、「マウントする」ではなく「マウントさせてあげる」が超一流の処世術、の箇所から本書は「気晴らしのためのエンタメ本」から「実用性の高いビジネス本」へとシフトチェンジし、さらに第3章に入ると本書は、D・カーネギーの伝説的名著「人を動かす」(読んだ事がある方も多いはず)を彷彿とさせる「人間理解のために欠かせない1冊」へと一気にフェーズが変わります!!

 

 

第3章以降の章立ても見ていきましょう!

 

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第3章 マウンティングはイノベーションの母

 マウンティングエクスペリエンス(MX)を売れ~

 

テクノロジーからイノベーションは生まれない

 

米国企業の競争力の源泉はマウンティングエクスペリエンス(MX)の設計能力にあり

 ~顧客の「マウント欲求」をハックせよ~

 

米国の事例紹介

 

・Apple

 

・Facebook

 

・Starbucks

 

・Tesla

 

・WeWork

 

マウンティングエクスペリエンス(MX)の設計に成功した国内事例

 

・NewsPicks

 

・東京大学EMP

 

・ForbesJAPAN30 UNDER30

 

・京都市

 

日本経済にはマウントが足りない

 

 

第4章「マウントフルネス」を実現するには

 ~「80億総マウント社会」を生き抜くための人生戦略~

 

マウンティングとともに生きる

 

マウンティングを味方にする戦略と技術

 

 

おわりに

 

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このブログの読者層を代表する、教養レベルが高く、知的好奇心旺盛で、高いビジネスセンスも併せ持つ貴方なら、この章立てからピンとくるものが少なからずあるでしょうw

 

本書で提唱される概念「マウンティングエクスペリエンス(MX)」の理解は極めて重要なので、これに関する解説を引いておきます。

 

マウンティングエクスペリエンス(MX)とは、「マウンティングを通じて人々が得る至福感、多幸感、恍惚感」のこと。言い換えれば、「自分は特別な存在であると認識(誤認)させてくれる体験」のことを指す。』(本書P.164~引用)

 

 

先に言及したD・カーネギーの名著『人を動かす』には「人を動かす三原則」とか、「人に好かれる六原則」とか、「人を説得する十二原則」とか、「人を変える九原則」だとか色々な原則が紹介されていますが、正直多すぎて覚え切れないので(^-^;、個人的にはこれらを総合的にまとめてアレンジした以下の4つの指針を大切にしています。

 

①相手に対して誠実であること

 

②相手に心からの関心と興味を持つ

 

③相手の事情・立場の理解に努める

 

④相手に重要感を持たせること

 

個人的な経験則から言えば、この4つが実践できる相手とは極めて良好な関係を築くことができますし、何等かのネックがあってどれかが手薄になっている場合は、築ける関係性もそれらに比例した感じにはなってきます。

 

そして、④相手に重要感を持たせる上での実用性に優れた指針として、本書が提唱する「MXの設計」は極めて有効です。

 

スコット・ギャロウェイ氏の著作『GAFA 四騎士が創り変えた世界』で語られる次の一説もこの重要性を示唆しています。

 

『消費者の大半は平等であることを望まない。自分が特別であることを望むのだ。そして消費者のかなりの割合が、特別になるためなら余分な金額を払う。そのような層は可処分所得が最も多い層でもある。』

 

消費者心理の神髄に触れた名言であり、私はこれを職業柄特に感じる機会が多い気がしています。

 

たとえば私が毎週水曜日に演奏をしている銀座7丁目にあるST.SAWAIオリオンズはこんな空間です。

 

 

銀座の大通りの一つ「外堀通り」に面した店とは言え、ビルの10階という立地で目立つ看板もないので、通りすがりの一見さんが寄る事はまずない店です。したがって初めて来店される方の9割はお客様の紹介でいらっしゃいますが、皆様方の反応は大体共通していて「へえ、このビルにこんな空間があるんですね!」と言った趣旨のもので、連れてきた側もまんざらでもない様子です。これは空間から得られる特別感の一つでしょうね。

 

銀座のオリオンズ以外にも、歌舞伎町の某高級キャバクラで演奏する機会も月に何度かありますが、ここでは特別感の提供についてより深い気づきが得られます。ルックス抜群、露出多めの美女がわんさかいて、売値1本10万円以上のシャンパンの栓がポンポン開けられ、時には超高額のシャンパンタワーでリアルなトリクルダウンが行われる空間はまさに非日常!

 

その中で私はピアノ演奏の傍ら、キャストさん(=働く女の子)の様子もコッソリ観察しているのですがw、最近なんとなく分かってきたのは、いわゆるNo.1になるようなキャストさんは、美貌もさることながら、本書で言うところの「MX設計」が極めて秀逸であるとう事です。逆にいくら見てくれが良くても、ゲストへの興味・関心が希薄で、売り物が「色気」しかないキャストさんは長く続かない気がします。

 

そしてキャバクラでたまに演奏する中では、こんな事を考えずにはいられません。

 

「いくらAIが発達してロボティクスが普及しても、この業界は何らかの形で生き残るんだろうなぁ…」

 

そんな私の考えを強く援護してくれるような、社会の真理を突いた一説を本書より引用し、このブログの結びとさせて頂きます。

 

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本書P.200より~

 

ビジネスパーソンの中には、資格取得などのスキルアップに熱心に励む人がいる。MBA(経営学修士)などの学位取得にチャレンジする人も少なくない。そういった社会人による学び直しはキャリア形成にプラスに働く可能性があり、それ自体は否定されるべきものではない。

 

しかし、人口知能(AI)が発達し、英語、ファイナンス、プログラミングといったスキルが陳腐化するこれからの時代においては、そのようなスキルよりも、人間が抱える内面的な心理や欲求を深く洞察する「人間理解」のスキルの方が圧倒的に重要となる可能性がある。

 

そのようなスキルを身に着けるためにはどうすればいいのか。一番の近道は「マウンティングリテラシーを鍛えること」であると筆者は考える。なぜなら、「マウンティングを理解することは、人間を理解すること」そのものだからだ。

 

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いかがでしたでしょうか?

 

ここまでお読み頂きありがとうございます<m(__)m>

 

次回は、SCARFモデルの2つ目の要素“C” Certainty(確実性)について考えていきます。

 

お楽しみに!

 

 

江古田Music School代表

 

ST.SAWAIオリオンズ(銀座7丁目) ピアニスト

 

そして、たまに歌舞伎町某高級キャバクラでも演奏w

 

岩倉 康浩