ご無沙汰しております。
今回はちょっと変わった趣向でプラグインEQを紹介してみたいと思います。
大相撲の番付表ってあるじゃないですか。あれを使って私なりにEQを評価してみたいと。そういうわけです。
なぜ普通のランキングでは無く番付表で発表しようと思ったかと言いますと、単純なランキングだと各順位間でどれくらいの差があるか分かりにくいと思ったんですね。
その点、番付表だと「横綱」とか「前頭2枚目」等のように格付けされますので、どれぐらいの差があるか一目でわかると思ったんですね。
基本的にはプラグイン初心者の為の紹介だと割り切って楽しんでください。
とは言え適当に思いつきで書いたわけではありません。
評価となる要素は、音質、負荷、多様性、利便性、安定性など。価格に関しては全く考慮していません。
尚、ダイナミックEQや最近流行り出したマッチング機能等の付属機能は評価から外しました。
つまり今回は本来のEQの機能としての能力で評価したという事です。
最近のEQは付加機能が豊富でかつそれらが単なるオマケレベルでは無くそれがメイン機能としても成立しているようなプラグインも幾つかあります。
ですから今回の評価=プラグイン自体の価値というわけではありません。
勿論世の中には私が使った事がない無いプラグインEQは星の数ほどありますので、ここに載って無いからと言ってク※扱いはしないで下さいw
今回できるだけ偏った記事にならない為、EQ選定には先輩に相談させていただきました。パイセンのツイッターのアカウント→
https://twitter.com/fionatching
Fionatchingさんはバリバリ一線級のプロの作曲家であると同時に私の大学時代の先輩でらっしゃいます。とは言え大学時代は重なっていませんがw
さてブログ記事を書くのが久しぶりでキツくなってきたので、いきなり本題に入りたいと思いますwww
今回は表題どおり、デジタル系のプラグインEQということでお願いします。ネイティヴ限定です。(初心者に優しい当ブログ笑)
※2019年8月1日更新!
横綱 TranQuilizr G2
EQuilibrium
大関 Toned-MAX
MDWEQ5
Edelweiss'72
Magpha EQ
関脇 Ozone8
Pro-Q2
Slick EQ M
EQuality
BASSROOM
小結 TranQuilizr
EQuick
Slick EQ GE
前頭1枚目 Oxford EQ v3
Sonic Studio Mastering EQ
前頭2枚目 bx-digital v3
前頭3枚目 AirEQ
前頭5枚目 IQ-EQ v3
前頭7枚目 Eekjuliza
前頭12枚目 H-EQ
まず横綱とさせていただいたのはDMG AudioのEQuilibriumです。
Twitter上では「横綱はアレでしょw」的な発言も見られましたが、そう、真犯人がコイツです(笑)
とにかく音質と多様性が素晴らしいです。
もはや横綱から落ちる事は無いのでは、と思わせられる圧倒的完成度です。
それから2019年7月31日にリリースされたTranQuilizr G2をここに追加します。
このプラグインEQの特筆すべき事はブーストした時の圧倒的な自然さです。
高域はプラグイン特有のジャリ付いた感じにはならず、非常に滑らかです。
また低域も実に自然です。ここまでナチュラルなブーストは今までプラグインでは存在しませんでした。
技術的な事はここで書くのは差し控えますが、とにかく今までのプラグインの一つ上のレベルに達したと思います(特に高域)
因みに音の傾向ですが、実機のマスタリングEQ、IBISに非常に似ていると思います。
とにかく音の自然な処理に関しては現時点のプラグインEQ界で右に出るものは無いと断言します。
圧倒的な汎用性と柔軟性でEQuilibrium、純粋な音質でTranQuilizr
そう判断いたしました。
次は大関です。こちらも2019年現在の情報にアップデートします。
まずは新顔Toned-MAXです。
とは言ってもこのプラグイン自体は随分前から存在しました。
以前はEQ付きサチュレーションと言う立ち位置だった本プラグインですが、バージョンアップを果たしたらアラ不思議、
サチュレーション付きEQになっていましたw
一見色物系EQに見えますが、音質自体は素晴らしいです。こちらは低域の処理に特に力を発揮します。
プラグイン特有のゆるさがかなり少ないです。(実機のマスタリングクラスのEQとプラグインを比較すると低域の処理に歴然とした差が出ます)
しかも色付けも得意!そりゃそうです、本来それが本職でしたからw
ただ、少し使いづらいので購入を考えられる方はデモで試されてみてからが無難かと思います。
次にMassenburgのMDWEQ5です。
こちらは多様性とはほぼ無縁かつ細かく設定出来るわけでもありません。
しかし、こと自然にEQ出来ると言う点に関しては未だにトップクラスのプラグインと言って良いと思います。
トランジェント特性、特にアタック感の違和感が非常に少なく、またカット/ブーストした際に於ける各周波数帯域の分離感がかなり少ないです。
アナログEQとプラグインEQの差のうち後者が聴覚上最も劣る(不自然)と私が感じるのはこの分離感です。
その点で言えばこのMDWEQ5が現状プラグインで最右翼かもしれません。
現在UAD及びAAXのみで使用可ですので、ここは多くのDTMerにとって残念な点でしょうか。vstに対応すれば爆発的に拡がると確信しているプラグインEQです。
次は比較的新しいEdellweiss'72です。
断言します。難しい事は言いません。リニアフェイズで低域を触りたければこれにしとけ。
以上ですw
それぐらい自然に処理出来ます。もちろん他の使い方でも良いですが、とにかくリニアで低域。
これは多分誰でもわかるぐらい綺麗に処理してくれます。
最後はMagpha EQです。以前の記事でも紹介しました。
こちらは昨日まで完全に失念していましたが、Twitter上で指摘を受けまして思い出しました。
こちらは大関に入れるか関脇に入れるか正直かなり迷いました。
何故なら、TranQuilizr G2の存在があまりにも大きかったからです。
Magpha EQは高域の処理が非常に美しいのですが、TranQuilizrのせいで完全に陳腐化してしまいました。
おまけに低域の処理に関してはかなり差があるように思います。
しかし、Magpha EQは負荷が軽く、また他の殆どのEQとの比較ではまだまだ利があります。
というわけで大関にさせていただきます。
次、関脇です。
こちらは前回では大関に認定していたOzone8です。
新しくリリースされたEQとの比較でランクを下げさせていただきました。
Ozone8は単なるEQソフトでは無く総合マスタリングツールです。
今回はそのEQセクションのみでの評価ですからこのプラグインの凄さが伝わるかと思います。
こちらはMDWEQ5とは対極でかなり細かく追い込めるEQとなります。
こちらは「自然」と言うより「癖」が極めて少ないEQと言えると思います。
どこが違うんだ(怒)と仰る方もいると思いますが、自然と癖が無いは違うんですよね、全然。
でもOzoneの香りがします。不思議ですねぇ...
次はFab FilterのPro-Q2です。
これまでの中でユーザーが最も多いであろうEQです。
こちらの長所はズバリ、使いやすさです。もうこれに関しては圧倒的だと思います。
音に関してはEQuilibriumやOzoneよりも少し緩い感じがします。
音源によっては差を感じにくいかとは思いますが、低域を弄った際差が出やすいと思います。(低域を弄った時は高域にもかなり差が出ますので注意して見て下さい)
最近このPro-Q2のGUIを真似たものが結構出ていますね。
如何にこのプラグインのGUIが優れているかが分かるかと思います。
(2019年8月1日追加)
ここから、アップデートされたQ3です。
ダイナミックEQが追加され、またブリックウォールのようなカーブも追加されるなどされましたが、
音に関してはほぼ変わらないと判断し、同じ評価とします。(前述のようにダイナミックEQは評価に入れておりません)
同じく関脇のTDRのSlick EQ Mは、上記EQ達と比較すると少しマイナーかもしれません。
このEQは傾向としてはやや柔らかめのサウンドと言えるでしょうか。
このEQの売りの一つであるメタフィルターや、ヒステリシスを含む非線形性フィルターが個性的かつ大変有用で、これらを使いたいのであれば他では代用ができません。
その他各バンド毎にステレオ幅を設定出来たりと非常にユニークな機能を持っています。
しかも50ユーロとかなりお安い。
欠点としては、結構負荷がかかる事です。
次は比較的最近リリースされたBASSROOMです。こちらは機能がかなり限定されていますので、掲載するかどうか迷いました。
しかし、プラグインが非常に苦手としているローエンドの処理において自然な処理を最高レベルのクオリティで提供する事が出来る事から、ランクインさせる事にしました。
個人的にはローエンド以外の生楽器の処理に関してはやや癖があるように思いますので、私自身はローエンド限定で使っています。
ただし、先ほど書いたようにローエンドを自然に触れるプラグインは非常に貴重ですので、それだけでも素晴らしいです。
ちなみに負荷も軽いです。
関脇の末席には横綱EQuilibriumの弟分(リリース時期的には兄)のEQualityを入れました。
正直なところ品質的な意味でEQuilibriumではなくEQualityを選ぶ理由はありません。
EQualityを選ぶ理由は二つ。
一つ目の理由は価格。とは言え、EQualityを選ぶ理由が価格であるならば、もう少し頑張って横綱と契約するべし。
もう一つの理由、それはEQulityがAAXDSPに対応している(唯一のDMG製品である)事。
これはプロのエンジニアにとってはかなり重要な事ですよね。
という訳で、普段VSTやAUでプラグインを動かしている人にとってはメリットはほぼ無いと言えますね。
それでも実力は関脇にあると言う事です。
余談ですが、AAX版のEQualityの売り上げがもっと上がればEQuilibriumやLimitlessと言った横綱クラスのプラグインがAAXに対応するのでは無いでしょうか(笑)
とりあえず疲れたのでここまでにします。
後日続きを書いてアップしなおしますw
追記2018-1-15
何事も無かったかのように小結に入ります。
関脇よりは下ですが、下の前頭とはハッキリ上と認識しているプラグイン達です。
まずは日本のデベロッパーA.O.M.のTranQuilizrです。
こちらは横綱に認定したG2の初代です。未だにトップクラスの力を持っていると思います。
売りは3つのEQモードと基本的な能力の高さです。
低域を触った時の貧弱さが少なく、デジタルで低域を触る時は良く使います。
あと過渡特性の変化がかなり低いです。これはドラムステムなどで試してみると比較しやすいです。
EQuilibriumやMDWEQがこの辺素晴らしいのですが、僕の
EQ評価の基準として大きく占めるのがこの過渡特性に於ける変化です。
何故なら、本来過渡特性はEQで直接触るところでは無いからです。
どこかの周波数帯域をブーストをしてるのに、それ以外のなんらかの要素が好ましく無い副作用を起こすと言うのは基本的に歓迎しません。
ところでTranQuilizrに希望するのはアナライザーの見易さですかね。ここが改善されればもっと印象良くなると思うんですよね。
あ、あともっと低いところが触れたりオーバーサンプリングをもっと上げられたりFIRモードが使えたら嬉しいなぁ(w)
次はEQuickです。3度目となるDMG audioの製品です。
こちらは今までのEQとは異なっていて、最高のクオリティを目指しているEQではなく、「名は体を表す」の諺よろしく、素早くEQする事を目的としたプラグインです。
まぁ見た目明らかにPro-(ry)ですがGUIのせいもありPro-Q2ほど使いやすくはありません。
しかし、とても軽いです。能力と負荷のバランスを考えると私が知る限りトップクラスだと思います。
他のDMG製品との比較ですが、EQuilibriumを避けてEQualityを選ぶ理由はあまりありませんが、EQuickを使う理由は十分にあります。
次、最後の小結はTDR2個目のプラグインEQ、Slick EQ GEです。
このEQの特徴を当ブログから引用しますと「アナログモデリングほど濃くは無いがきっちり且つ多彩な色付けをしてくれる、やや不器用な機能性を持つ特殊能力付き万能型デジタルEQ」
うん、まさにそんな感じ(笑)
特に位相を変化させ低域を遅延させる機能(φ)が非常に便利です。またブースト時のみ自然な歪みが加わるようにできたり、6段階のサチュレーションを選べたりできるので、トラックに使用したりミックスに重宝します。
フリー版も用意されていますが、上記の「美味しい機能」は悉く省かれています。世の中そんなにうまくいきませんねw
それでもトランスペアレントなデジタルEQとして充分な能力がありますので、とりあえずフリー版を使ってみて相性がよさそうなら是非GEにして下さい。美味しい機能が大変美味しいですw
続く(多分...w)