食事の姿勢は時代によって、目的によって変わってきます。
力士の食事姿勢
日本の国技「相撲」。
相撲のトレーニングでは四股、摺り足、股割り、鉄砲等々があります。
そしてその中のトレーニングの中の一つに【食事】があります。
力士にとって体重を維持するために不可欠な食事。
その姿勢は現代から見ると独特です。
床に近い、ほぼ直置きの食器を手に取り食べるのです。
https://news.livedoor.com/article/detail/16641324/からの画像
https://www.nippon.com/ja/views/b02346/?pnum=3からの画像
地面に座るが「姿勢を正して食べるように」と、入門して食事の姿勢を直されるようです。
膳と姿勢
江戸時代初期の日本人の食事風景としては「膳」がありました。
膳は奈良時代頃にできたそうです。
『酒飯論絵詞(しゅはんろんえことば)』(三時知恩寺〈さんじちおんじ〉蔵・京都国立博物館提供)
(酒飯論絵巻(しゅはんろんえまき)は、16世紀に制作されたと言われる日本の絵巻)
http://www.ranhaku.com/web05/c5/4_03bushi.htmlからの画像
幕末の頃(年代不明)
膳といっても一般的には「箱膳」といわれるものが主流だったそうです。
しかし、庶民の場合は近世に入っても膳を使うのは何か特別の時だけでした。一般に用いられていたのは箱膳です。箱や引き出しの中に個人所有の器や箸をしまうようになっていて、食事の時にふたを返して器を並べます。もともとは、禅院で使われていたのですが、手軽さがうけて農家や商家や工人の家で広く使われるようになりました。
https://www.showakan.go.jp/events/kikakuten/past/past20020427.htmlからの画像
新潟県六日町昭和26年(1951)12月
中俣正義撮影
箱膳で食事をしています。
もちろん庶民でもお盆に乗せた食事をそのまま手をつけるという事はままありました。
https://edo-g.com/blog/2016/02/nikushoku.html/2からの引用
(『江戸庶民風俗図絵』より)
如何にしても今の私たちからすると床から直に近い状態での食事風景です。
因みに「鬼滅の刃」のアニメでも主人公、竈門炭治郎が膳で食事をするシーンが出てきます。
「鬼滅の刃」エピソード1:残酷より約6:00頃の映像
設定は明治時代なので膳での食事が一般的ですね。
緊張と弛緩
前述しましたが力士は食べる時もなるべく背筋を伸ばすように教育されるようです。
前屈みになって胃の面積を圧迫しないようにするためだそうで、その方が沢山食べれるからだそうです。
猫背気質の日本人はあまり太った人はいません。
(欧米の人と比べると…)
もちろん栄養的な物もあったと思うのですが…。
そもそも猫背気質だとあまり量は食べれないのです。
食事は栄養補給はもちろんですが、緊張の緩和も食事の大きな役割です。
背筋が伸びていたほうが体の緊張度は高くなります。
緊張度が高ければ、その分を緩めようとする弛緩率も高くなります。
故にその緊張度を緩めるために食べる量も増えるのです。
力士の姿勢はそういった意味では理にかなっています。
明治時代以降の変化
江戸時代までは床に近い形で食事をしていました。
食事の風景は明治時代になり「ちゃぶ台」が登場しました。
それまでは個々で食べていたのですが「食卓を囲む」という事が始まりました。
https://www.kawagoe.com/kzs/shakaika/tool05.htmlからの画像
実はちゃぶ台は私たち日本人にとって「高い」のです。
ちゃぶ台の高さはは凡そ35センチ。
基本的に膳は地面から10㎝ほどの高さ。
箱膳になると15cm~20cmほどの高さです。
2倍近い高さになるのでその姿勢はかなり変わってきます。
そうなると当然ですが正座や胡坐(あぐら)も意識が変わってきます。
現代では多くの家庭が地面に座るのではなく椅子に座って食事をします。
テーブルの高さは平均で70cmです。
そしてテーブルと椅子の距離は平均27~30cmだそうです。
段々と地面との距離が遠くなっているのでその分、体にとっては負担がかかるのです。
西洋式の椅子に座って姿勢を良くして食べる、という形も日本人のバランス感覚にはあまり適していません。
色々気付かないだけで相当体には負担がかかっているんです。
2020/4/15
2022/4/1 加筆修正
2023/1/5 加筆修正
2024/6/4 加筆修正
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