B-DASH/EXPLOSION-今もなお君に届けたい言葉にならない感情 | MUSIC TREE

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邦ロックを中心に批評していく
音楽ブログです。更新不定期。

めっちゃくちゃかっこいい。このバンドの生きざまに改めて惚れた。

初めてロックに触れた時に感じた熱い衝動、ギターを手にした時に思い描いた理想(僕の場合は骨折とFのコードで三か月で挫折)をそのまま鳴らしたようなシンプルさ。何も目新しくない。全然トレンドなんか意識してない。ただメロディとボーカルの相性が死ぬほどいいだけ、歌詞の大半に意味はなく、馬鹿みたいにギターをかき鳴らしているだけ。

でもこれがいい。こういうのでいい。たまらなく興奮する。僕はこれでいいと思った。

東京インディ、EDM、増殖し続けるアイドル、使い捨てられるインスタントなアニソン・・そういったトレンド(もはや何がトレンドか不明)の中でなんだか難しいことを考えてる自分に酔いながら、それでも本当に聞きたかったのは、こんな音楽だったのかもしれない。



時代が流れ、年を取るにつれ、変わらないでいることの難しさを感じる。というか、変わらないってことは無理だ。僕らは変わり続ける生き物であり、バンドもそれは同じことだ。でもちゃんと時が流れて、失って、得て、それでも絶対に譲れない部分が変わっていないとしたら・・そんな幸せなことはない。僕という人間も結局変わらなかった。

そんなことを考えながら、この作品を聞いている。変わり続けていき、それでも変わらないことはこんなにも美しいことなのかと感じた。確かに新しいエッセンスも感じることはできる。だけど決定的に変わってない。これは本当にすごいことだ。本当に本当に美しくて、まぶしくて、気持ちいいロックンロールだ。
人間もバンドも大事なのは生き様である。あれから10年以上経って、鳴らされるこの音・・本当にかっこいい。こんな風に生きたい。


今更、僕みたいな人間が"B-DASHと言葉"について、語るのはもう何番煎じかと思うけどそれでも言いたいことはある。この世にはインストという音楽もあるが、たいていのバンドは音に意味のある言葉を乗せている。それは伝えたいことがあるからだし、僕らはその歌詞をそれぞれ紐解き、メッセージを理解しようとしている。それはそれでいいことだ。

でも本当に大事な気持ちはどこか言葉にならないものでもある。このレビューを書きながら、僕もそれを考え続けている。音楽の魅力を、どうやって伝えたらいいのか、わからず、結果として適切な言葉を見つけられないことのが多い。そもそも、普段から、大切な君に伝えたい気持ちがあるのに、言葉が見つからないことばかりだ。僕らはこの形にならない思いをどうやって表現すればいいのか、いつもわからなくなってしまう。現実世界のコミュニケーションでそれをどうすればいいかは正直わからないし、正解はない。

だけど音楽の世界には音という魔法がある。正解がないのは音楽の世界も同じであり、音に乗れば、なんだって言えるし、それどころか言葉にならない感情さえ表現できるような錯覚に陥ることができる。
そう、それは錯覚であり曖昧なものである。でも、そんな曖昧な空気感がわからせてくれることもたくさんある。

例えば、僕は井上陽水の『帰れない二人』という曲が好きだ。



何か諸事情により帰れなくなってしまった二人についての歌である。歌詞だけ読んでも素晴らしい楽曲だが、僕が特に好きなのはBメロの「アーアーアーアーアーアー」というコーラス部分。まさに言葉にできない関係、感情を共有してしまった二人の情景を想像することができる。

井上陽水は基本的に美しい言葉遣いをする歌手であるし、全く同じ枠組みの話で考えるのは難しいが、そういえば、名曲『アジアの純真』の歌詞もまた意味不明であった。
つまり、きちんと言葉にして伝えることは大事であり、それは大前提である。だけど言葉にならない気持ちというものがこの世には確かに存在する。だからこそ、言葉にしない”、”意味を持たせない”という”表現”もまた一つの確かな”表現”であると僕は考えている。


B-DASHは主に"めちゃくちゃ語"を歌詞に使う。その名のとおり、意味のないめちゃくちゃな言葉だ。流暢な英語が使われた洋楽を聞いたときに感じられる空耳を意識していると聞いたことがある。
ちなみにB-DASHはちゃんと日本語で歌っていた時期もあるし、僕はその時期の代表作である『NEW HORIZON』(全編日本語でめちゃくちゃ名盤)というアルバムが大好きだ。そうやって変わろうとした時期もあった。

けど結局彼らは彼らの表現を選んだ。それこそがB-DASHの絶対に譲れない部分なのだと僕は感じた。君に伝えたいのは言葉にならない感情1つだけだったということ。これだけ音に意味のある言葉を乗せるバンドがたくさんいるんだから、こんなバンドがいてもいいかなと僕は思う。


今作で意味がちゃんとある歌詞は四割くらいであった。日本語で伝える意味の大事さもしっかり理解したのだろう。彼らの音楽はちゃんとこの胸に伝わる。少なくとも、軽薄に「がんばろう」と歌う人間より何億倍もちゃんと伝わる。言葉にならない大事な感情がちゃんと伝わる。だから僕はこのバンドが好きだ。


難しいことを考えずに、楽しくなれて、33分というボリュームもちょうどいい。
きっと長く長く聞いていく作品だろう。言葉にならない感情を抱えてしまったとき、少しだけお世話になりたいと思う。まだバンドを続けてくれていて、変わらずにいてくれて、こんないいアルバムを作ってくれてありがとう。
僕もまだまだ変わりながら、変わらずにこの人生を続けていく勇気をもらった。

やっぱりB-DASHはめちゃくちゃいいバンドだ。

EXPLOSION/エグジットチューンズ