THE NOVEMBERS『Rhapsody in beauty』 | MUSIC TREE

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邦ロックを中心に批評していく
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彼らが、自らの音楽的なオマージュの根源を如実に表した作品だと言える。それこそが”美しき狂想曲”だったのだ。古の音楽的ライブラリーを聴き育ってきたかれらは、次に伝えるため、それを受け継ぎ歩き続けてきた。ただ、転がしてきたロックは、そう簡単に渡せないものだった。

だからこのバンドは今ここに立っている。少しの苛立ちを抱えているのも事実。”ねえなんかさ 有害な無罪 おかしくない? あまりに 無害な有罪 狂ってない?”(sturm und Drang)”暴力的な理論 理論的な暴力” なぁこの単調にさ耐えられるか”(Xene)今のせかいの矛盾を突いた小林の歌詞は、美しくも過激にささくれ立つ。その思いは一つの臨界点に達したと見える。だから今になって『Blood Music.1985』のような自らのアイデンティティーを提示するようなタイトルが生まれてきたのだ。

無慈悲に引き裂かれたような歌詞がノイズと重なっていく。ラストの『僕らはなんだったんだろう』で終わる作品。全ての答えは解かれないまま、進んでいくしかないその未来。今は何の希望も託せないという思いと裏腹にアニメのエンドロールのように終わっていく物事。

でも彼らは続きを描くだろう。答えは海に沈んだ、古代文明のような使い古された狂想曲だけが知っているのだと。この曲の最後の歌詞が答えだと僕は思いたい。