恥も外聞もない、ということばがあった。
過去形だから死語である。
多様性や共生を重視するようになってきた昨今、むかしほど世間体を気にすることがなくなってきた。
ずっとぶらぶらしている当方、亡友阿部珠樹さんから、
「あんたみたいな生き方してもまえほど咎められなくなった。いい世の中になったよな」
と皮肉をいわれたことがある。
反論しない。
首肯するのみだった。
とはいえ、無為徒食者なりの規範をじぶんなりにさだめており、そこから逸脱しないようには戒めている。
威張っているわけじゃありませんぜ…。
恥も外聞もない破廉恥ぶりがクローズアップされてきた都知事選であるが、それが争点隠しに繋がり、現職有利に働く。
自民党(統一教会)・公明党(創価学会)・連合(原子力ムラ)・三井・電通・読売その他のバックアップがある現職は、もともと悪強いのに…
日本テレビ草創期からプロデューサーだった井原高忠さんの40年まえのインタビューをよみかえすと、日本テレビ設立に、三井・読売・朝日・毎日・大手広告代理店が関わっていることがよくわかる。
学閥でいえば慶應義塾大学である。
井原さん自身三井直系の出自で、井原という苗字は三井から取ったものであるそうだ。
上記のグループに読売ジャイアンツと京成電鉄も絡んでくる。
押上生まれの王さん、佐倉生まれの長嶋さん、習志野生まれの阿部慎之助さんらは、この点でも巨人軍主流派といえる。
「24時間テレビ」もおなじバックグラウンドである。
こうした戦後の裏歴史を軽演劇的に描いたのが、奥泉光さんの「東京自叙伝」(中公文庫)。
讀買新聞に、正刀松太郎が登場するのだから踏み込んでいた。
主人公は東京の地霊だが、その性格はひたすらC調、無責任、軽佻浮薄であり、反省をいっさいしないのが強みである。
都知事選まえによんでいただきたい小説である。
谷崎潤一郎賞作品。