成田ナニガシが高齢者集団自決を訴えて炎上。
CMに起用したキリンビールも周章狼狽。
現実が、ドラマを超越して不適切なり。
しかし、およそ30年まえに大・朝日新聞で、高齢者集団自決を呼びかけて、しかもシニア層に支持された方がいる。
だれか?
山田風太郎センセイです。
忍法帖に明治開化物で奇妙奇天烈大百科をきわめたヤマダ先生であるゆえか、当時でも受容れられたのである。
それに、山田先生には成田ナニガシにない稚気があった。稚気は表現者にとって大事なファクト。
よくもわるくも逆説・反語・皮肉・誇張が通じなくなった令和の御代であるが、毒消しとしての稚気を天来に持ち合わせているか否かということも大きい。
三谷幸喜さんがウェルメイドな喜劇作家ーただし、このひとの本領は陰惨な内ゲバ劇のほうにあるとおもうーだとしたら、宮藤官九郎さんは山田風太郎型の戯作者だろう。どちらが上かというモンダイでなく、タイプと好みに帰結することだ。
さて、山田風太郎さんは高齢者集団自決提案エッセイをかいた直後に体調異変を起こし、数カ月の入院を余儀なくされた。
中度の糖尿病とパーキンソン病だった。
パーキンソン病は、山田さんの恩人江戸川乱歩が最後にかかった病でもある。
そうして、山田さんは乱歩と同じ真夏の日に亡くなった。
つまり、命日が乱歩とおなじ。
「人間臨終図鑑」最終章に山田風太郎さんを加えるべきだとおもう。
春らしい日和の今日もわたしは生きつつある。
有難く、寿ぎたい。