「第四間氷期」ーS Fにしてミステリー。令和5年でも版重ねる。 | あずき年代記

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ブログの恥はかき捨てかな…

最近感想をここに綴ってないが、あいかわらず、脈絡なき乱読の日日である。


花田清輝「アヴァンギャルド藝術」を再読したかとおもえば、この歳にして、はじめてエラリー・クイーンの「Yの悲劇」をよんでニヤニヤしたりした。


1932年のミステリーだから探偵役が、引退した老シェイクスピア役者でニューヨークの郊外で荘園というか、お城みたいな豪邸に住んでいる。


安部公房「第四間氷期」もよんだ。

令和5年でも版を重ねているから現役ですな。


わたしが生まれた年に岩波の雑誌「世界」で連載された小説だが、世界各国、近未来は地球温暖化による海面上昇で水浸しになることを恐れている。


それを占ったのは、未来予言機械。

いまでいうコンピュータですね、きわめて原始的な。


地球温暖化は氷河期に向かう前駆状態なのだが、安部公房は二酸化炭素の過剰な排出も視野に入れているところが、やはり偉い。


各国また地球水没時代を見越して、密かに対策を練っている。むろん、日本もである。


小説の枠組みはSF、しかして物語の展開はミステリーであり、このあたりの構成力はカズオ・イシグロをおもわせる。


イシグロさんのほうがずっと洗練されているが、「第四間氷期」が「ウルトラQ」的チープさでご愛敬なのは、70年まえの小説だからいたしかたあるまい。


SFやミステリーを否定的媒介にして純文学を超えようとした安部公房は花田清輝が唱道したアヴァンギャルド藝術を実践していたのである。


世界で評価された日本作家は、谷崎・川端・三島・安部公房・大江健三郎であるが、これはドナルド・キーンの評価がそのままグローバルに敷衍された気がする。


花田清輝が蘇って宮﨑アニメとゴジラをどう捉えるかよんでみたいという妄想に駆られております。