当初、事件にはだれも気が付いていませんでした。
第一発見者で、フィールド担当のSはこう証言します。
「一瞬、“あれ、何だ?”とは思ったんです。ビオトープに流れ込む塩ビパイプの出口付近にドングリがいっぱいありましたから。でも、だれかのイタズラだろうと気にも留めませんでした。はい、気が付いたのは一昨日の夕方です」
翌日、Sは公休。翌々日に出勤後、午後になってふと思い出し、「ビオトープに何か、ヘンなものがあるんです」 と上司のHに報告しました。
「ビオに流れ込む水をせき止めるかのように木の葉で土手ようなものを作ってある。直径60㌢くらいか。まるでダムのようだな。人が作ったのか。ドングリは大半がコナラがでクヌギはほとんどない。ん~、動物の仕業か……」
こう言うと、Hはビオトープに流れ込む塩ビパイプの取水口がある水路の方にゆっくり歩いていきました。そして、戻ってくるや、ビオの東端、塩ビパイプの出口近くのドロドロした草むらを丹念に調べ始めました。
「こっちにいくつか穴がある」(H)
「ここには足あと!」(H)
ぶつぶつつぶやきながら証拠固めの材料を探しています。
と、そこへHの上司のNが顔を出しました。
「どれどれ、事件かい? 足跡? この穴は鼻で掘ったんだろうなぁ」
ベテランの考察にHが頷きます。
「コレは……、アレの仕業かも」(N)
「十中八九、間違いありません」(H)
二人の話を黙って聞いていたSが口を挟みます。
「というと、犯人は深夜この辺りをうろついている、アレですか?」
これは、ゼットンです。アレではありません。
数分後、Hが林の中から何やら深緑色した小箱を抱えて戻ってきました。
「これで犯人が特定できるはず……」 カメラのロープを縛りながらHがつぶやきます。
さて、皆さんはどんな犯人像を思い描きましたか? 想像してみてください。これまでに判明した事実は下記の通り。
①ビオトープに流れ込む塩ビ管の先に“木の葉のダム”を作った
② その中にコナラのドングリをどんぶり3杯分ほど集めた
③ 付近の泥土にサバ缶ほどの穴が数か所あった
④ 付近に足あとらしき穴があった
カメラの映像は火曜日の夕方に回収予定。果たして犯人は特定はできるのかーー。事件は一気に解決するのかーー。つづく。