架空の球を追う | 独書感想文

独書感想文

読んだ本をちまちま書いていく、個人的な感想文です。


まず、タイトルが目に止まって、
短編集との事で、なんとなく読んでみた森絵都さんの本です。
森絵都さんは、あの有名な(映画にもなった)『カラフル』の著者ですね。
あちらは、小学生の時に読んだ思い出が…。

こちらの『架空の球を追う』は、タイトルだけを見ていた為、なんとなくファンタジックな話のイメージをしておりました。
が、読み始めたら、全然逆。凄く現実的なお話の数々に、驚きました。
まるで、隣でその風景を見ているような。友達の話しをきいているような。
どこにでもある、本当に存在している人たちの話を聞いているような感じです。
 
その短編集の中の、『ハチの巣退治』という、英国にある、とあるオフィスで起こる珍事件の話。
登場人物達のハチの巣に対する困惑や葛藤と、主人公が母親に書く手紙の内容には、思わずクスッと笑ってしまいます。
個人的に好きなのは、『夏の森』と『あの角を過ぎたところに』。
出来事の不思議な巡り合わせ、でもなんだかリアリティがあります。
現実でも、なんで?て思う巡り合わせって、ありますよね。
そう思う作品が、この2作品以外にも見られましたけども。

最後に、『太陽のうた』の、神話の歌に合わせた、主人公の言葉が、なんとも胸に刺さったので、書いておきます。

この先も いやがらせを仕掛けてくるにちがいない。
でも、だからってそれがなんだろう?
明日にはまた東から太陽が昇り、この荒れ果てた大地を照らすよ。
私は鼻歌をうたいながら家族の待つ我が家の戸をくぐった。