▲プログラム表紙
日唱の第24回定期を聴きに豊洲シビックセンターに行ってきた。
日本とポーランドの国交樹立100周年記念事業の一環として企画された演奏会だった。
前半がポーランドの作曲家ヴィトルト・ルトスワフスキ(1913-1994)の作品、後半がその弟子である松平朗氏(1931-)の作品だったので、師弟のコラボというプログラム。
どちらも女声合唱と混声合唱有り。
▲女声コーラス
ルトスワフスキはあまり聴いたことのない作曲家だったけど、とても面白い曲が並んでいた。特に印象に残ったのは「兵士の主題による10のポーランド民謡」で、これはルトスワフスキが1951年にポーランド軍からの委嘱によって作ったものらしい。もともとは男声合唱だったが、今日は混声に編曲されたものが歌われた。歌詞カードを見ると戦争に行く兵士たちの思い、兵士たちの恋人や家族の思い等が綴られており、ルトスワフスキの音楽がその心情を切実に表現している。
ポーランドのワルシャワといえばナチスに一度、跡形もなく破壊された町である。ルトスワフスキはその頃、青年時代を過ごした。
そういった時代の経験者しか成し得ない音楽だったように思う。
最後に歌われたLacrimosa(涙の日)はSopソロ付きで、非常に重厚で深い響きを持つ音楽だった。
日唱の演奏はとても丁寧で、作品への共感が伝わり好感の持てるものだったが、特にLacrimosaは音量も充分で素晴らしかった。
また松平朗氏の曲も、小品が並んでいるが最近作曲されたものが多く、(4曲も初演だった)非常に楽しく聴けた。
プログラムには、松平氏がルトスワフスキからは客観的に何を教わったか説明するのは困難だとあった。
常に「これはレッスンではない。君の作品に興味があるから、これについて話をするのだ」と言い、その言葉通りコーヒーを、またはブランデーを飲みながら師は1~2時間話したという。
信頼し合った師弟関係である。ルトスワフスキの大きな人間性が垣間見れる。
会場には作曲の松平朗さんが招待されており、演奏が終わると舞台で挨拶された。
恩師と名前が並んだ演奏会にさぞ感無量であったに違いない。
▲舞台に呼ばれ拍手を受ける松平朗氏
今日の演奏会は作曲家といつも共にあった、かつての日唱の姿を再び見たようで、なんだか嬉しかった。
ルトスワフスキの音楽をもっと聴きたくなったので、交響曲や協奏曲、管弦楽曲、合唱曲の入っている10枚組CDを注文してしまった。