飛鳥の蘇で知る、お釈迦様と乳製品のお話 | コン美味食文化論

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いけずな京女が、コンビニエンスに現代ニッポンの食文化を探求中。食のクロスロードを縦横無尽に放浪してます。


飛鳥の蘇1


 涅槃経(ねはんきょう)

 牛より乳を出し、
 乳より酪を出し、
 酪より生蘇(しょうそ)を出し、
 生蘇より熟蘇を出し、
 熟味より醍醐を出す。
 醍醐は最上なり。
 もし服する者あらば
 衆病皆除く。
 あらゆる所楽ことごとく
 その中に入るがごとく。
 仏もまたかくのごとし。

 
 涅槃経とは正式名称「大般涅槃経(だいはつねはんぎょう)」。釈迦の入滅を叙述し、その意義を説く経典類の総称であります。
 その中に、乳製品の製造過程に例えて仏の修行を説いた一節があるのが上記の記述。
 牛から出た乳が濃縮・熟成されてより味わい深い加工食品になっていくように、修行を重ねるたびに人としての味わいも濃くなっていくということでしょうか。
 人間、かくありたいものですが…。
 私はまだ乳の段階から抜け出せてないやろうなあ(溜息)

飛鳥の蘇2


 
 さて、この涅槃経に登場する乳製品はいったいどんなものなのか。
 「酪」はヨーグルトのようなものであったと考えられています。
 「生蘇」は「酪」を濃縮した、バターとチーズの間のようなもの。
 「熟蘇」は「生蘇」をさらに濃縮したもの。これはサンスクリット語でsalpis(サルピス)と書き、カルピスの語源となったお話は有名ですね。
 「醍醐」は最上の乳製品で、ご存じ「醍醐味」はここからきています。

飛鳥の蘇3


 
 「熟蘇」「醍醐」については中国でも日本でも製法の伝承が途絶え、今では幻の乳製品となっていますが、「生蘇」は延喜式(平安時代中期に編纂された法律の細則)に製法が定められています。
 なんで法律で乳製品の製法なのかといえば、飛鳥の時代より「生蘇」は納税品=朝廷に納める年貢とされてきたからです。それほど貴重で魅力的な食品であったわけ。
 そこで、この「生蘇」を見事に再現したのが、飛鳥で唯一の牧場である西井牧場です。
 その再現の経過と驚きの製法は、こちら をご覧ください。

飛鳥の蘇4


 
 もちろん、再現された「古代の味 飛鳥の蘇」をお取り寄せしました。
 紙に丁寧に包まれた「飛鳥の蘇」を取り出すと、なんだか泥のかたまりのよう(失礼!)
 薄く切って食す、とありましたので、包丁を入れてみますと意外にサックリと切れました。
 そして、切り口からはふうわりとミルクの香り。
 そっと口に入れて、噛みしめてみると…。
 
 ああ。
 
 チーズよりはずっとずっと穏やかですが、濃縮・熟成された牛乳の深い味わいが広がり、またほのかに甘く、ま・さ・に乳製品。
 「生蘇」にしてこの美味しさなら、「醍醐味」とはいったいどんな味なのでしょう。
 「醍醐味」を再現する試みも各地でとりくまれているようですが、判定は難しいでしょうねえ。 

飛鳥の蘇アップ
飛鳥の蘇断面
切り口はキャラメルのよう


 
 それにしても、お釈迦様はなぜ仏の修行を乳製品に例えられたのでしょう?
 お釈迦様がまだ太子であったころ、奥山で絶食の厳しい修行に励み、衰弱しきった体で下山したとき、通りかかった長者の娘が一杯のの牛乳を捧げました。
 その牛乳を一口飲んだお釈迦様はこれはど美味なものがこの世にあったのかと驚き、そこで悟りをひらいたそうです。
 後年、お釈迦様はその体験に基づいて、牛乳や乳製品は「食料となり、気力を与え、皮膚に光沢を与え、また、楽しみを与えるもの」として賞賛されています。
 仏となられた方が美肌にまで言及されてるのは面白い。
 みなさんも牛乳や乳製品をたくさん摂って、気力を保ち、美肌になり、楽しく過ごして味わいのある人生を送りませんか。


〈西井生乳加工販売所 飛鳥の蘇〉
種類別:濃縮乳
乳脂肪分:18%以上
乳固形分:70%以上
内容量:80g


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