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キューピーマヨネーズの3分クッキング

 本日の掲載済みNovelはMissingの一本です。[兄妹シリーズ]になっています。

 ところで、キューピーマヨネーズはどうしてあんなにも美味しいのでしょうか?
 自称マヨラーの私はとにかく何にでもマヨ様をコラボさせています。卵焼き、唐揚げ、味噌汁、肉じゃが、最近の絶妙コラボは納豆です。でも、こんな私もキューピーを卒業する日が来てしまったのです!それはお歳暮に送られてきたエコナ!中性脂肪に優しい健康補助食品なのです!!身体には優しい優しいサッパリ顔のエコナくんですが、私はまったりもったりしたキューピーくんに惚れていたんですよ!キューピーくんとの突然の別れは私にとって衝撃的な出来事だったのです(・д・;)

Missing

 兄さんはいつもせわしくなく、夢中というものが一つ所に落ち着かない。それは科学者である兄さんにとって探求心の向上を誘う良い媚薬なのかもしれないけど、天井についた染みのように何かの拍子にふと思いだす。小さな不安。
 こんなに移り気な兄さんが、もし私以外の誰かを好きになったりしたら。…私は嫉妬深い、醜い心の持ち主だ。気を付けなくちゃならない。その時になったら、気持ち良く兄さんを送り出せるように。


 てくてくと、町並みを道なりに智樹と杏里は、緑のステンドグラスに透けたかのような気さえする光を運んで吹く風と同じ方向に進む。
 実のところ行く先は二人にも分かっていない。先程から何かをぼんやりと考えながら足だけが動いている杏里のそれに歩調を合わせて、智樹がほんの半歩だけ後ろについて歩いている。杏里の考え込んでいる原因は、智樹は何となく察することができた。しかしそうだとしても、それで杏里がここまで考え込んでしまう理由はちっとも思い浮かばない。
 寒いとか暑いとか余計なことに煩わされないですむこの陽気のおかげもあって、何かを考えている杏里とその理由をうかがっている智樹の足取りは傍目には小気味よく見える。ただ表情だけが伴っていないので、幾ばくかの違和感は否めない。杏里は一体何に思いをめぐらせているのか。事は一時間前に遡る。
 相変わらずお金にならない研究に根を詰めすぎる兄の腕を引いて、杏里が半ば強引に散歩へ誘ったときのことだ。散歩自体は滞りなく、二人して仲良く手をつなぎ、ゆったりと公園を一周した。問題はここからで、来た道筋を辿って帰る途中、二人は幼い兄妹の喧嘩を目にした。
 他愛もない、子供らしい喧嘩。「お兄ちゃん、今日はユズと遊んでくれるって約束したじゃない」「そうだけど…兄ちゃんだって友達と約束したんだよ」「ユズの方が先に約束してたもんっ。お兄ちゃんはユズのことキライなんだ!」きびすを返して走り去る妹と、立ちすくむ兄。走り去っていく妹を複雑な表情で見つめ、隣にいた友人に「ごめん、今日は遊べない」と呟き妹のあとを追う。
 その様子を見ていた杏里の顔が急に曇ってしまったことに気付いてはいたが、どうしたのだろうかと智樹がうかがっている間に自宅を通り過ぎ二人はあてもなく歩き続けているのだった。そんなこんなで、智樹はその喧嘩がこうなった原因だと推測しているのだが、はたして何がそんなに杏里に影響したのであろうかと悩み続けた。
「何か、気になることでもあるのか?」
 杏里の覚醒を待ちきれず、思い切って智樹は尋ねてみることにした。
「…あ、うん…さっきのね」
 瞳に色を戻して智樹に視線を移しながら答えた杏里は、言葉を続けるのをやめて辺りを見回して唖然とした顔になる。
「ここ、どこ?」
 自宅を出てから公園に向かうまでには見かけなかった景色に戸惑う。周りを少しも気にせず思考にだけ集中して歩いてきたせいで、杏里は自分でここまで歩いてきたことも、なぜこんな所にいるのかも理解できなかった。おおよそこんなことになるのだろうと予想していた智樹は、さして驚きも笑いもせず、けれどそのどちらも含んだような微笑を浮かべた。
「お前がずっと考えごとしながら歩いて来たんだ」
 そう事実を告げてから、声をかけてくれたらよかったのにと焦って弁解する杏里をなだめながら、智樹は近くの木陰を指差して休憩しようと持ちかけた。
 会話を少し中断させて、青々と茂った葉を広げている木の下まで歩いていって、幹に背もたれに隣同士で腰を落とすと、二人は小さく息を吐いて落ち着いた。智樹の視界の端で、杏里は何となく照れくさそうな顔を向けて、どんな言葉で切り出せば良いかともじもじした仕草をみせていた。一拍置いて話し出そうと口を開いてはやめ、二拍置いて再び口を開いて、それから三拍してやっと杏里は話し出した。
「…私もあの子みたいに兄さんを困らせてた?」
 短絡的な言い方。けれと、智樹にはそこに至までに杏里が色々考えたのであろうことがわかる。あの幼い兄妹たちに、杏里は自分たちを重ねて考えたのだろう。[今日は遊べないみたい]小さな兄の、複雑な言葉を耳にして、今まで気付かなかった相手への思いを杏里は聞いたのかも知れない。
「困ったことなんかねぇよ」
 嘘じゃなかった。杏里がそばにいて困るなんて、そんなこと絶対ない。
「本当に?」
「本当に」
 よくよく考えてみればなんと愛しいんだろう。自分の膝に置いた両手を眺めるように視線を落としている杏里の、その手に自分の手をそっと重ねる。その仕草で杏里の顔が上がるとしっかりと瞳を捕らえた。
「俺はお前が妹じゃなくても好きだよ」
 言葉の力というものは、何と強いことかと智樹は思う。心から、杏里を好きでいる自分がいる。それが許されない愛だったとしても、確かな想いがここにある。
 両手を智樹に握られながらも、ほんの少し視線を下にして赤くなった顔を杏里は隠した。智樹が言葉にした好きは、自分とは違うのだと思いながらも、兄の好きの一言が嬉しくて杏里の顔は綻んだ。わがままで、寂しがり屋な自分が憎らしいほど嫌いなはずなのに。なんでだろう。兄に想われる自分はどうしてこんなにも愛しいのか。
「私も兄さんのことすごく好き」
 そう言って智樹の肩に寄り添う杏里。ゆるやかな午後の日差しが二人に優しく降り注いだ。
「……知ってる」
 呟くように囁かれた智樹の声は、隣で眠ってしまった杏里にはまだ届いていない。


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2007.02.07/by.arisa

Black Planet

はじめまして、Ahiruです。本日からBlack PlanetはBlogとNovelを交互にコツコツ更新していきますので皆さん、どうぞ宜しくお願いしますね!!
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