【結果+観戦記】井上尚弥 vs ルイス・ネリ[4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ] | ボクシング・ダイアローグ

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☆5月6日:東京ドーム(東京都文京区)

「Prime Video Presents Live Boxing 8」

 

◇4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ◇

 

王者 

井上尚弥

(31=大橋:26戦全勝23KO)

vs 

挑戦者WBC1位/元WBCバンタム&スーパーバンタム級王者 

ルイス・ネリ

(29=メキシコ:35勝27KO1敗)


[ 東京ドーム(収容人数5万5000)でプロボクシングの興行が行われるのは、1990年2月の世界ヘビー級タイトルマッチ、マイク・タイソン vs ジェームス〝バスター〟ダグラス(ともに米=タイソン氏が10ラウンドKO負けで初黒星を喫する大番狂わせ)以来34年ぶり。

 

 ボクシング興行は、1988年3月のこけら落としで同じくタイソン氏がトニー・タッブス(米)氏を2ラウンドTKOで退け王座を防衛した世界ヘビー級タイトル戦が最初で、今回で3度目。

 

 日本人ボクサーがメインを務めるイベントは史上初 ]

 

昨年7月にスティーブン・フルトン(米)を8ラウンドTKOしてWBC&WBO王座に就き、同年12月にWBA&IBF王者 マーロン・タパレス(比)に10ラウンドKO勝ちでバンタム級に続く4団体統一を達成した井上選手は、それ以来のリングとなるWBC(=指名戦)&WBO2度目、WBA&IBF初のタイトル防衛戦。

 

昨年2月、アザト・ホバニシャン(アルメニア)との挑戦者決定戦に11ラウンドTKO勝ちしてWBCの指名挑戦権を獲得、同年7月にフローイラン・サルダール(比)を2ラウンドTKOして以来となるネリは、スーパーバンタム級王座返り咲きを狙う一戦。

 

結果は 井上選手が 6ラウンド 1:22 TKO勝ち。

 

[試合結果を知らない状態をひと晩キープし、今日の午前に動画サイトでフルラウンド映像を見つけ、実質・生中継感覚で観戦]

 

スタートから井上選手が強い右を打ち込み、サウスポーのネリも引かずに応じる立ち上がり。

 

初回1分40秒過ぎあたり、至近距離から左アッパーを放った直後の井上選手にネリの左フックがタイムリーに決まり、顔を跳ね上げられたモンスターが天を仰ぐように崩れて腰を落とす、よもやまさかのダウン。

 

跪くような姿勢でカウントを聞く井上選手の表情は冷静で、再開後はクリンチやステップ、ボディワークを交えてネリの追撃をかわし、落ち着いて対処。

 

2ラウンド、ネリはかさにかかって出ることなくじっくりジャブから組み立て、井上選手もそれに対応しながら建て直し。

 

互いに牽制し合う中、残り1分を切ったところで井上選手の左ショートフックがネリの出鼻を叩くと、今度はネリがダウン。

 

3ラウンドも張りつめた攻防が展開されるも、4ラウンドになると井上選手がネリを見切った感じになり、笑みを浮かべたり足を止めて互いに挑発し合ったりするシーンもある中、得意の左ボディなども出始め。

 

5ラウンド、被弾が増え始めたネリは思い切って攻めて出たものの、残り30秒のところでロープを背にした井上選手が左フックを小さく振り抜くと、ストンと腰を落としてネリが2度目のダウン、続行後は打ち合ってピンチを凌いだながらもダメージはかなり深そうな感。

 

6ラウンド、打って来いのアピールから井上選手がプレスを強めて好打を連発、追い詰められリキんだパンチしか返せないネリに、モンスターの右アッパーから繋いだ右フックが炸裂。

 

弾き飛ばされるように後退したネリは、ロープにバウンドして頭を打ちつけるように倒れ込むと、マウスピースを吐き出してもはや力尽きた表情、ここでレフェリーが止めて試合終了。

 

プロ26戦、アマチュア81戦を通じてキャリア初のダウンを奪われる波乱はありつつも、モンスターがパンテラ(黒豹)をキャンバスに沈めて痛快なKO防衛。

 

プラス、かつてネリに苦い経験を味わわされた元WBCバンタム級王者 山中慎介氏の仇討ちも履行。

 

「倒した瞬間はいつになく最高な気持ちだった。1ラウンド目のようなサプライズ、たまにはいかが。

 

(ダウンの)ダメージはさほどなかったが、パンチの軌道がちょっと読めなかった。

 

 その時のことは必死で覚えていないが、普段のイメトレがこういうところで生き、引きずることなく2ラウンド目からはポイントを計算していこうかと考えた。

 

 あのダウンがあったからこそ、冷静に戦えたのかもしれない。 

 

 ボクサーということで、そういうシーンはやはり燃え上がるところがあり、非常にハイテンションで試合をしていた。 

 

 ダウンは喫したが最終的にはKOして勝つことができ、自分の中で良いキャリアが築けたと思う。

 

 大観衆には凄くパワーをもらっていたけど、出だしはひよってたところがあって、終わってから振り返ってみるとそれだけ重圧があったのかな、と。

 

 入場時にドームの雰囲気を見て、舞い上がってはいないが浮き足立つというか、そういう部分はあった。 

 

 凄いプレッシャーだったが、4万人の皆さんが満足する試合だったと思う。

 

 これからも最高の試合をして行きたい。今後も期待してほしい」

 

日本ボクシング34年ぶりの東京ドーム興行は、主催者側の混雑緩和策や演出のセッティング等の関係で外野スタンド席を使用できなかったこともあり、90年2月のタイソン&ダグラス両氏の世界ヘビー級タイトル戦で記録された5万1600人の最多観客数には及ばなかったものの、4万3000人を動員。

 

日本人がメインイベントのリングに上がった試合としては、1952年(昭和27)5月19日:後楽園スタジアム(後楽園球場=東京ドームの前身)で白井義男氏が日本人初の世界王者になった世界フライ級タイトル戦の4万5000人に次ぐ観客数。

 

また、井上選手個人としては、今回のKO勝利で

 

☆ 自身の持つ日本人の世界戦連勝記録を22に更新

[世界最多は5階級制覇フロイド・メイウェザーJr.(米)氏の26連勝]

 

☆ 同じく、自身の持つ日本人の世界戦最多KO勝利数を20に延長

[2位は11KOの井岡一翔(志成)選手、3位は10KOの元WBAスーパーフェザー級王者 内山高志氏]

 

☆ 更に同じく、自身の持つ日本人の世界戦8連続KO勝利タイ

 

といった記録面のトピックもあり。

 

個人的には、前から気になっていた顎の引きが甘く上がる傾向の所に、まぐれかもしれないにせよ巧く合わされてしまったことによる初ダウンだった?ようにも思えたのがちょっと引っ掛かかるんですが...

 

でも、それが欠点なのであれば陣営が矯正せずに放置しておくことは考えられないので、まぁやっぱり違うんだろうな、と。

 

ただ、それにしても... ダウンシーンを見た時は、同じ東京ドームで起きた、タイソン氏がダグラス氏にKOされたあの世紀の超大番狂わせが嫌でも頭に浮かび、自分はメチャクチャ落ち着きを失う有様でした。

 

(他の誰かならいざしらず、ネリにだけは負けてほしくない)


一方、敗れたネリは「腎臓が痛い」と訴え、試合後は大事を取って病院へ向かい予定されていた会見を欠席、その後に自身のX(旧ツイッター)に

 

「私は元気。皆さんのサポートに感謝する。できる限りのことをやった」

 

と投稿。

 

また、関係者に対し

 

「フルトンは一度で仕留められたが、自分は立ち上がって戦い続けた。

 

 ダウンを奪ったのは、色々な状況を想定して練習していたパンチだった。仕留めようと思ったが、井上もクリンチして来て賢く対処した。

 

 戦ってみて、井上は素晴らしいボクサーだとは思ったが、パウンドフォーパウンドのトップだとは思わない。

 負けた自分が言うのはおかしいが」

 

と話していたとのこと。

 

なお、井上選手の次戦は、この試合を「井上の4~7ラウンドKO勝ち」と予想し的中させた IBF&WBO1位 サム・グッドマン(25=豪:18戦全勝8KO)との防衛戦で事実上確定している模様。

 

試合後のインタビューの際、観戦に訪れていたグッドマンがリングに上がると、井上選手が9月頃の対戦で交渉を進めることを明言。

 

井上陣営は既に首都圏の会場を確保、日本開催の見込みらしい一方で、グッドマン側の豪プロモーターが地元オーストラリア開催を画策しているとの報道もあり、現時点では大橋会長も「いろんな選択肢がある」と話すにとどめているそうですが、取り敢えず相手に関してはグッドマンで間違いなしのよう。

 

(グッドマンはIBFの指名挑戦権を保持しており、もしかしたらIBFから両陣営にもう対戦指令が出されているのかも?)

 

今やビックイベントのメッカになりつつあるサウジアラビアのプロモーターが、モンスターに興味津々で既にオファーして来ている、という話も伝わっていますが、それは12月:最強挑戦者と目されるムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)との防衛戦になる...?