【結果+観戦記】KNOCKOUT CHAOS:バルガスvsボール マドリモフvsクルバノフ | ボクシング・ダイアローグ

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3月8日(日本時間9日):サウジアラビア王国リヤドのキングダム・アリーナで開催された、アンソニー・ジョシュア(英)vs フランシス・ガヌー(カメルーン)のヘビー級10回戦がメインのマッチルーム・ボクシング&クィーンズベリー・プロモーションズ共同プロモート興行「KNOCKOUT CHAOS」。

 

そのイベントのアンダーで行われたトリプル世界戦のうちの2つ、WBCフェザー級タイトル戦とWBAスーパーウェルター級王座決定戦の簡単な観戦記/内容の要略。

 

[4試合すべてを一緒くたにすると、誰も読みたくない駄文の長編になってしまうため、2回に分けて投稿]

 

 

◇WBC世界フェザー級タイトルマッチ◇

 

王者 

レイ・バルガス

(33=メキシコ:36勝22KO1敗)

vs 

挑戦者1位 

ニック・ボール

(27=英:19戦全勝11KO)

 

22年9月にマーク・マグサヨ(比)を判定で下してWBCフェザー級王座を獲得&2階級制覇を達成したバルガスは昨年2月、一気に3階級制覇を狙ってオシャキー・フォスター(米)とのWBCスーパーフェザー級王座決定戦に臨んだものの、判定で敗れて初黒星。

 

今回は、そのフォスター戦から1年1ヶ月ぶりの再起戦&フェザー級王座V1戦。

 

ボールは昨年11月、元WBOスーパーバンタム級王者 アイザック・ドクボエ(ガーナ)に判定勝ちして指名挑戦権を獲得、それ以来となる世界初挑戦のリング。

 

172センチ(178センチとも)のバルガスに、このクラスでは極端なほど小柄な157センチのボールが挑んだWBCの指名戦…

 

結果は 1-1(114ー112 バルガス、116ー110 ボール、113ー113)の引き分け、バルガスが辛くもタイトル初防衛。

 

[動画サイトでほぼフルラウンドの映像を見つけて観戦]

 

 

懐の深い大柄なバルガスに小兵ボールが持ち味の肉薄アタックを敢行、しかし王者はその出鼻を叩くスタイルで容易に挑戦者の接近を許さず、前半戦は軽打のヒット数でバルガスが主導権をキープ。

 

が、そこまで余裕の表情も見せていたバルガスは、7ラウンドに入るとボールのしつこい食らいつきに手を焼いて下がり始め、時おりの被弾も増えるなど展開が変化。

 

8ラウンドには、クリンチをほどかれた直後にバランスを崩したバルガスの隙を突き、ボールの左フックがタイムリーに命中、下を向いていてこれを避けられなかったバルガスが尻餅を着く不覚のダウン。

 

バルガスにダメージの色は窺えないものの、勢いづいたボールは続く9ラウンドから突進を強化、一方ここで中途半端に凌ごうとすれば更に圧し込まれてしまうのが明白なバルガスは、足を使って動きながらヒット&ランで応戦。

 

しかし11ラウンド終了間際、後退するバルガスにボールが右フックをねじ込むと、王者は腰を落としてこの試合2度目のダウン、前半に貯めたポイントをまた奪い返され、判定決着ならかなり際どい勝負になりそうな状況に。

 

どちらがリードしているのかわからない最終12ラウンド、変わらず突貫攻撃で前進するボールに対し、2度のダウンで心象的には劣勢なバルガスが挽回を図ってラストスパートをかけるかと思いきやそうはせずにセーブ、結局微妙な採点と思われる状態のまま試合終了のゴング。

 

 

概ね6ラウンドまではバルガスのフルマークかそれに近い点差、7ラウンド以降は逆にほぼボールが取っていたという流れ・内容でしたが、ダウンを2回奪っている部分を踏まえると、印象的にはやはりボールが勝ったという感が大。

 

とはいえ、自分的には116ー110でボールの勝ちとしたジャッジの採点はちょっと疑問で、許容できる範疇外かな~、と。

 

実のところ、個人的な採点も113ー113のドローでしたが、バルガスが立て直しかけた10ラウンドを逆に攻勢点でボールにつけていたら、勝敗は114ー112でボールの勝ちになっていた計算。

(こっちの方が適切だったかも)

 

結果論としては、前半のさして差のないラウンドの殆どを押さえたバルガスが首の皮1枚で辛くも王座に踏みとどまり、逆に振り分けラウンドをあと1つ2つ取っておけなかったボールは大魚を逃した、という格好になりましたが…

 

善戦し、これからまた世界を目指すボールは一先ずいいとして、今日の試合でボクシングが崩れて来ているとの感がまた強まったバルガスの方は、少なくとももう攻略の難しい王者というイメージはナシ。

 

今日の結果を受け、バルガスの次戦はボールとのダイレクトリマッチになる可能性もありそうですが、WBCのこのクラスには暫定王者にブランドン・フィゲロア(米)もおり、仮にそのどちらかと戦うことになったとしても予想は良くて五分、現実的には不利と見做されるのでは?という気も。

 

とにもかくにも、日本勢にも有望株が順調に育っているクラスだけに、そこも含めて世界の情勢には注目しておきたいところです。

 

 

◇WBA世界スーパーウェルター級王座決定戦◇

 

1位 

イスライル・マドリモフ

(29=ウズベキスタン:9勝6KO無敗1分) 

vs 

2位 

マゴメド・クルバノフ

(28=露:25戦全勝13KO)

 

同級スーパー王者 ジャーメル・チャーロ(米)の今後の進路が一向に定まらない事態を受け、WBAが指令したレギュラー王座の決定戦。

 

[今月に入ってすぐ、WBAのヒルベルト・メンドサJr.会長がチャーロの王座を剥奪する旨をコメントしたと一部の海外メディアが報道。

  最新の2月度ランキングではスーパー王者の表記のままにつき、現時点でタイトルがどうなっているのかはハッキリしないものの、有言実行されているなら既にチャーロは無冠になっている筈]

 

マドリモフは昨年4月にラファエル・イグボクェ(米)、クルバノフは昨年5月にミシェル・ソロ(仏)にそれぞれ判定勝ちして以来のリングとなり、共に初めての世界タイトル戦。

 

試合の1週間前、マドリモフがBBBofC(英国ボクシング管理委員会)のメディカルチェックをパスできずいったん中止が伝えられたながら、その後の再検査で異常なしと診断され、一転して予定通り行われた一戦…

 

結果は マドリモフが 5ラウンド 2:20 TKO勝ちで新王者。

 

[この試合はフルラウンド映像が見つからず、一部カットのハイライト、というかダイジェスト版を視聴]

 

ひと回りほど小さく見えるマドリモフがやんわりとプレス、クルバノフはあまり動かず相手が来るところにコンパクトに合わせる形でスタートし、2ラウンドになるとパワーで上回るマドリモフが圧力を強め、クルバノフも適時打ち返す展開に。

 

ハッキリした優劣のつかない序盤から、徐々にマドリモフがヒット率を上げていた5ラウンド、右スウィングを炸裂させたのを起点にクルバノフをロープに詰めて連打。

 

受けた右が効いたクルバノフは、ガードを固めて追撃打は凌いだものの防戦一方で反撃の手が出ず、レフェリーが早めに感じるタイミングでストップをかけ、TKOで試合終了。

 

内容的にはマドリモフの圧勝で、個人的にはクルバノフの中途半端なガードの穴を的確に突いたことが勝因のひとつにあった、というのが率直な感想。

 

クルバノフが度々やっていた近年の流行のL字ガードは、それを本当に活用できる選手でない限り単純に腕を下げている側(左を下げている場合は顔の左側面、右ならその逆)のディフェンスを甘くするだけで、現実的には相当な防御勘や目の良さ(見切り)を持ち合わせていなければ有効なスタイルには成り得ない、といった考えが自分にはあるので…

 

その意味では、序盤を見た段階でマドリモフの勝ちを予感し、それが当たったのは当然、とのある種の納得感も。

 

そのへんは個人的な見解につき、異論はあるでしょうけど… 何れにせよ、これでチャーロの後釜はマドリモフに決定。

 

ただ、チャーロの実力指数が依然まだ高いことは確かですから、もしスーパーウェルターのまま復帰するのであれば、マドリモフとの対戦に関心を引かれる部分はかなり有り、です。