【結果+観戦記】アンソニー・ジョシュアvs フランシス・ガヌー 張志磊vsジョセフ・パーカー | ボクシング・ダイアローグ

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3月8日(日本時間9日):サウジアラビア王国リヤドのキングダム・アリーナで開催された、マッチルーム・ボクシング&クィーンズベリー・プロモーションズ共同プロモートによるイベント「KNOCKOUT CHAOS」。

 

ヘビー級ノンタイトル戦+世界タイトル戦が3つ組み込まれたそのビッグ興行の、メインイベント&セミファイナルの簡単な内容要略/観戦記。

 

[動画サイトでフルラウンド映像を見つけて観戦/4試合ひとまとめにすると長文になってしまうため、2回に分けて投稿]

 

 

◇ヘビー級10回戦◇

 

前3団体統一ヘビー級王者 

アンソニー・ジョシュア

(34=英:27勝24KO3敗)

vs 

WBC10位 

フランシス・ガヌー

(37=カメルーン:1敗/元UFC王者)


ジョシュアは昨年12月、同じリヤド&会場で行われたビッグイベントで、オト・ワリン(スウェーデン)を5ラウンドTKOして以来となるリング。

 

オレクサンドル・ウシク(ウクライナ)に3王座を明け渡し、リマッチも落としたながら以後3連勝してトップ戦線に戻り、今回ガヌーを下せば5月にスケジュールされているウシクvsWBC王者 タイソン・フューリー(英)勝者への挑戦レールが敷かれる前提。

 

対し、総合格闘技からボクシングに転向したガヌーは、昨年10月のデビュー戦でフューリーとのノンタイトル戦に臨み、ダウンを奪う健闘の末2ー1の判定負け、それ以来の再起戦がいきなりまたビッグネームとの対戦となった形。

 

筋金入りの100%ボクサー・ジョシュアと、フューリー戦で一躍スポットライトを浴びたガヌーの対決…

 

結果は ジョシュアが 2ラウンド 2:38 TKO勝ち。

 

 

セオリーどおり、ジャブからの右を軸に行くジョシュアに対し、ガヌーは左フック主体の格好で試合開始。

 

立ち上がりは大きなアクションはなかったものの、初回の残り1分を切った所でジョシュアの右ストレートが炸裂、サウスポーにスウィッチしていたガヌーは後ろに弾けて倒れ込むダウン。

 

ここはジョシュアが深追いしなかったこともあり、3分間を終えてインターバルへ。

 

しかし続く2ラウンド、同じく残り1分を切ったタイミングでジョシュアの右オーバーハンドがモロに決まると、ガヌーが尻餅を着く2度目のダウン。

 

立ち上がったながらもダメージの色濃く、再開後にまたもジョシュアが狙いすました右ストレートを叩き込むと、これもまともに食らったガヌーはぐにゃりと背中からキャンバスに落下、レフェリーがノーカウントでストップを宣告して試合終了。

 

 

試合前から充分に予想できた結末ではありましたが… ただ終わってから客観的になってみると、前3団体統一王者で王座返り咲きを狙うトップボクサーと、僅か1戦1敗に過ぎない異種格闘技からの転向者によるマッチメイクの不適切さを改めて実感。

 

とはいえその一方、ボクシングファンの立場からしたら、ガヌー相手に無様な醜態を晒したフューリーの埋め合わせをジョシュアが痛快な圧倒的KOでしてくれたことは正直、鬱憤が晴れて気分いいのが本音。

 

(でも、事故防止等の観点からしたら、やっぱりこういうマッチアップはやめるべきと思います。

 そもそもガヌーがフューリーに善戦できたのは、エキシビション感覚でいた?フューリーの調整不良や相手をナメ切っていた油断が大きく影響していた筈で、健闘したのは事実にしても過大評価だった部分も確実にあり)

 

何にしろ、これでジョシュアは5月に予定されている4団体統一戦、ウシクvsフューリー勝者への挑戦をさらに確定へと近付けた形。

 

ガヌーはもうボクシングはやらないのでは?という気がしますが、皮肉等は抜きにして、実際問題そうする方が無難なんじゃないでしょうか。

 

 

 

 

◇WBO暫定世界ヘビー級タイトルマッチ◇

 

暫定王者 

張志磊

(チャン・ツィーレイ 40=中国:26勝21KO1敗1分)

vs 

挑戦者3位/元WBO王者 

ジョセフ・パーカー

(32=ニュージーランド:34勝24KO3敗)

 

2度目の防衛戦となる張は、昨年9月に前暫定王者 ジョー・ジョイス(英)とのダイレクトリマッチに3ラウンドKOで完勝して以来、パーカーは昨年12月、ジョシュアvsワリンと同じイベントで前WBC王者 デオンテイ・ワイルダー(米)に大差判定勝ちして以来のリング。

 

ジョイスを連破して勢いづく、暫定ながらアジア人として初の世界ヘビー級王者となった張と、そのジョイスに11ラウンドKO負け(22年9月)した後4連勝で立て直してきた、オセアニア圏&ニュージーランド初の世界ヘビー級王者パーカーによる一戦…

 

結果は パーカーが 2-0(115-111、114-112、113-113)  の判定勝ちでタイトル奪取。

 

198センチの巨漢サウスポー・張がプレスと共に左ストレートや右フックを狙い、ひと回り近く小さく見えるパーカーはジャブから時おり踏み込んで左フック、右ストレートのタイミングを計る出足。

 

3ラウンド、残り1分弱のところで張の左ストレートが浅めに当たると、呆気ない感じでパーカーが腰を落としてダウン、しかし4ラウンド以降はパーカーがコンパクトなパンチで応戦してポイントを引き寄せ、攻めが単調で動きも重い張をかわし、リード。

 

が、8ラウンドの半ば、張の左ストレートからの右フックの返しが決まり、またも呆気ない感じでパーカーが前のめりに2度目のダウン。

 

再開後、残り時間が半分近くあったものの張の追い足は鈍く、器用さで優るパーカーは動いて当てての自己ペースに戻してピンチを脱出。

 

張が前に出てプレッシャーをかける展開は変わらずも、ワンパターンなのに加え中盤あたりからはガス欠気味&手数も落ち、9ラウンド以降もペースは殆どパーカーがキープ。

 

そうした流れからして、ダウン2つ分くらいで張&その陣営がポイントで上回っているつもりでいるとは考え難いながら、終盤になっても一向に積極的に攻めて出ることはなく、結局パーカーが優勢に進めていたと映るままで試合終了のゴング。

 

 

パーカーも効果的なクリーンヒットは僅かだったにしろ、手数、ヒット数、アグレッシヴの姿勢など全体的に張を上回っていたのは明白だっただけに、少なくとも勝利自体は妥当の印象。

 

最後まで一発狙いで尻すぼみに終わった張の見せ場&ポイントゲットは、それこそダウンを取った時だけと言って過言でないくらいの不出来で、その意味からするとジャッジ1人のドロー採点は疑問。

 

それはともかく、これでパーカーはウシク、フューリー、ジョシュアの3強の陰に隠れる格好&暫定とはいえ王座に復帰。

 

次は正真正銘の正規の王座を目指したいところでしょうが、取り敢えずは3強の対決の終わりを待つことになる筈。

 

ソコソコの実績&前戦ワイルダー、今回は張と立て続けに下したことで、プロモーター側から一定レベルの扱いはされるような気もしますが…

 

3強との対戦チャンスを窺う間に1戦2戦するのであれば、相手はもう1人の中途半端な立ち位置にいる王者 マフムード・チャー(シリア/独:法廷抗争の和解策として王座を手に入れたWBAレギュラー王者=今月末にブルガリアの古豪クブラト・プレフと初防衛戦を予定)と〝2団体統一戦〟なんてことも?

 

因みに、個人的な採点は 115-111 でパーカーでした。