【結果+観戦記】ルイス・アルベルト・ロペス vs 阿部麗也 フォード vs ホルマトフ | ボクシング・ダイアローグ

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3月2日(日本時間3日)

ターニング・ストーン・リゾート&カジノ:米ニューヨーク州ヴェローナ

 

◇WBA世界フェザー級王座決定戦◇

 

1位 

オタベク・ホルマトフ

(25=ウズベキスタン:11戦全勝10KO)

vs 

2位 

レイモンド・フォード

(24=米:14勝7KO無敗1分)

 

リー・ウッド(英)の返上で空位となった王座の決定戦。

 

米マイアミに拠点を置く元アマチュアエリートのホルマトフは、昨年3月のWBA挑戦者決定戦でトーマス・パトリック・ウォード(英)に5ラウンドTKO勝ちして指名挑戦権を獲得、同年12月のバラム・エルナンデス・アコスタ(メキシコ)とのチェーンナップを8ラウンドTKOで片づけて以来となる今回が初の世界タイトル戦。

 

同じくアマエリートからプロに転向したフォードは、昨年4月の最新試合で元WBOスーパーバンタム級王者 ジェシー・マグダレノに判定勝ち、それ以来となるリングでこちらも初めての世界戦。

 

パワーのホルマトフvsスピードのフォード、という組み合わせとなったサウスポー同士の一戦…

 

結果は フォードが 12ラウンド 2:53 TKO勝ち。

 

[動画サイトでフルラウンド映像を見つけて観戦]

 

 

初回から序盤戦は共に右ジャブで牽制し合う中、前に出る姿勢&手数でやや上回るコルマトフがパワーのアドバンテージも含めて圧し気味に進め、優位な流れ。

 

3ラウンド終盤には、スウィング状のビッグパンチを交えて迫るコルマトフの左フックがヒットしてフォードがグラリ、優勢にさらに拍車。

 

が、4ラウンドになるとフォードが自分からプレッシャーをかけて前進し始め、逆にセーブしたコルマトフはフットワークで距離を取りながら打つ形にシフト、見ようによっては早くもペースダウンし始めた感も。

 

以後の中盤戦は、手数も増えたフォードの反撃が功を奏し、両者が至近で打ち合って離れてまた打ち合って、の展開となり、8ラウンドにはフォードの右ジャブでコルマトフがバランスを崩したところに連打をかけ、3ラウンドのお返し。

 

9、10ラウンド、スタートから暫くの間はコルマトフが先に仕掛けるも継続せず、途中からフォードのプレスが勝って攻勢が入れ替わり一進一退のせめぎ合いと、白熱したシーソーゲーム。

 

11ラウンド、またも開始から出たコルマトフがこの回は攻勢をキープ、試合の中盤に入った頃には既にキレが落ちていたパンチを振るってフォードに傾いていた流れを挽回。

 

迎えた最終12ラウンド、ラストスパートをかけたコルマトフにフォードはやや引いて的確さで対抗、やがてまたもコルマトフのプレスが弱まったのを機に、試合は一気にクライマックスへ。

 

試合終了まで残り30秒ちょっとの所で、ホルマトフが屈んでパンチをかわした直後の一瞬の隙にフォードの右アッパーがヒット、これが効いてフラついたウズベキスタン人は大きくロープに後退。

 

後続打を凌ごうと相手にしがみ付いたもののフォードがこれを振りほどくと、ホルマトフは横倒しにキャンバスに落下。

 

ここは妥当にスリップと裁定されたながらもダメージは深く、再開後フィニッシュを狙うフォードが右を叩き込むとコルマトフは大きく泳いで横を向き、更なる追撃でヨロヨロとコーナーに後退。

 

相手に背を向ける体勢になり、体を支えようとロープを掴んだところでレフェリーが止めて、残り7秒のタイミングでTKO決着。

 

 

個人的には、同じ興行のセミファイナル、ルイス・アルベルト・ロペスvs阿部麗也と同じかそれ以上に注目していた一戦でしたが… 期待以上の内容&劇的な幕切れ。

 

大雑把に、フォードがスピードで捌いての判定勝ち6.5、コルマトフがパワーで追い詰めねじ伏せてのKO勝ちが3.5くらいと予想していたものの、このフィニッシュを具体的に想像できるかと言われてもちょっとムリというレベルでの終幕。

 

因みに、11ラウンドまでの採点は2ジャッジが106-103でコルマトフ、もう1人が105-104でフォードの2ー1だったとのこと。(自分の採点は105ー104でコルマトフ)

 

これで新王者となったフォード、スピードが基盤ということで大袈裟系の向きはフロイド・メイウェザーJr.(米)氏やシャクール・スティーブンソン(米)などになぞらえるケースも多いようですが…

 

上体の柔軟さはあるにしても、ハンドスピードと自在に連動するフットワークに欠けているとか、パンチをもらい過ぎるとかいった点が気になることから、自分としてはそこまでの高評価ではナシ。

 

これから経験を積んで伸びていく余地も少なくないでしょうけど、今の時点で過大な見方をするのはまだ早いのでは?というのが個人的な見解です。

 

 

◇IBF世界フェザー級タイトルマッチ◇

 

王者 

ルイス・アルベルト・ロペス

(30=メキシコ:29勝16KO2敗)

vs 

挑戦者1位 

阿部麗也

(30=KG大和:25勝10KO3敗1分)

 

22年10月、ジョシュ・ウォーリントン(英)を判定で下し王座を奪取した〝 El Venado(鹿)〟ロペスは、昨年5月にジョエト・ゴンサレス(米)を判定で退けて以来の試合となり、タイトル3度目の防衛戦。

 

一方〝天才〟を自称するサウスポーの阿部選手は、昨年4月のIBF挑戦者決定戦で元IBFスーパーバンタム&フェザー級王者 キコ・マルティネス(スペイン)に判定勝ちして指名挑戦権を獲得、それ以来となるリングで初の世界挑戦。

 

荒く粗いメヒコの鹿 vs 天才ハポネスによるIBF指名戦…

 

結果は ロペスが 8ラウンド 0:39 TKO勝ち。

 

オープニングからノーガードで左右を振り回し、持ち味のワイルドな突貫戦法で前進するロペスに対し、阿部選手も自己スタイルの足を使うボクシングでかわすものの、立ち上がりから圧され気味。

 

2ラウンド、ロペスの左フックで阿部選手の右目下が大きく腫れ上がり、このラウンド終了後のインターバルでリングドクターやオフィシャルスタッフが阿部コーナーに集まって負傷チェック、と早々に重々しい雰囲気。

 

3ラウンド終了後にもまたオフィシャルやレフェリーが阿部コーナーに集結、ドクターはライトを当てたり指を動かしたりして阿部選手の右目の見え方を入念に確認し、早くもストップ間近?と否応なく思わされる嫌な状況。

 

モーション付きの大振りパンチを繰り出すロペスに対し、阿部選手は圧されつつも小刻みなリズムで動きながら時おり反撃、ただフットワークは止まっていなくてもバランスを崩してバタバタしがちで、引き続き後退させられる状態のまま。

 

5、6ラウンドは、ロペスの突進が和らいだところを阿部選手が自分から行ってそれなりにパンチを当てるシーンがありつつも、余裕綽々の王者が打ち返しに出るとアッサリ寸断され、もはや勝つためにはもうポイントアウトではなく、負傷ストップされる前に逆転KOする以外にない窮地。

 

しかし迎えた8ラウンド、ロペスが右手を挙げて観客に今からスパートするぞ!のアピールと同時にラッシュをかけると、被弾を防ぐのが精一杯で反撃できない阿部選手の前にレフェリーが割って入りTKOを宣告、一方的な流れのまま試合終了。

 

 

早い段階での目の腫れという不運はあったにしろ、ロペスのセオリーから大きく外れたトリッキーなスタイル、パンチ角度、タイミングに阿部選手がすっかり呑まれ、成す術なく仕留められてしまった感じでしたが…

 

それにしても、技術的にはとても世界王者とは思えないロペスのラフなボクシングには、改めてまたちょっと驚き。

 

ノーガードからのテレフォンパンチが主体だけに、スピーディに動き回ってコツコツ当てる技巧派の阿部選手には案外相性がいいのでは?とも思えたながら、結果論的にはロペスの暴風に巻き込まれての完敗で決着。

 

おそらく… ロペスには隙だらけに見える一方、見た目以上の圧力&そこに距離間やタイミング計測が難しい、妙な角度からの思い切ったパンチが加わることにより、対戦者にしかわからない種類の重圧感や戦り辛さがあるのでは。

 

ハイレベルなカウンターパンチャーの一発をまともにもらってバッタリ轟沈… というイメージはかなり鮮明に浮かぶものの、なかなかそれは難しそうなことプラス、戴冠戦で打ち合いが持ち味のウォーリントンとフルラウンド戦って敵地で判定勝ち、初防衛戦でアマエリート出身のマイケル・コンラン(英)を痛烈KO、V2戦もランキング上位常連のジョエト・ゴンサレスを判定で退けているのを踏まえると、これまた見た目以上に勝負強さをも持ち合わせていそうな感じです。

 

ついでながら、あの戦闘スタイルのロペスのキャッチフレーズが El Venado(鹿)というのには違和感。

 

小型の肉食獣とかに例える方が、もっとしっくりくるんじゃ…?

 

 

なお、アンダーカードのミドル級6回戦に出場したニコ・アリ・ウォルシュ(23=米:8勝5KO1敗1NC/元世界ヘビー級王者 モハメド・アリ氏の孫)は、チャールズ・スタンフォード(37=米:7勝4KO5敗)に 3-0(60ー54×2、59ー55)の判定勝ち。

 

昨年5月の前々戦をノーコンテスト、同8月の前戦はソナ・アケール(米)に判定負けで初黒星を喫していたウォルシュは再起に成功。

 

 

[ロペスのオフショット !?]