5月12日
RACアリーナ:豪・西オーストラリア州パース
◇IBF世界ライト級王座決定戦◇
2位/元同級3団体統一王者
ジョージ・カンボソスJr.
(30=豪:21勝10KO2敗)
vs
3位/元世界3階級王者
ワシル・ロマチェンコ
(36=ウクライナ:17勝11KO3敗)
ライト級4団体統一王者だったデビン・ヘイニー(米)が昨年12月にWBCスーパーライト級タイトルを奪取=そのまま同級にクラスを上げてライト級王座すべてを返上したことで空位となった、そのうちのIBFの決定戦。
カンボソスJr.は、昨年7月の前戦でマキシ・ヒューズ(英)とのIBF2位決定戦に微妙な2ー0の判定勝ち、初戦で王座を明け渡しダイレクトリマッチでも敗れたヘイニー戦の2連敗から再起し、辛うじて上位を確保すると共に指名挑戦権を獲得。
一方のロマチェンコも、昨年5月にヘイニーに挑んで小差の3-0判定負けを喫しており、今回はそこからまる1年ぶりの再起戦で王座返り咲きに挑む形。
もともとこの両者は、カンボソスJr.が王者だった20年の夏に対戦が内定していたのが、ロシアのウクライナ侵攻開始から間もなくロマチェンコが領土防衛隊に入隊した影響により消滅した経緯があり、今回は共に無冠となった状況での再マッチアップ。
元王者同士がタイトル奪還をかけて激突した一戦…
結果は ロマチェンコが 11ラウンド 2:49 TKO勝ち。
現地でまだ試合が終わったばかりなんじゃ?という昼間の時点で概ねフルラウンドと言える映像が見つかったため、そのまま観戦しましたが…
内容&結末的には、相手を徐々に封じ込めて攻め落とす “ハイテク”ロマチェンコ得意のスタイルが久々にハマった、という印象。
ジャブを突き、手数を出し、こまめに位置取りを変えつつ自分から出てプレッシャーもかけるサウスポーのロマチェンコに対し、カンボソスJr.は後手に回っての有効性の低い攻撃が目立ち、序盤の時点でウクライナのハイテクマシンがペースを掌握する流れで試合進行。
大きなヤマ場はないながらもロマチェンコが着実にヒッティングを稼ぐ一方、ボディ狙いが主体と見受けられるカンボソスJr.は中盤に右の瞼をカットするなど、逆に苦しい展開に拍車。
迎えた11ラウンド、距離が狭まったところにロマチェンコの左フックが当たり、追い込まれた感の強いカンボソスJr.が片膝を着くもこれは中村勝彦レフェリーがスリップと裁定…
しかし再開直後、ロマチェンコの左ボディアッパーが突き刺さると、後ずさりして横を向いたカンボソスJr.はロープ際に座り込んでダウン。
立ち上がって続行されたもののダメージは深く、詰め寄ったロマチェンコが再び左ボディの2連打を見舞うとカンボソスJr.は蹲って2度目のダウン、レフェリーがノーカウントで止めると同時にカンボソスJr.のセコンドからタオルが投入され、試合終了。
最全盛期と比べればやや運動量が落ちた感は無きにしも非ず、にしても、自分のペースに相手を引きずり込んで崩し落とすロマチェンコのスタイルは依然として健在。
全体的なピークは引き続き維持している感じ=まだまだ一線でビッグマッチの主役を務められそう、という訳で、是非WBA王者 ジェルボンテ“タンク”デービス(米)やWBC王者 シャクール・スティーブンソン(米)との対決実現に期待。
敗れたカンボソスJr.の方は、ロマチェンコの独特のリズムについて行けず主導権を握られ、持ち味のタイミングで勝負するスタイルを発揮できないままダメージを蓄積してしまったのが最大の敗因だった、と思いますが…
個人的に思う限りでは、初戴冠した時のテオフィモ・ロペス(米)戦の勝利がちょっと過大評価され、それがそもそも好選手イメージに加算されていた気もするので、いったん評価が下がる筈の今後が本当に真価を問われる正念場になるのでは?と感じます。
◇WBC世界スーパーフライ級暫定王座決定戦◇
4位/元WBA同級レギュラー王者
アンドリュー・モロニー
(33=豪:26勝16KO3敗1NC)
vs
6位/元WBCライトフライ級王者
ペドロ・ゲバラ
(34=メキシコ:41勝22KO4敗1分)
当初はモロニーが暫定王者 カルロス・クアドラス(メキシコ)に挑戦する予定だったのが、クアドラスが怪我で出場をキャンセル、ゲバラとの暫定王座決定戦にカード変更。
[これにより、WBCスーパーフライ級は暫定王者が2人になる?との感じになったものの、最新のWBCランキングに暫定王者クアドラスの名前はなく、どうやら事実上の剥奪措置をとったらしい?模様]
昨年5月、WBOスーパーフライ級王座決定戦で中谷潤人(M.T)選手に12ラウンドKO負けを喫したモロニーは、同年12月にジュディ・フローレス(比)を判定で破り再起、それ以来となるリング。
今月6日の東京ドーム興行セミファイナルで、武居由樹(大橋)選手に王座を明け渡した前WBOバンタム級王者 ジェイソン・モロニーの双子の弟で、今回は暫定ながらWBCに鞍替えする形で王者返り咲きを狙う一戦。
対するゲバラは昨年11月、クアドラスとの暫定王座決定戦に判定で敗退、今年2月にランベルト・マシアス(メキシコ)に判定勝ちで再起して以来のリング。
14年12月に八重樫東(大橋)氏との決定戦に7ラウンドKO勝ちして空位のWBCライトフライ級王座を獲得、翌年11月に木村悠(帝拳)氏に判定負けで落城した後、17年10月には1期目王者時代の拳四朗(寺地拳四朗=BMB)選手の同じWBC王座に挑戦し、判定負け。
その後クラスを上げて再浮上し、今回はフライ級を飛び越えて2階級制覇を目指す一戦。
結果は ゲバラが 2-1(115-113×2、113-116)の判定勝ち。
この試合はハイライト版、しかも要所を上手く集められていない出来のよろしくない映像しか見つからなかったため、全体的な内容等についてはわかりませんが…
細切れの動画で観た限りでは、立ち上がりから中盤あたりまでは一進一退だったのが、後半以降はゲバラが接近戦で上回り、優勢だったように映った印象。
試合終了後、モロニーは勝ったと思っていたようで、敗北を告げられた後は不満を口にすると共に引退発言をしたみたいですが、スプリット・デシジョンとはいえ地元での敗戦だけに、あともうひと押しをしなかった部分を悔やんでいるのでは?
それはともかく、この暫定王座はカネロ・アルバレス(メキシコ)と同様にWBCが露骨に優遇する正規王者 ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)の都合で設置されたものだった筈なので、来月のエストラーダvsジェシー“バム”ロドリゲス(米)の結果が出しだい、すぐに団体内統一戦を指令してほしいところです。