【結果+観戦記】オレクサンドル・ウシク vs タイソン・フューリー [ヘビー級4団体王座統一戦] | ボクシング・ダイアローグ

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5月18日(日本時間19日)

キングダム・アリーナ:サウジアラビア・リヤド

 

◇世界ヘビー級4団体王座統一戦◇

 

WBAスーパー&IBF&WBO王者 

オレクサンドル・ウシク

(37=ウクライナ:21戦全勝14KO)

vs 

WBC王者 

タイソン・フューリー

(35=英:34勝24KO無敗1分)

 

もともとは同じ会場で昨年12月23日(日本時間24日)の日程で内定していたのが、フューリーが同年10月のノンタイトル戦(フランシス・ガヌーに2ー1判定勝ち)で負傷した影響により延期、新たに今年2月17日(日本時間18日):同会場でリスケジュールされたものの、またしてもフューリーのスパーリング中の負傷で再延期、3たびセットし直されての開催。

 

クルーザー級で4団体統一を果たした後、ヘビー級にクラスを上げたウシクは、21年9月にアンソニー・ジョシュア(英)を判定で下して一気に3王座を獲得、ダニエル・デュボア(英)を9ラウンドKOしてWBA団体内王座統一&3団体タイトルを防衛(それぞれV2)した昨年8月以来のリング。

 

一方、デビュー戦の相手にダウンを奪われ、あわやの大苦戦だったvsガヌー以来となるフューリーは、4団体統一戦と共にデオンテイ・ワイルダー(米)を倒して獲得したWBCタイトル4度目の防衛戦。

 

なおヘビー級は、WBO設立前の時代にマイク・タイソン(米)氏が3団体を統一、4団体時代になった後にイベンダー・ホリフィールド(米)氏、リディック・ボウ(米)氏、レノックス・ルイス(英)氏が同じくWBOを除いた3団体統一王者になっているものの、WBOがメジャー統括団体となった後に4タイトル全てがかけられる統一戦は今回が史上初。

 

紆余曲折を経て遂に実現した注目のビッグマッチ…

 

結果は ウシクが 2-1(115-112、114-113、113-114)の判定勝ち、クルーザー級に続きヘビー級でも4団体統一を達成。

 

[動画サイトで見つけた不完全な映像を複数合わせ見して、ほぼフルラウンドの形にして観戦]

 

待機戦術のフューリーに対し、サウスポーのウシクが先手を取って出る立ち上がりで試合スタート。

 

長い間合いをキープするフューリーに対し、カウンターを警戒するウシクはなかなか思い切って踏み込めないながらも時おり浅いヒットを決め上々の出だし、逆にフューリーは手数が少なめでやや消極的にも映る状況でラウンド進行。

 

中盤に入るとフューリーが距離を詰めて攻勢に出、6ラウンドには右アッパーを数度当ててウシクを下がらせ、リードされ気味だったペースを引き戻し。

 

が、8ラウンドはウシクが盛り返して左ロングフックなどをヒット、フューリーは序盤の待機戦的なスタイルに戻した感じも、距離は狭まったまま両者のパンチが当たるミドルレンジ。

 

9ラウンド、残り30秒ちょっとのところでウシクの左フックが炸裂、効いたフューリーの動きが止まるとウクライナの3冠王者がすかさず追撃すると、ダメージ甚大でリングをフラフラ泳いだ死に体の巨漢英国人はロープにもたれるようにコーナー脇でダウン。

 

ロープがなければ完全に倒れていた大ピンチだったものの、再開直後にラウンド終了ゴングが鳴って強運の命拾い。

 

フィニッシュを意識して詰めて出るウシク、しかしフューリーは 10、11ラウンドと動いて回復を図りつつ立て直し、KOチャンス中のウシクも深追いはせずにセーブ。

 

最終12ラウンド、劣勢な印象のフューリーが行くかと思いきやそれほどでもなく、両者がパンチを交換し合う中で試合終了のゴング。

 

観終わった直後は、3ジャッジがそれなりの差をつけてのユナニマス・デシジョンでウシクの勝ち、以外に思っていなかったので、スプリットに割れたことにまず驚きましたが…

 

公式採点をチェックした際、ウシクの勝ちとしたジャッジも3ポイント差&僅か1ポイント差という僅差だったのを知った時はビックリが加算され、相当な意外感。

 

個人的な採点は 116-111 ウシクでしたが、おそらくジャッジは1人が自分と同じ、他は 117-110 か 115-112 かな、というイメージだったので、1ポイント差はもとよりフューリーの勝ちという判定にはかなりな違和感。

 

それはともかく、今日もまた試合運び、当てて外して外して当てる、滅多にまともに被弾しない、といった様々な巧さを駆使して勝利したウシクは、史上初のヘビー級4団体統一を達成。

 

クルーザー級から上げて来ただけに、本質的なパワー不足感は否めないにしても、そうした不足を技術力でカバーして遂にヘビー級の頂点に到達。

 

これにより、海外の識者とやらの中には次のパウンド・フォー・パウンド・ランキングでモンスター井上よりウシクの方が上だ、と言い出す向きが現れるかも?しれませんが、そうした妄想遊びはさて置き、ウシクの評価がまたアップすることは確実。

 

[現状、殆どのメディアは1or2位がテレンス・クロフォードかモンスター、3位ウシクが定番]

 

一方、初黒星を喫し王座陥落となったフューリーは、試合後のリング上のインタビューで

 

「間違いなく自分が勝ったと信じている。ウシクも幾つかラウンドを取ったと思うが、多くは自分が取っていた。

 良いファイトができたが、彼の国(ウクライナ)は戦争中で、皆は戦争中の国の側に味方したがる。だから自分は小柄な選手に2-1で負けた。よくやったオレクサンドル。

 だが我々には再戦条項がある。10月に戻って来てリマッチをやる」

 

と、相変わらずな放言混じりで再戦要求&奪還宣言。

 

ウシクは顎を骨折した疑いがあることで、試合後の会見をキャンセル→ 病院に直行したため戦後のコメントが殆ど伝えられていないようですが、フューリーのリマッチ発言に対しては応じると即答。

 

実際、以前の延期発表の際に興行サイドが、この試合の契約には再戦条項が含まれていることを公表しており、これはたぶん初めからの規定路線だった筈。

 

先週だったかにウシクはSNSで、フューリー戦後はクルーザー級に戻ることを示唆する投稿をしていましたが、それは少なくともあと1回はヘビー級で、フューリーとの再戦をこなしてからの話になるのでは?と思われます。
 

あと個人的には、どうにも採点の部分がしっくり来ないのでもう一度、出来たら一本でしっかりフルに観られる映像で観戦し直してみたい気持ちですが… 都合よく見つかるかどうか。

 

 

[一緒くたにすると大長文になってしまうので、同興行のアンダーカードについては別に分けて投稿します]