【ヘビー級】ボクシング世界王座:リアルタイムチェック | ボクシング・ダイアローグ

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世界王座をめぐる、リアルタイム状況のチェック&おさらいシリーズも遂に最終回となる Part.18「ヘビー級」。

 

 

【WBAスーパー&IBF&WBO】

 

3団体統一王者:オレクサンドル・ウシク(36=ウクライナ:21戦全勝14KO)

 

WBAレギュラー王者:マフムード(マヌエル)・チャー(38=シリア/独:34勝20KO4敗)

 

トップアマ(ロンドン五輪・2011世界選手権のヘビー級で金メダル)を経てプロ入りしたウシクは、10戦目でWBOクルーザー級で初戴冠したのを皮切りに同級4団体を統一、その後ヘビー級にクラスを上げ、21年9月にアンソニー・ジョシュア(英)を判定で破り一挙に3本のベルトを獲得。

 

初防衛戦でジョシュアを再び判定で退け、今年8月の最新試合ではWBAレギュラー王者 ダニエル・デュボア(英)を9ラウンドTKOしてWBA団体内統一と共に3王座のV2。

 

次戦は来年2月17日(日本時間18日)にWBC王者 タイソン・フューリー(英)との4団体王座統一戦が正式発表済み。

 

チャーは、17年11月の決定戦でアレクサンドル・ウスティノフ(露)に判定勝ちしてWBAレギュラー王座を獲得したものの、以後はドーピング違反疑惑や契約上の問題で指名戦・暫定王者との団体内統一戦が何度もキャンセルされ、その影響で長期ブランクに突入。

 

21年になり、戴冠戦から3年以上試合をしていないことを理由にWBAが休養王者に降格シフト、同年5月に漸く3年半ぶりの試合を行った(ノンタイトル戦)ながら、ブランク中に誕生した暫定王者 トレバー・ブライアン(米=のちレギュラー王者にスライド昇格)との指名戦を行えず、同年12月に最終的にWBAは王座を剥奪。

 

この措置に対してチャーは、不当な王座剥奪や契約面の違反・不履行などを理由にWBAとヒルベルト・メンドサWBA会長、ドン・キング・プロダクション、エピック・スポーツらを相手取って提訴。

 

今年8月、1年以上にわたる係争の末にWBAとの和解が成立、レギュラー王者に復帰させる措置をとり、チャーがリングで戦わず裁判に勝って王座に返り咲いた、という経緯。

 

王座復帰に際し、チャーにはジャレル・ミラー(米)の挑戦を受けることが条件に含まれていたもののミラー側の事情でキャンセルとなり、今はまた蚊帳の外状態になりそうな雰囲気が漂う状況。

 

WBAが1階級1王者制を推進中ということも含め、理屈的にはチャーの最優先義務は団体内統一戦以外の選択肢はない筈ですが、ウシク&フューリーとの格差が大き過ぎるため、おそらくマッチアップすることは至難の業。

 

WBAが強硬に対戦指令を出すと共に、ウシクvsフューリー勝者が対戦に応じてくれれば或いは… という感じ?

 

 

【WBC】

 

王者:タイソン・フューリー(35=英:34勝24KO無敗1分)

 

15年11月、世界初挑戦でWBAスーパー&IBF&WBO王者 ウラディミール・クリチコ(ウクライナ)氏を判定で破り王座を奪取するも、その後ドーピング違反による資格停止処分などがあり、初防衛戦を行うことなく返上と剥奪で無冠に。

 

2年半ほどリングを離れたのちにカンバックし、20年2月にWBC王者 デオンテイ・ワイルダー(米)に挑んで引き分け。

 

20年2月、ワイルダーとのリマッチに7ラウンドTKO勝ちで2度目の王座獲得、以後は初防衛戦でワイルダーを11ラウンドKOして返り討ち、昨年ディリアン・ホワイト(英)とデリック・チゾラ(英)をそれぞれ6ラウンドと10ラウンドでストップし、タイトルを3度防衛中。

 

今年10月、元UFC王者:これがボクシングデビュー戦だったフランシス・ガヌー(カメルーン)を相手にノンタイトル戦で10ヶ月ぶりにリングに上がり、ダウンを奪われる大苦戦の末に辛くも判定勝ち。

 

不出来の一要因に調整不足が明白にあったとはいえ、ウシクとのビッグマッチを控える現王者としてはあまりに不甲斐なく、かなり株を下げた形で2月のメガファイトに臨むことに。

 

とはいえ、流石に次戦は本腰を入れてくる筈ですから、ナチュラルヘビーの体格&独特の変則スタイルのフューリーが、ヘビー級では体負けする傾向に変わりないウシクに初黒星を擦り付ける可能性はかなりあるかも?

 

 

【WBO暫定】

 

暫定王者:張志磊(チャン・ツィーレイ 40=中国:26勝21KO1敗1分)

 

アマで北京五輪スーパーヘビー級銀メダルなどの実績ののちプロ転向、22年8月にフィリップ・フルゴビッチ(クロアチア)とIBF挑戦者決定戦で対戦し判定負けで初黒星。

 

今年3月、WBO暫定王者 ジョー・ジョイス(英)に挑み6ラウンドTKO勝ち、暫定ながらアジア人/中国人として初の世界ヘビー級王座獲得、9月のダイレクトリマッチでジョイスを3ラウンドで沈め、初防衛。

 

暫定王座の設置については、ウシクにジョシュアとの再戦の縛りがあったのに加え、新型コロナ禍や母国ウクライナがロシアと開戦した影響でコンスタントに防衛戦を行えなかったことが主な理由だった筈ですが…

 

2月のウシクvsフューリーには契約に再戦条項があるとの情報も散見され、それがダイレクトで行われるとしても早くて夏ころになると思われるので、この勝者とチャンの団体内統一戦が実現するとしても時期的には来年の冬あたりになりそう。

 

ジョイスとの再戦に完勝したチャンは少なからず評価と知名度を上げ、本人もその試合後にフューリーが負けるところを見たいか、と対戦アピールするコメントを発していましたが、状況からして先ずはウシクvsフューリーの決着待ち。

 

その間の来春~夏まであたりの時期?に、防衛戦を1度をこなすのでは?

 

 

次の王者を目指すランカー陣の方は…

 

今月23日(日本時間24日)にサウジアラビアで開催されたビッグ興行により、次期挑戦者候補がある程度ハッキリしてきた様相あり。

 

メインに出場したジョシュアは、無冠時代のフューリーを血だるまにして善戦したオト・ワリン(スウェーデン)を5ラウンド棄権TKOで一蹴、最有力コンテンダーのポジションを守った一方、ワイルダーは元WBO王者 ジョセフ・パーカー(ニュージーランド)に精彩を欠く大差判定負けを喫し、これにより来年に内定していたジョシュアvsワイルダーの実質エリミネーターは白紙に。

 

同興行のアンダーに出場したデュボアは、チャーに挑戦できる筈だったミラーを10ラウンドTKOしてウシク戦の敗北から再起、一戦に踏み留まった形。

 

同じくアンダーのアルスランベク・マクムドフ(露)vs アギ・カバイェル(独)の全勝対決は、予想不利のカバイェルが4ラウンドTKOで勝利してランクアップを確実にし、逆に強打の上位ランカーだったマクムドフは大幅なランクダウンが必至。

 

上位進出中のフランク・サンチェス(キューバ)はWBA10位のジュニア・ファー(ニュージーランド)に7ラウンドTKO勝ちで世界戦線にまた一歩前進、IBFの指名挑戦権を持つフルゴビッチも格下の中堅マーク・デ・モリ(豪)を初回で屠ってポジションをキープ。

 

前3団体王者ジョシュアを筆頭に、ここで勝ち残った顔ぶれは概ね来年以降の有力な挑戦者候補と見做してよさそうで、世界初チャレンジを狙う側としてはフルゴビッチとサンチェスが可能性が高い感。

 

他、ランキングトップ10をチェックしてみると

 

若手の一番手は、WBOでは2位まで上昇してきた16戦全勝15KOの24歳ジャレッド・アンダーソン(米)

 

同じく17勝16KOと全勝で、WBA4位につけるファビオ・ワードリー(英)

 

マーティン・バコーレ(コンゴ民主共和国:元WBCクルーザー級王者イルンガ・マカブの弟)とエジェ・アジャグバ(ナイジェリア)のアフリカ勢

 

あたりが目につく感じ。

 

また、現在は試合枯れ中ながら一度はジョシュアを沈めて王座に就いたアンディ・ルイスJr.(米)がWBO6位に残っている他、フューリーをあわやのところまで追いつめたとはいえ、現時点ではまだ1戦1敗で全く未知数のガヌーがWBC10位にランクイン。

 

ヘビー級は全体的に試合が行われるペースが遅いのに加え、少なくとも来年の上半期まではウシクとフューリーに振り回される前提があるとなると、出番があるかもしれないのはジョシュアとフルゴビッチ、あとはパーカーくらい?な気がしますが…

 

フューリーのアンチ&ヘビー級には特に注目している選手のいない自分としては、率直にもうそろそろ新旧交代を期待したい頃合いです。

 

 

… という訳で、世界タイトル全17階級+1のリアルタイム状況をチェックするシリーズを、何とか年内で完結。

 

感覚的には『失われた時を求めて』にはごく僅かに及ばないにしても、『源氏物語』あたりは越えた気分。(錯覚)

 

身分不相応なことはやるもんじゃないと痛感しつつ、自ら侘しく己を労い、値引き処分品のパンと総菜でディナー。

 

(せめて年末年始くらい、もうちょっとマシなものを食いたい… などと言うのもまた身分不相応)

 

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