以前より家族に映画を勧めてもらっていたのですが、なかなか見る機会がなく
どうせならきちんと文庫(原作)から読みたいと思って、この度拝読しました。
三浦しをん:著 「舟を編む」
雲田はるこ先生のカバーイラストも爽やかでとても素敵です。
さて内容なのですが、今更私などがどうこう言うのもおこがましいですが、すばらしいの一言に尽きます。けれどもそれだけで済ましてしまう事もできず、とても筆舌に尽くしがたい。
もっと早く読めばよかったと後悔が先走るばかりの一冊で、私の本棚内ベスト5に殿堂入りを果たしました。
早く結末を知りたい気持ちと、反して惜しいという心がせめぎ合う中、それでもいたたまれず速度を落としたりもしましたが二日で読み終えました。
まず、この「辞書をつくる」という事をテーマに話を書かれているのが面白いし、何よりも全く未知の領域であったので目から鱗の連続でした。
そして、ずっと疑問に思っていたタイトルの由来も果てしなく感慨深いもので、もうひたすらにずっと馬締さん達の舟に乗っていたくなりました。
辞書、というものはおそらくどの家庭にも一冊くらいはあったのではないでしょうか。しかしいつしか分からない語録があればネットで検索するのが常となり、辞書の存在などつゆ知れず。
けれどもこの本を通じて辞書制作における莫大な時間を思うと、それに関わった人々の叡智の結晶を手元に置いてみたくて、生まれて初めて自分の手で辞書を購入しました。
岩波国語辞典です。
辞書を読み物だというのも初耳でしたし、検索物だと思いこんでいた自分が恥ずかしい。さっそく順番に読み進めると、文字の奥深さ、面白さを随所に感じる事ができます。私は仕事柄文字を打つことも多々あるので、今後は不明な言語は必ず辞書で引いていこうと思いました。
「舟を編む」は、辞書を制作する。という目的としたら小さな事かもしれませんが(実際には全くもって少しも小さくないのですが)こつこつと、まるで氷山を削っていくような地道さとひたむきさに胸を打たれます。
このお話は、群像劇であられるので各章ごとにメインとなる人物がそれぞれいて、まず章のはじまりにその人物のフルネームがきちんと書かれているのも、気持ちよく話にするする入っていける要素でした。
文庫本を拝読した後に、映画の方も見ましたが原作と同じところで同じ様に泣きました。静かで、でもそこに確固たる意味が存在するとても、とても素晴らしいお話でした。
私は日本語、文字が好きです。とかく和文や美しい大和言葉に感銘を受ける事が多い中で、心に染み入るテーマでした。
すぐに二度目を読み返しに入ったのですが、優しく美しい、そして強さがある。
感想を認めるのが不得手なので、このブログの読書記録は本当にただの自分のメモみたいな感じで使っていますが、絵や文字を感じ入って受け止め、咀嚼するというのはその時その時における自分の状況であったり、境遇に左右されると私は認識しています。
また何年か経った後に、何年と言わず何度でも読み返して新しい発見をし続けたい、そんなすばらしい本です。
おしまい